第683回

実家の相続でよくある代償分割とは?兄弟に支払う資金が不足する場合の対策

最近、高齢の母親が入退院を繰り返しているため、そろそろ相続が発生することも視野に入れておかなければならないと感じています。残される財産は実家と預貯金が少しです。今後どのように弟と財産を分けたらよいでしょうか?(Aさん 会社員 55歳)
不動産などの分けられない財産を複数の相続人で分ける場合、相続した者が他の相続人に差額を現金などで支払う「代償分割」を行うのが一般的です。相続財産だけでは差額の資金が不足する場合は、何らかの対策が必要です。
福島 佳奈美
福島 佳奈美

相続が発生したらどのような手続きが必要?

いつかはやってくる親の死については、頭でわかっているつもりでも、心の準備は難しいものです。ですが、実際にその時がやってきたら期日までに行わなければならないこともありますので、事前に内容を把握し対策を立てておきましょう。

相続が発生すると、遺産の状況を把握した上で、3か月以内に遺産を相続するかどうかを判断する必要があります。借金など負の財産がある場合は、家庭裁判所に「相続の放棄」や相続の範囲内でのみ負債を負う「限定承認」を申し立てることができ、その期限が相続開始を知った日から3か月以内と決められているためです。特に問題が無ければ、財産をそのまま相続することになります。

さらに、相続開始を知った翌日から10か月以内に相続人の間で遺産分割協議を整え、相続税を申告、納付する必要があります。相続税には基礎控除額があり、相続財産が「3,000万円+法定相続人の数×600万円」の範囲内であれば、非課税になり申告も必要ありません。

Aさんのお父様は既に他界しており、法定相続人はAさんと弟の2人のみということですので、基礎控除額は3,000万円+1,200万円で4,200万円です。相続財産が、Aさんが同居していた評価額3,000万円の実家と現金500万円のみならば、相続税は発生しません。後は、財産の分け方だけを考えればよいでしょう。

もし不動産の評価額が大きい場合でも、被相続人と同居していた場合などの一定の要件を満たせば、土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地の特例」で評価額を大幅に減らすことができます。

【参考リンク】

分割できない不動産を相続する場合に有効な代償分割とは?

相続人の間で遺産を分割する方法は、大きく分けて次の3つがあります。

(1)遺産の一つ一つを誰が取得するか決め、そのままの形で相続する現物分割
(2)遺産を売却して現金化し、相続人で分けあう換価分割
(3)分割しにくい財産を相続した者が、他の相続人に対して差額を現金などで支払う代償分割

相続財産が実家しかなく、実家に住んでいた相続人がそのまま住み続ける場合、他の相続人が不公平感を持つ場合があります。このようなケースでは、自分の財産から他の相続人に現金などを支払う(3)の代償分割ができれば、実家を残したまま円満に相続できます。

代償分割を行うことになったら、財産の相続状況を明確にし、代償分割をすることを明記した遺産分割協議書を作成しましょう。後々トラブルになることを避けるのに有効ですし、金銭の受け渡しが「贈与」ではないことの証明にもなります。

不動産担保ローンを利用する時の注意点は?

代償分割したいが、兄弟に分ける現金が手持ちでは不足するような場合は、事前に被相続人が生命保険に加入しておき、分割資金に充てるのが一般的ですが、様々な事情でできないこともあります。

Aさんが弟と、実家の評価額が3,000万円と現金500万円を相続し公平に分けるとすると、1人あたり1,750万円ずつ相続ということになります。Aさんは、現金500万円を渡しても、さらに単純計算で1,250万円を弟に支払わなければなりません。このような場合、不動産担保ローンを利用するのも一つの案です。

不動産担保ローンとは、担保となる不動産の価値の範囲内で融資を受けるものです。比較的大きな借り入れが可能となり、返済期間も25年から30年程度の長期で設定でき、金利も無担保のローンと比較すると一般的に低い金利での借り入れが出来ます。

但し、返済が滞った場合、担保の不動産を失う可能性もありますので、確実に返済できる場合のみ利用しましょう。また、登記費用や事務手数料などの諸費用がかかるので、その費用も考慮に入れておきましょう。

一般的に、不動産担保ローンは申し込みから借り入れまで3週間から1か月ほど見込んでおく必要がありますが、担保物件によっては1か月以上かかることもあります。利用する場合は、期間に余裕を持って申し込むことも大切です。

【参考リンク】

担当:福島 佳奈美 (執筆:2016年07月15日)

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