第1199回NEW

「黒字倒産」とは?よくある原因と不測の事態に備える資金調達方法を解説

脱サラして、来年4月にも、これまでの経験を活かして、雑貨の製造・販売の会社を設立するつもりです。初めて会社を経営することになるので目下勉強中ですが、ときどき耳にする「黒字倒産」とはどういうことでしょうか。(会社員 34歳 女性)
「黒字倒産」とは、損益計算書上は利益(黒字)が出ているにもかかわらず、手元資金(キャッシュ)が不足して、仕入れ代や人件費などの支払いができなくなって倒産することです。黒字倒産を回避する方法としては、余裕を持った手元資金の確保や、現金の出入りの精緻な管理、売掛金の早期回収などがあります。また、一時的な資金不足の場合は、ファクタリングやビジネスローンを活用する方法もあります。
電卓で財務状況を計算する経営者の男性

損益計算書とキャッシュフローのズレが招く「黒字倒産」

決算書である損益計算書の上では売上や利益が出ており、経営自体は順調に見えるにもかかわらず、手元資金(キャッシュ)が不足して支払いができなくなり、倒産に至ることを「黒字倒産」といいます。

企業間の取引では代金を後払いすることが一般的であるため、会計上の利益と実際の現金の動きにはズレが生じます。商品やサービスが売れて帳簿に売上を計上しても、その代金が口座に入金されるまでには数か月かかる場合があります。一方で、仕入れ費用や従業員の給与、事務所の賃料、税金などは決められた期日までに現金で支払う必要があります。

入金よりも先に支払いの期日がやってくると、手元の預金残高が不足して支払いができず、取引先への支払いが滞るなどして、事業の継続が困難な事態に陥ります。

このような黒字倒産は、利益が出ている企業でも、資金繰りが悪化して手元資金が不足することで起こります。

利益が出ているのに資金不足が起こる要因は?

黒字倒産の背景には、事業が急成長する時期や予期せぬトラブルなど、特有の原因があります。たとえば、事業が急成長する時期には、大量の注文に応えるために仕入れ量や人件費、設備投資などが大幅に増加します。それらの支払いが先行する一方で売掛金の回収は数か月後になるため、事業が拡大すればするほど手元資金が一時的に不足し、資金繰りが悪化するリスクが高まります。

また、主要な取引先の経営状態が悪化して入金が遅れたり、倒産によって売買代金が回収できなくなったりすると、自社の資金計画に大きな狂いが生じます。

さらに、在庫の過剰な抱え込みも手元資金を圧迫します。売れる見込みで大量に仕入れた商品が売れ残ると、購入時の支払いは既に終わっているのに、いつまでたっても商品が現金化できず、資金が在庫として固定化されます。

資金不足を防ぐ手段と、不測の事態に備える資金調達法

黒字倒産を回避するためには、手元資金に余裕を持たせることが欠かせません。平常時に自社のみでコントロールできる対策は、売掛金の早期回収、仕入先への支払い期日の交渉・適正化、クレジットカード決済の活用、過剰仕入れの防止、計画的な資金管理などがあります。

その他、資金を調達するには、銀行からの融資や公的な融資制度の利用、出資の受け入れなど、さまざまな方法がありますが、これらは審査や手続きに一定の時間がかかるため、緊急時の支払いには間に合わない可能性があります。

すぐにお金が必要という緊急事態では、早期に資金化できる方法を検討することも有効です。たとえば、入金予定の売掛債権を専門会社に売却して期日前に現金化するファクタリングは、借り入れとは異なる方法で、売掛債権を早期に現金化できる可能性があります。なお、手数料などのコストがかかるため、事前に確認した上で利用することが重要です。

また、無担保・無保証のビジネスローンは、一般的な銀行融資と比べて審査・融資までの時間が短いものもあり、急な資金ニーズへの選択肢となります。ただし、商品によって金利等の条件が異なるため、しっかり比較検討した上で活用しましょう。

会社経営において重要なことのひとつは、手元資金を切らさないことです。平常時の資金管理や銀行融資・公的な融資制度などの活用に加え、万が一の際にはファクタリングやビジネスローンなど、機動的な手段を活用できるよう、状況に応じた柔軟な資金繰り戦略を準備しておくことが大切です。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2026年09月05日