第103回

住宅ローンで叶った古民家カフェ風の家。農地転用手続きで苦労しました。

福島県にお住まいの焼きだんごさんは、住宅ローンを使って、古民家カフェ風で木の温かみが感じられる家を建てました。ひのきの柱が見える真壁造りで、和の魅力と現代的なセンスが光っています。実は義実家の農地転用の手続きがこじれるピンチもあったそうです。

オーナーさんデータ
福島県 焼きだんごさんご一家(ハンドルネーム)
家族構成:
焼きだんごさん(38歳・会社員)、妻(38歳・会社員)、子ども3人(6歳、5歳、3歳)
建設時の世帯年収:
400~500万円
購入した住宅:
サイエンスホーム「Sクラス」2階建て(自由設計)
延床面積と間取り:
土地303.2m2、延床116.6m2、3LDK
購入価格 :
2,400万円(建物価格)
利用ローン:
JAバンク「JA住宅ローン100%応援型R2」
金利タイプ:
固定変動選択型(3年間固定)
金利:
0.8%(2021年1月実行)
ローン借入金額 :
3,200万円(農地転用・水道引き込み工事代含む)
借入期間:
35年
毎月の返済額:
8万7,000円

「のびのびと子育てしたい」という妻の希望をかなえるため、農家である義実家の敷地内に家を建てることにした焼きだんごさん。ところが、地目を「農地」から「宅地」に変更する「農地転用許可」を申請したところ、思いがけない落とし穴がありました。
焼きだんご
当初は建築予定地となる農地部分だけを分筆して宅地に変更すればいいと思っていたのですが、予想外の問題が見つかりました。
農地に作業小屋や物置などを新しく建てる時には、地目を「宅地」に変更する法的な手続きが必要となるのですが、敷地調査の結果、義実家の敷地内にあった物置や作業小屋では必要な手続きがされていなかったことが分かったのです。
その物置や作業小屋は、かなり昔に、義実家の農地と宅地にまたがっている場所に義祖父や義父が自分たちで建てたので、本来ならば必要な手続きについて良く知らず、そのままになっていました。
農地転用許可申請を自治体の農業委員会に出したところ、そのことが問題視され、先に物置や作業小屋の建っている敷地の地目を「農地」から「宅地」に変更してからでないと新居の建築予定地の農地転用許可がおりませんでした。
地元の行政書士や土地家屋調査士の先生にご尽力いただき、全ての手続きを済ませて開発許可が下りるまでに丸1年以上かかりました。
ただ、許可が下りるまでに時間があったので、住宅関係の雑誌やブログなどでじっくり情報を収集しました。そのかいあってか、きちんと寄り添ってくれるハウスメーカーと出会えました。
焼きだんご
木の温もりを感じられる家を建てたかったので、各社の完成見学会などに積極的に足を運び、イメージをふくらませました。その頃、たまたま新聞の折り込みに入っていた「モデルハウス宿泊体験」のチラシを見つけました。
施工事例がどれも素敵で自分たち好みだったのでさっそく宿泊体験をしてみたところ、居心地が良く、すっかり惚れ込んでしまいました。断熱性能が高く、寒い時期にも関わらずエアコンの暖房を消して一晩過ごしても、19度をキープしているほどでした。
ぜひこのハウスメーカーにお願いしたいと思いましたが、農地転用の手続きが暗礁に乗り上げ、なかなか正式契約できませんでした。それでも、営業担当である社長が一言も契約を迫る発言をせず、辛抱強く付き合ってくれました。その誠実な人柄も決め手になりました。
こだわったのは、伝統的な建物に使用される「真壁仕様」。ひのきの柱が見え、味わい深いです。
焼きだんご
和の雰囲気を大事にしたかったので、柱や梁が見える「真壁仕様」にこだわりました。木のぬくもりを感じられるよう、キッチンやクッションフロアから、家具にいたるまで無垢材を中心に使用しました。壁紙は木目を生かせるよう白を基調とし、アクセントでネイビーブルーや紺色のクロスを配置しました。1階は古民家カフェ風、2階は山小屋風をイメージしています。

木の雰囲気が楽しめるリビング。
階段の下の空間も、学用品やランドセルの置き場として有効活用している

キッチンは標準仕様のTOTO「ミッテ」。
このキッチンのネイビーの色を家のテーマカラーにして、外壁やインテリアに使用した

リビングの手前に独立した洗面台やトイレを設置。
帰宅時、すぐに手洗いしやすく、トイレも使いやすい

廊下には、コートや子どもたちの制服を掛けるスペース。
小さな可動式棚のパントリーも作り、消耗品や日用品を収納

2階にある、階段と吹き抜けの間に設けたキャットウォーク。
遊び心たっぷりで、個性的な家を象徴するスペースに

2階のフリースペースと子ども部屋

2階のフリースペースには、独身時代にコツコツ集めた1/18サイズのアメリカンマッスルカーを飾った

雨の日も、子どもたちは広い室内でのびのびと遊べるようになりました。
焼きだんご
以前は天気が悪い日に子どもたちが騒ぐと周囲が気になりました。でも今は、思う存分身体を動かして遊べています。また、以前は家中のあちこちにおもちゃが散らかっていましたが、「おもちゃで遊ぶときは子ども部屋で」というルールが浸透しつつあり、リビングがきれいに保てています。
私自身もフリースペースに展示コーナーを設け、しまい込んだままだったコレクションを飾ることが出来るようになったので嬉しいですね。
家事導線もよくなり、料理や後片付けはもちろん、水回りの掃除も楽しくできるようになりました。

2階の子ども部屋は11帖。
将来は部屋を分けられるよう、入り口のドアは2か所に設定。
照明もライディングダクトレールをそれぞれに配置した

ローン借入金額は約3,200万円。JAバンク「JA住宅ローン100%応援型R2」を選びました。
焼きだんご
妻の実家の敷地に分家住宅を新築するので、農地転用の手続きに「金融機関の融資証明書」が必要でした。ところが、民間の銀行や信用金庫などの金融機関では、融資証明書を発行するには「農地転用の許可証」が必要だといわれてしまいました。この許可証は、確実に住宅を建てられる土地でないと発行できないものです。農地転用の手続きに手間取っていた我が家では、この許可証を手に入れられませんでした。
しかし、唯一、JAバンクだけが所定の手続きを経て、条件付きで融資証明書を発行してくれたのです。とても感謝しています。
結びに、焼きだんごさんのように、理想の家を建てたい人へのメッセージを伺いました。
焼きだんご
見た目やデザインだけでなく、実際に住んでみたらどんな感じかを実感するのも大事だと思います。もし、真夏や真冬など厳しい気候の時期にモデルハウスの宿泊体験ができたら、断熱性能や気密性能を肌で感じられると思うので、おすすめです。
「やれるだけのことは全部やった!」と確信できるよう、できることは全力で取り組み、楽しめば、満足できる家づくりができるのではないでしょうか。
ライターからのコメント。

木の温かみが感じられる素敵なお家ですね。農地転用の問題でマイホームを断念する可能性もあったことを考えると、喜びもひとしおでしょう。
登記簿上の地目が「農地」に分類されている土地に家を建てる場合、基本的には地目を「宅地」へと変更すれば問題ありません。しかし、焼きだんごさんの例のように農地のうえに建物が建っていると、手続きが難しくなる場合があります。こうした場合は、行政書士など専門家に相談しながら進めていくといいでしょう。

※今回ご協力いただいた焼きだんごさんのブログ「30代夫婦が3兄弟と暮らす真壁&桧の家づくり」のURLは https://ameblo.jp/mysciencehomediary/

ライター紹介

齋田 多恵 の写真

齋田 多恵 (さいだ たえ)

東京生まれ。成蹊大学文学部日本文学科卒業。
法律事務所で社会人生活をスタートした後、女性向けエンタメ系サイトのライター兼ディレクター、モバイルゲームの運営、女性向けモバイルゲームのシナリオディレクター、シナリオライターを経験。
妊娠、出産を機に2016年からフリーライターとして活動開始。

企画/カデナクリエイト、編集/イー・ローン