第848回

台風被害の補償はどうなる?住宅ローンは?

最近、台風や豪雨などの自然災害が頻繁に起こっています。 住宅購入を検討していますが、万一のときの補償がどうなるのか心配です。 家が壊れても住宅ローンは残ってしまうのでしょうか。(会社員 35歳 男性)
住宅に関する補償には火災保険、地震保険がありますが、契約内容によって補償の範囲は異なるので、十分な確認をしましょう。 自然災害時債務免除特約を付けられる住宅ローンもありますので、併せて検討してみるといいでしょう。

住宅の保険は、自然災害の種類、損害の程度によって補償内容は異なる

年々、台風、集中豪雨などによる自然災害は大規模化し、それに伴って被災し、いまだ生活再建ができない方は多くいます。 もはや日本のどこにいても災害に遭う可能性があると言っても過言ではないでしょう。 他人事と思わず、さまざまなリスクに備えておかなければなりません。

住宅の保険については、大きく分けて火災保険と地震保険があります。 そのうち、火災保険への加入は住宅ローンを借りる際の条件になっていますので、持ち家であれば、ほとんどが加入していることでしょう。 ただし、保険内容については、損保会社、契約の仕方、自然災害の種類によっても異なりますので、現在加入中の人は今一度確認し、不足、不安があれば、契約内容の変更も検討すべきでしょう。 その際、火災保険は、建物の補償と家財の補償とあり、最近の自然災害の状況を考えると、建物でだけではなく、家財保険にも加入しておくと安心でしょう。

火災保険における自然災害の補償は、主に、以下の4つになります。

  • 1) 台風・竜巻などによる損害
  • 2) 雪災・ひょう災による損害
  • 3) 落雷による損害
  • 4) 洪水・集中豪雨・土砂崩れによる損害

このうち、4)の、いわゆる水害については、基本の補償から外すことができますが、海、河川沿いに限らず、ひとたび氾濫するとその被害は広範囲になることから、自治体のハザードマップで確認するなどして、契約は慎重に考えたほうがいいでしょう。

また、落雷による損害以外は、免責があります。 たとえば、台風による被害については、損害額20万円以上の損害があった場合に保険金が支払われるなど一定の条件があります。 また、洪水や集中豪雨による被害についても、床上浸水や損害割合が30%以上の損害の場合となっており、必ずしも、こうした自然災害に遭ったからといって、全額補償されるわけではないことも、理解しておきたいところです。

住宅ローンは、「自然災害債務整理ガイドライン」により、減額、免除の手続きが必要

自然災害で被災した場合、建物や家財の損害は火災保険で一定額は補償されるものの、住宅ローンは返済が続きます。 しかし、自宅の再建をしなくてはならない、場合によっては収入減もありうるなかで、住宅ローンを返していくことは困難です。

そうした被災者が少しでも生活や事業を再建しやすいように、「破産」など法的な債務整理によらず、再建への道筋をつけるために「自然災害債務整理ガイドライン」が策定されました。

「自然災害債務整理ガイドライン」(正式名称:「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」)は民間の自主的なルールで、平成28年(2016年)4月から適用が開始されました。 このガイドラインを利用することによって、住宅ローンを借りている被災者が、銀行などの金融機関との話し合いにより、ローンの減額や免除を受けることができるようになりました。

最終的には、簡易裁判所に特定調停を申し立てすることになり、手続きなどは必要になりますが、万が一、自然災害で被災した場合は、こうした仕組みがあることも覚えておきましょう。

自然災害時債務免除特約付きの住宅ローンは一部金融機関で取り扱い

最近では、頻繁に起こる自然災害に対応した住宅ローンも登場しています。 まだ、一部の金融機関での取り扱いですが、これから住宅ローンを借りるのであれば、自然災害時債務免除特約付きの住宅ローンなどを検討してみてもいいでしょう。 これは、損害の程度に応じて一定期間の住宅ローン返済が免除されるというもので、現時点での主な取扱銀行は、新生銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、常陽銀行などとなっています。

新生銀行の場合、通常の住宅ローンに金利上乗せなしで特約として付帯することができます(事務取扱手数料15万円<税別>がかかる)。 全壊の場合は24回分、大規模半壊で12回分、半壊で6回分の返済が免除されます。ただし、利用する住宅ローンは、下記のような条件があります。

  • ◎金利タイプ:当初固定金利タイプまたは、長期固定金利タイプ
  • ◎借入金額:1500万円以上
  • ◎借入期間:25年以上
  • ◎返済方法:毎月返済のみ(ボーナス併用返済を利用しない)

※2019年11月現在の情報を記載しております。また、特約期間は10年など限定的である点は注意が必要です。

三井住友銀行、みずほ銀行、常陽銀行などでは適用金利に0.05~0.1%が上乗せになり、補償内容の条件も異なりますので、検討する際には、金利だけではなく、契約条件の確認を行うようにしてください。

住宅ローン金利は、過去最低水準で推移しています。 新規に借り入れるのであれば、少しの負担で災害リスクに対応できる住宅ローンを検討してみてもいいかもしれません。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2019年11月12日