第956回

注目の中高一貫教育、必要資金や最新情報を確認し事前の準備を

子どもの進学で悩んでいます。中高一貫教育の学校にも関心がありますが、資金的な不安があります。進学先によって、教育費はどの程度違いがあるのでしょうか?(東京都・Fさん)
いろいろな選択肢がありますから、制度を十分理解しておきましょう。中高一貫教育校といっても形態は異なります。国公立か私立かで教育費は大きく違ってきます。資金的に無理のない選択をすることも大切です。
伊藤 加奈子
伊藤 加奈子

中高一貫教育校は3タイプあり、最近は完全中等教育校への移行が進む

もともと私立では幼稚園、小学校または、中学校から大学までエスカレーター式に進学する学校があり、中高一貫教育なら私立、という選択になっていました。これが1998年に学校教育法が改正され、1999年4月から国公立でも中高一貫教育校を設置できるようになりました。平成30年度時点で、国公立・私立合わせて全国で635校が登録されています。

中学から高校までの6年間、連続性を持たせた教育が可能となり、一貫した学習環境のもとで学べること、生徒一人ひとりの個性をより重視した教育を受けられるということで、進学を希望する生徒、保護者が増えています。

中高一貫教育校には、「中等教育学校」「併設型」「連携型」の3つの設置形態があります。

中等教育学校は1つの学校として、一体的に中高一貫教育を行い、中学は前期課程、高校は後期課程と位置付けられています。前期課程修了時に別の高校を受験することも可能です。併設型は、中学と高校の設置者が同じで、基本的には無選抜で中学から高校へ進学することになります。連携型は、既存の中学と高校が連携し、中高一貫教育を行うもので、中学校へは市町村からの就学指定で入学し、その後、高校へは入学者選抜が行われます。

最近は高校からの入学者の募集を停止し、完全中等教育学校に移行する学校が増えています。中高一貫教育のメリットとして、カリキュラムを前倒しにし、教育内容の一部入れ替えなどが可能なことがあげられます。その分、文化的な活動やスポーツ活動などに時間を充てるなど、独自の教育理念を実現できます。しかし、高校からの入学者に対しては、教育カリキュラムの調整を行う必要があり、教員の負担となっている側面もあります。それが完全中等教育校への移行が進んでいる理由とも考えられます。

ひとくちに中高一貫教育といっても、公立なのか私立なのか、どんなタイプの一貫校なのかで事前の準備の仕方に違いがでてきます。保護者は十分理解して選択をするようにしたいものです。

6年間にかかる学校関連費用は、公立、私立で大きな違いがある

文部科学省の『平成30年度子供の学習費調査』によると、1年間の子ども1人当たりの学習費総額(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、以下のとおりです。

中学校
  • 公立:48万8397円
  • 私立:140万6433円
高等学校
  • 公立:45万7380円
  • 私立:96万9911円

進路によって中高6年間の総額は、

  • 中学校・高校ともに公立:146万円+137万円=283万円
  • 公立中学校・私立高校:146万円+290万円=436万円
  • 中学校・高校ともに私立:422万円+290万円=712万円

となっています。公立はおおむね横ばいで推移し、私立は増加傾向にあるようです。ただし私立高校は前回の調査から減少しており、授業料、補助学習費の減少によるものとしています。

とはいえ、公立か私立かによって約2.5倍もの差があり、中学から私立だと700万円以上が必要になるため、子どもが小さいときから教育費の準備をはじめなければ、払いきれるものではないでしょう。

中高一貫教育校も基本的には同様で、公立の中等教育学校の場合、中学にあたる前期過程の授業料は無償、高校の授業料も公立の標準額となっており、従来の公立中学、公立高校への進学と変わりはありません。

一番注意が必要なのは、入試に向けた塾代です。私立、公立とも入試がありますが、公立の入試問題は適正検査、作文がメインで教科横断の総合的な内容となっており、考える力が求められます。私立のいわゆる「お受験」とは全く異なるものです。私立と公立の両方を受けるのであれば、私立対応の受験勉強、公立対応の受験勉強が必要で、塾代もかさむことになります。また、小学校の何年生から塾に通うかによっても、必要な資金は異なってきます。

教育費は公的な支援制度を活用し、教育ローンは必要最小限での利用を

子どもの教育費については、国や自治体による支援制度が充実しつつあります。世帯年収に条件がありますが、国の制度としては「高等学校等就学支援金制度」があります。授業料を実質無料とするもので、国公立・私立を問わず、条件を満たせば利用することができます。

このほか、授業料以外の教育費(教科書代、学用品、学校外活動費修学旅行費など)の負担軽減のために「高校生等奨学給付金」もあります。

教育費負担に不安がある場合は、こうした制度を利用し、子どもの進学の選択が狭まらないようにすることが重要です。

教育ローンを利用するのもひとつの方法ですが、中学から大学までの教育費をローンでまかなうのはリスクが大きく、卒業後の返済が非常に厳しいものになってしまいます。教育ローンの利用は、必要なときに、必要な資金のみを借りるなど、無理のない計画を立てることが大事です。教育ローンによっては、子どもが在学中は元金据置で、手数料、利息のみの支払いにし、卒業後に子どもが返済するなど、商品によって条件や返済方法はさまざまです。教育ローンの利用を考えているのであれば、事前に仮審査を申込み、どの程度借りることができるのか、確認しておくのもいいでしょう。いくつかの商品を比較し、最適な商品を選ぶことが重要です。

教育費は高校で終わりではなく、その後専門学校や大学に進学とれなれば、まとまった資金が必要になってきます。教育費のために貯蓄をすると同時に、いつ、どのくらいの資金が必要になるか、不足額はどの程度になるのかもチェックしておくようにしてください。

【参考リンク】

担当:伊藤 加奈子 (執筆:2021年12月20日)