第759回

変動金利。実は変動していない!?

約8年前に変動金利型の住宅ローンを借りました。その後も金利は下がり続けていますが、変動金利型は金利が下がっているのですよね?(N・Kさん 48歳 会社員)
変動金利型の住宅ローンを利用している人は、「金利が下がれば自分が借りている住宅ローンの金利も自動的に下がる」と考えられている人が多いようです。しかし、基準金利は2009年から変わっておらず、新たに住宅ローンの借り入れをする際の金利引き下げ幅の拡大が続いているにすぎません。このため、借り換えた方が有利な場合もあります。

変動金利の基準金利は2009年から変わっていない!

住宅ローンの金利には、基準金利(店頭表示金利)と適用金利があります。 変動金利型の住宅ローンの基準金利は、各金融機関が独自に決定している「短期プライムレート」を元に決定されます。 一方の適用金利は「条件を満たすと基準金利から一定の金利を引き下げ(割引)する金利」のことです。 引き下げ幅は契約時に決定し、その引き下げ幅に基づき適用金利が決定されます。

実は、「短期プライムレート」は2009年初めくらいから動いていないため、基準金利も2.475%から変えていない金融機関がほとんどなのです。 しかし、適用金利は徐々に下がってきています。 各金融機関が競って引き下げ幅を拡大しているからです。

具体例で見てみましょう。 N・Kさんが2009年春に大手銀行の変動金利型の住宅ローンを借り入れした場合、基準金利は2.475%、適用金利は1.475%です。引き下げ幅は1%でした。 それが、2018年1月の基準金利は2.475%で変わらないものの、適用金利は0.600%。 引き下げ幅は1.875%に拡大しています。

つまり、N・Kさんが受けている割引は1%で、その引き下げ幅が完済までずっと続くということです。 もし今現在で借り換えると割引幅を1.875%に拡大できます。 その差は0.875%ですが、借入残高が大きく返済期間が長いほど、借り換えのメリットを享受できます。 借り換えの場合の適用金利は、0.439%、0.440%、0.457%という金融機関もあり、より低い金利に借り換えるとメリットは大きくなります。

メリットがあるなら借り換えを!

N・Kさんのように、2016年2月のマイナス金利政策導入以前に変動金利型で住宅ローンを借りた人は、現在の低金利の恩恵を十分に活かしきれていないと考えられます。 変動金利型の住宅ローンは、金利が下がれば自分の借りている住宅ローンの金利も自動的に下がるという先入観があるからかもしれません。 このような人が約500万人いらっしゃるそうです。

みなさんもそのような思い込みをお持ちではありませんか? 今一度、適用金利と引き下げ幅を確認し借り換えのメリットがあるかを検討してみましょう。 その際、余裕があるなら返済額を増やして返済期間をできる限り短くすると老後資金の貯蓄にもまわす時間も増えるでしょう。

また固定金利型の住宅ローンの金利も下がっているので、この機会に全期間固定金利型または10年固定金利型に借り換えて、将来の金利上昇リスクを回避するという方法も検討できるでしょう。

借り換えするメリットの有無は、事務手数料や保証料など借り換えにかかる費用にもよりますので、諸費用含めて検討していきましょう。

【参考リンク】

私が書きました

小川 千尋 (おがわ ちひろ)

ファイナンシャル・プランナー。

1994年ファイナンシャル・プランナー資格取得。資格取得後、以前から携わっていた出版物の編集・執筆の経験を活かし、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー誌や一般誌、新聞、ウエブサイトなどのマネー記事の編集・執筆・監修などの執筆関連業務および個人のライフプランなどの相談業務、セミナー講師として活動。

※執筆日:2018年01月15日