第32回

住宅ローンは変動金利がおすすめ?仕組みやメリット、注意点について解説!

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この記事のポイント
  • 変動金利の利率は、「短期プライムレート」と呼ばれる利率に1%を加算して決めるのが一般的
  • 住宅ローンの変動金利のメリットと注意点(リスク)は事前に把握しよう
  • 変動金利型の利用者のうち約6割の人が変動金利型を選んでいる
電卓を持っている男性とペンを持っている女性が考えている画像

一大決心でマイホームの購入を決めたものの、悩むのが住宅ローン選びです。人生で一番大きな買い物といわれるだけに、住宅ローンは金利がお得なものを選びたいものです。銀行のホームページや窓口に表示された金利を見て変動金利にひかれる人も多いかもしれません。しかし、住宅ローンは数十年にわたる借り入れとなるのが一般的です。そこで、本記事では変動金利の仕組みや特徴、リスクについて解説いたします。しっかりと変動金利の特徴を押さえたうえで金利を選択していきましょう。

住宅ローンの変動金利とは

通帳と電卓、家の模型の画像

変動金利の概要
住宅ローンに限らず、借り入れをすると借入元本に利息を加えて返済をすることになります。そのため、まずは利息のかかり方の仕組みを大まかにでも押さえておきましょう。

ローン利息の基本的な計算は、借入元本に対して金利および借入期間をかけて算出する仕組みです。住宅ローンのような分割払いでは、返済が進むと徐々に借入元本が減っていくため、実際には次の計算式で表すようになります。

  • 利息額=借入残高×金利×借入期間

返済が進むにつれて借入残高と借入期間は減っていくため、返済するに従い利息の額も減っていきます。ところが、住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて「固定金利」と「変動金利」の2種類があることで内容は大きく変わるため注意が必要です。固定金利は借入時の金利が変わらない(固定されている)タイプ、変動金利は定期的に金利の見直しが行われるタイプです。

固定金利であれば、前述した「返済するに従い利息の額も減っていく」という理屈が当てはまりますが、変動金利の場合はそうとは限らないことを押さえておきましょう。なぜなら、変動金利は借入時より上がる場合もあれば、逆に下がる場合もあり、金利の変動次第で総支払額や総支払利息が確定しないからです。

変動金利の利息の仕組み

変動金利の仕組みをさらに掘り下げて見ていきましょう。「将来の金利がどう変動していくのか」は誰にも予測できないことです。しかし、「住宅ローンの変動金利がどのように決まっているのか」を押さえておくと安心材料となるかもしれません。銀行が変動金利の利率を決めるときには、「短期プライムレート」と呼ばれる利率に1%を加算して決めるのが一般的です。

短期プライムレートとは、銀行が最も優れた企業(業績が良い、財務状況が良いなど)に貸し出す際の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、1年以内の短期貸出金利のことです。この短期プライムレートは、市中金利などを参考に各銀行がそれぞれに決定するのです。

日本銀行の公表データによると、現在、多くの銀行で最も使われている短期プライムレートは1.475%(2019年12月現在)です。つまり、住宅ローンの変動金利は「1.475%+1%」の2.475%が基準となります。そこから、借り手の条件やキャンペーンなどによる金利割引が適用されて、最終的な金利が決まる仕組みです。

このようにして借入時の変動金利が決まりますが、変動金利タイプの住宅ローンでは経済情勢などに応じて通常半年ごとに金利が見直されます。しかし、半年ごとに返済額(元本+利息)に反映されるわけではありません。「5年ルール」と一般的にいわれていますが、通常、返済額の変更が行われるのは5年ごとです。つまり、5年間は返済額が変わらないことになります。

さらに、変動金利には「125%ルール」といわれるものもあります。これは、仮に金利が大幅にアップしても、返済額は1度の見直しあたり、それまでの返済額の25%アップが上限とされているルールです。つまり、仮に金利上昇に伴い返済額が30%アップしたとしても、それまでの返済額の25%アップにとどめられると考えておくと良いでしょう。

とはいえ、超過した5%分を全く払わなくて良いというわけではありません。銀行によって取り扱いが異なりますが、毎回の返済額に含まれる利息分を多くして元本の減りを少なくするというように調整することで精算されることもあることを覚えておきましょう。

変動金利の推移と今後の動向

ベースとなる短期プライムレートは2009年1月から2019年12月現在まで変わっていません。そのため、変動金利の基準金利は10年以上にわたり2%前半が続いている状況です。しかし、これはあくまで過去の状況になります。そのため、「今後は金利が上がるか」「まだ現在の状況が続くのか」は予測できません。

住宅金融支援機構が実施している「2018年度民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、今後1年間の住宅ローン変動金利の見通しとして「ほとんど変わらない」と考えている人が最も多く、2019年4月時点で65.2%(2018年10月は56.5%)でした。「現在よりも上昇する」と考えている人は23.5%で、前回調査の2018年10月時点の36.3%に比べて2.8%減少しています。

住宅ローンは20年、30年と長く続くものですから、1年~2年の短期の見通しをするだけではなく、仮に金利が上がっても対応できるような対策を採っておくことが大切です。

住宅ローンの変動金利のメリットと注意点(リスク)

RISKの文字の下でスーツの人がハサミを持っている画像

変動金利のメリット
変動金利のメリットには次のようなものがあります。

固定金利型と比べて低金利

住宅ローンの金利タイプのなかには、契約してから一定期間は金利が変わらない固定金利選択型もあります。一般的に「変動金利型」が最も金利が低く、「固定金利選択型」、「全期間固定金利型」の順で金利が高くなっていきます。仮に、2,000万円を借り入れ、20年間で返済する場合、金利が1%違えば総支払利息に220万円程度の差が出ます。できるだけ利息を抑えられるものを選びたいものです。

金利が上がらなければずっと低金利を享受できる

より金利の低い変動金利で契約し返済期間中に金利が上がらず、ずっと低金利を享受できれば、固定金利を選んでいた場合に比べて返済総額が少なくなります。

変動金利の注意点(リスク)

変動金利を選ぶときには次のような点に注意が必要です。

ローンの返済中に金利が上がる可能性がある

前述したように、2009年~2019年まで約10年間変動金利の基準金利は変わっていませんが、変動金利は年に2回見直されるのが基本です。20年、30年と長い返済期間中の間には、金利が上がる可能性は否めません。

金利が上がった場合は返済に影響

金利が見直しされればその後の返済額に影響します。金利が上がった場合には、その後の利息が増えることになりますから返済額が上がります。そのため、返済計画が立てにくいリスクがあります。

住宅ローンはどのタイプを選ぶべき?

変動金利型の利用者比率

現在住宅ローンを利用している人がどのタイプを利用しているのかを参考にしてみるのもいいでしょう。住宅金融支援機構が実施している「2018年度民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、2018年10月~2019年3月に民間住宅ローン(フラット35を含む)の借り入れをした人のうち、約6割の人が変動金利型を選んでいます。

  • 変動金利型:60.3%
  • 固定金利選択型:25.1%
  • 全期間固定金利型:14.6%

変動金利型を選ぶ人の割合は、約10年前から徐々に増えはじめ、現在の6割程度になっていますが、2008年前半頃までは変動金利型を選ぶ人の割合は20%前後でした。約半数は固定金利選択型で、残りの約30%が全期間固定金利型だったことを考えると、2008年~2018年の10年間で大きく流れが変わっているといえるのではないでしょうか。

固定金利選択型を選ぶ人とは

「2018年度民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、固定金利選択型を選んだ人のうち、当初の固定期間として最も多くの人が選んだ期間は10年で49.2%でした。次いで、10年超が31.1%ですから、今後10年のうちに金利が上がる可能性を考えて、現在の低金利を保持することを期待しているのかもしれません。

全期間固定金利型を選ぶ人とは

2018年10月の調査で3種の金利タイプのうち全期間固定金利型を選んだ人では、今後1年間に金利が上昇すると考えている人の割合がトップで55.6%と過半数を占めました。融資率は、変動金利型および固定金利選択型では90%超100%以下で最も多く利用されているのに対し、全期間固定金利型では80%超90%以下が最も多く利用されています。

他の2つに比べて金利が高いタイプですから、今の低金利のうちに全期間固定金利型を選び、頭金を多めに入れて借入金額を低めに抑えている様子がうかがえるのではないでしょうか。

変動金利型を選ぶ人とは

同調査で住宅ローン利用者の世帯収入を見ると、変動金利型を選択している人で一番多いのが「800万円以下」で29.2%でした。次いで「600万円以下」28.5%「1,000万円以下」17.1%です。また、800万円以下では、変動金利型よりも固定金利選択型および全期間固定金利型を選ぶ割合が多くなっていますが、「1,000万円以下」「1,500万円以下」「1,500万円超」では変動金利型を選ぶ割合が逆転しています。

変動金利型は一般的に金利が最も低く返済額を抑えられるメリットがあるため、年収が低めの世帯に利用されるように考えがちです。しかし、変動金利型は将来の返済額が上がるリスクがあります。返済額が上昇しても返済をし続けられる経済的な余裕が必要であることを考えると、年収が高めの人が選んでいることも理解できるでしょう。

まとめ

住宅ローンの返済額を少しでも抑えるためには金利に注目してみましょう。固定金利と変動金利では変動金利のほうが金利は低めであり、長く低金利が続いている状況で変動金利を選ぶ人の割合は増えてきています。

ただし、住宅ローンは20年~30年などと借入期間が長いのが一般的です。変動金利は、定期的に金利の見直しがされますから、返済中に金利が上昇するリスクがあります。そのため、目先の金利の低さだけにとらわれず、変動金利の仕組みをしっかりと押さえたうえで、金利が上昇した場合の対応も考えておきたいところです。そのうえで、低金利のメリットを享受できるよう自分に最も合う住宅ローンを選ぶようにしてください。

住宅ローンの選び方「イー・ローン」

住宅ローンは借入金額が大きくなるだけに、ローン選びの際にも金利を重視したいものです。固定金利や変動金利、年利率等さまざまな条件で、最も自分に合うローンを選ぶように検討しましょう。日本最大級のローンデータベース「イー・ローン」では「総合ランキング」をはじめ、「適用金利」「アクセス数」「申込数」の4つの視点でランキングをチェックすることが可能です。

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ライター紹介

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續 恵美子 (つづき えみこ)

日本FP協会認定CFP®

生命保険会社にて15年勤務した後、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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