第865回
緊急時に活用できる資金調達方法とは?
- 中小企業を経営していますが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、売上の大幅減少と経費のアップによって収益が急速に悪化しています。 たちまち資金繰りに困る事態に陥りそうですが、このような緊急時に活用できる資金調達方法には、どのようなものがあるのでしょうか?(会社経営 40代 男性)
- 突如発生した新型コロナウイルス感染症の拡大が、企業活動や個人の生活に重大な影響を及ぼしています。 現時点では収束の時期が見えないため、中小企業の経営者の不安は大きいでしょう。 特に懸念されるのは、取引先に支払う資金、従業員に払う給与、売掛金の回収、融資の返済などの資金繰りでしょう。 政府や自治体は、すでに資金繰り支援を含めたさまざまな支援策を用意しています。 今後も状況の変化に応じて新たな施策が打ち出されることでしょう。 まずは、自社の経営への影響の度合いを見極めつつ、有効に活用できる制度の情報収集を行って、必要に応じて適切な窓口にすぐに相談できるようにしておきましょう。
まずは、経営への影響を見極めたい!
新型コロナウイルス感染症は、現時点では収束が見えないため、経営への影響がいつまで続くかわかりません。 それでも経営者は、ある程度長引くことも想定して会社の舵取りをしなければなりません。 そのためには、まず、ヒト、モノ、カネの視点で経営への影響度を具体的に見極める必要があります。 例えば、売上減少に伴って従業員の雇用の維持をどうするか、従業員の感染防止等のために働き方をどう変えるか、商品の製造に必要な部品や原材料が取引先から円滑に調達できない場合の対策をどうするか、どの程度売上が減少するか、売上減少がいつまで続くか、仕入先などに支払う資金や従業員に支払う給与、売掛金の回収、融資の返済などの資金繰りをどうするか、など、さまざまなことを検討する必要があります。
事業内容や会社によって検討事項は異なるものの、漠然とではなく、具体的な数字に落とし込んで詳細に見積もる必要があります。
政府や自治体の支援制度の情報収集をし、使えそうな制度と相談窓口を洗い出しておく!
新型コロナウイルス感染症による企業への影響を緩和し、企業を支援するための施策は、すでに政府や自治体が用意しています。
事業会社向けの支援制度は、国では主に厚生労働省と経済産業省が打ち出しており、都道府県や市区町村などの自治体も用意しています。 まずは緊急時のセーフティネットである公的な支援制度の活用を検討したいものです。
例えば、厚生労働省は小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援制度を設け、正規・非正規を問わず、年次有給休暇とは別に有給休暇を取得させた企業に賃金分の助成金を払うこととしています。 また、新型コロナウイルス感染症の影響で事業の縮小を余儀なくされた事業主が従業員を一時的に休業させるなどして雇用の維持をした場合、休業手当や賃金等の一部を助成する雇用調整助成金制度の特例を追加で実施しています。
経済産業省は、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所などに相談窓口を設置して、経営上の相談を受け付けています。 また、新型コロナウイルス対策補助事業として、今後の事業継続性確保等のための設備投資や販路開拓、ITによる効率化などに取り組む事業者を優先し、一定の要件で補助金を支給するとしています。
新型コロナウイルス感染症で影響を受けている事業者への資金繰り支援策としては、融資の際に信用保証協会の一般保証とは別枠の保証が利用できるようにしたり、日本政策金融公庫の貸付要件を緩和して、利用しやすくしています。
さらに、都道府県や市区町村も資金繰り等を支援する施策を用意しています。
今後も新型コロナウイルス感染症の状況の変化などによって、新たな施策が打ち出される可能性があります。 最新の制度内容と相談窓口は、厚生労働省や経済産業省、都道府県庁、市区町村役場のホームページに掲載されます。 情報の収集を継続的に行い、使える制度と相談・手続きの窓口を把握しておいて、すぐに活用できるようにしておきましょう。
公的な助成制度や融資制度、ビジネスローンなどの民間融資までさまざまな資金調達方法を把握しておくことが大事
近年は、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、西日本豪雨、2019年の東日本豪雨など、想定外の緊急事態が頻繁に起こっており、その都度、事業経営や個人の生活が重大な影響を受けています。
会社の経営者としては、活用できる公的な助成制度や融資制度の情報にすぐにアクセスできるよう、日頃から税理士や社会保険労務士とコミュニケーションを重ねたり、必要に応じて自分でも調べたりして資金調達の方法を把握しておくとよいでしょう。 なお、公的な制度は、一定の条件をクリアしないと活用できない場合もあるため、ビジネスローンなどの民間融資をできるだけ有利に活用する方法も理解しておくようにしましょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2020年03月16日