第1033回

事業資金「ゼロゼロ融資」の返済が本格化!対策が必要なら早めの行動を

かねてより飲食店を経営していますが、新型コロナウイルス禍で売上が激減したため、2020年の夏に民間金融機関から実質無利子・無担保で融資を受けました。今年の春からようやく客足が戻り始め、売上も回復基調になっているものの、まだ、返済を始められるほど回復していません。対策があれば教えてください。(52歳 男性 兵庫県 個人事業主)
新型コロナウイルス禍で売上が減少した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が難しいと思われる場合、まずは融資を受けた金融機関に相談するとよいでしょう。2023年1月からスタートした「コロナ借換保証制度」を利用できれば、手元資金を増やしたり、据置期間(最大5年)の設定によって元金返済のスタートを遅らせることができます。また、融資の条件変更を相談する方法もあります。今後、確実な返済が見込める場合は、民間のビジネスローンを一時的に活用して資金繰りを改善する方法もあります。

「ゼロゼロ融資」の返済開始は、2023年夏から秋にかけてピークを迎える!

新型コロナウイルス禍の中、多くの企業や個人事業主の資金繰りを支えた民間金融機関による「ゼロゼロ融資」は、2020年5月からスタートし、2021年3月末に受け付けが終了しました。「ゼロゼロ融資」の実質無利子期間は3年、据置期間は最大5年ですが、2023年度には返済が本格化しており、今夏から秋にかけて、返済開始がピークを迎えると言われています。

ただ、企業や個人事業主の中には、十分に事業が回復していないまま、返済を始めなければならないところも多いようです。無理に返済をすれば、資金繰りが悪化して経営難に陥る可能性もあります。

返済が難しそうな事業者は、まず、早めに融資を受けた金融機関に相談をするとよいでしょう。

「コロナ借換保証制度」の活用を検討する!

2023年1月から「コロナ借換保証制度」が始まっています。これは、新型コロナウイルス禍の影響の長期化や物価の上昇等によって厳しい経営状況が続く事業者に対して、「ゼロゼロ融資」の借り換えや、他の保証付融資の借り換え、さらには、事業を再構築しようとする場合等の前向きな投資に必要な新規の資金需要にも対応する保証制度です。

融資を受けた金融機関に相談をした上で、この仕組みが活用できそうなら、「ゼロゼロ融資」の借り換えにとどまらす、手元資金を増やすことも可能です。また、据置期間(最大5年)を設定できれば、その間は元金の返済をする必要がないため、資金繰りの悪化を防ぐことができます。

ただ、この制度の活用には、「売上または利益率が5%以上減少」等の一定の要件を満たす必要があります。また、経営行動計画書の作成、金融機関による継続的な伴走支援なども条件になっています。

「ゼロゼロ融資」の条件変更を相談する!

借り換えが難しい場合には、融資を受けた金融機関に「ゼロゼロ融資」の返済金額や返済方法の変更・見直しを相談する方法もあります。金融機関には、借入金の返済や条件変更に対して、最大限柔軟な対応に努めるよう国や都道府県から繰り返し要請されています。

条件変更の可否は、最終的には金融機関の審査により決定されますが、返済金額の減額、返済期間の延長、据置期間の延長等の変更が行われた場合、当面の資金繰りの悪化を防ぐことができます。

早期の事業回復が見込めそうなら、一時的にビジネスローンの活用も?!

資金繰りを改善するのに必要な資金が比較的少額で、早期の事業回復が見込め、短期間での返済が可能な事業者の場合は、ビジネスローンを一時的に活用する方法もあります。政府が作った保証制度や融資制度等と比べると金利は高めですが、金融機関の審査回答期間が短く、手続きも比較的簡単です。

借り換えや条件変更、ビジネスローンのいずれをとっても、借り入れた資金は返済する必要があります。あらかじめ、今後の事業の先行きを冷静に見極めて、現実的な資金計画をしっかりと立案し、借り過ぎず、確実、着実に返済ができるプランを作成するようにしましょう。

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2023年06月19日