第740回

おまとめローン問題を把握して適切な利用を!

最近「おまとめローン」が問題視されているニュースを目にしました。 実は、複数のカードローンで借り入れをして現在返済をしていますが、管理がしにくく面倒なので、借り換えて一本化しようと考えています。 「おまとめローン」を組むことになると思いますが、借り換えをしないほうがよいでしょうか。 また、注意すべきことがあるのでしょうか。(35歳男性 東京 会社員)
確かに、「おまとめローン」は貸金業法の規制の抜け穴になっているとの批判がありますが、借りる側が安易に借り過ぎなければ問題ありません。 複数のカードローンがあるなら、管理をしやすくするためにも「おまとめローン」に一本化したほうがいいでしょう。 選ぶ時のポイントは、返済負担を軽減するために、金利が低いものを選ぶことです。 その上で、積極的に繰上返済もしたほうがいいでしょう。

銀行の「おまとめローン」が“借り過ぎ”を助長していると批判

現在、貸金業法の総量規制によって、消費者金融会社やクレジットカード会社など貸金業者からの借入総額は、原則年収の3分の1までに制限されています。 一方、銀行のカードローンは、銀行が貸金業者ではないことから、総量規制の対象外になっています。 そのため、複数の貸金業者からの借り入れを、銀行のカードローンに借り換えをして一本化し、「おまとめローン」にすると、貸金業者からの借金をなくすことができ、再び貸金業者から年収の3分の1まで借りることができるようになります。 なお、銀行からは、年収の3分の1を超える借り入れもできるので、追加で借りることもできます。

たとえば、年収300万円の人が、貸金業者Aから50万円、貸金業者Bから50万円、合計100万円借りていたとします。 この方は、年収の3分の1まで借り入れをしているので、新たに貸金業者から借りることはできません。 しかし、この100万円を銀行のカードローンに借り換えると、新たに貸金業者から100万円まで借りることができ、銀行からは借り換えた100万円以外に新たな借り入れもできるのです。

このように、銀行のカードローンによる「おまとめローン」が、貸金業法の規制の抜け穴になって、個人の“借り過ぎ”を助長し、多重債務問題を再燃させかねないと批判されているのです。

確かに、銀行の自主規制や新たな法規制などが必要かもしれません。しかし、お金を“借り過ぎ”て困るのは自分です。自分を守るためにも、まずは“借り過ぎ”ないという強い意志が必要です。

おまとめローンは低金利のものを選び、その上で積極的に繰上返済をする!

複数のカードローンを借り換えて一本化する方法は、消費者金融の借り換え専用のおまとめローンを活用しても、銀行のカードローンやフリーローンを使っても構いません。

「おまとめローン」の目的は、借金を一本化して毎月の返済日を月1回にして返済日の管理を簡単にすること、低金利のものを選ぶなどして返済総額を軽減することです。

例をあげて考えてみましょう。現在2社の消費者金融から70万円をカードローンで借りて返済中だとします。

消費者金融 ローン残高 金利
(実質年率)
返済回数
(月1回)
各回返済額 返済総額 返済期日
A社
30万円
18.00%
47回
9,000円
416,416円
毎月15日
B社
40万円
17.80%
35回
15,000円
512,886円
毎月25日
合計
70万円
24,000円
929,302円

この2社のカードローンをある銀行のカードローンで借り換えて一本化してみましょう。

銀行 借入額 金利
(実質年率)
返済回数
(月1回)
各回返済額 返済総額 返済日
残高 返済額
C銀行
70万円
14.50%
93回
1万円未満
前月10日
の残高
1,085,578円
毎月10日
銀行: 1万円以上 50万円未満
1万円
銀行: 50万円以上 100万円未満
2万円

借り換え後の金利は、借り換え前よりも低い14.50%となっています。 返済日も月1回になってスケジュール管理がしやすくなりました。

しかし、この銀行のカードローンの場合は、ローンの残高に応じて各回の返済額が決まる「残高スライド方式」であるため、各回返済額が低く抑えられ、 借り換え前よりも毎月の返済負担は軽減しているものの、返済回数は93回(7年7ヶ月)と大幅に長くなり、そのため返済総額は100万円を超え、借り換え前よりも増えてしまっています。

これでは「おまとめローン」の意味がありません。 借り換えをする場合には、毎月の返済額を多くして返済期間を短くできる金融機関を選んだり、積極的な繰上返済(臨時返還)によって利息の負担を減らして返済総額を軽減し、返済期間も短縮する工夫をすることが重要です。 特に繰上返済は、どの金融機関もいつでもできるようになっているので、頻繁に少額からでも行って、少しでも返済が早く終わるようにしましょう。

次にこの2社のカードローンをある銀行のフリーローン(証書貸付)で借り換えて一本化してみましょう。

銀行 借入額 金利
(実質年率)
返済回数
(月1回)
各回返済額 返済総額 返済日
D銀行
70万円
14.60%
28回
3万円
828,391円
毎月10日

これも、借り換え前より金利は低くなっています。 毎回返済額や返済回数を自分で決めることができるため、各回返済額を6千円多い3万円に設定しました。 そのおかげで、返済回数が少なくなり、返済総額も約83万円と10万円近く減らすことができました。

「おまとめローン」の目的は、金利を低くすることだけではありません。 毎月の返済額を抑えることでもありません。 返済総額を借り換え前よりも少なくすることです。 借り換えをする際には、必ず返済総額を減らせることを確認するようにしましょう。 金利と毎月返済額、返済期間を確認し、その上で、たとえば、「最低半年に1回は5万円の繰上返済をする」など積極的で具体的な繰上返済のプランを立てるようにしましょう。

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2017年08月23日