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住宅ローンを変動金利から固定金利に借り換えるタイミングは?メリットや注意点を解説
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この記事のポイント
- 変動金利から固定金利への借り換えはメリット・デメリットを十分に把握したうえで行なうことが重要
- 借り換えでは諸経費の発生や住宅ローン控除が受けられなくなる可能性、審査通過の必要性などの考慮が必要
- 金融情勢や政策等を十分に考慮し借り換えのタイミングを見極めることが大切
- 住宅ローンの「変動金利」と「固定金利」の違い
- 住宅ローンを変動金利から固定金利に借り換える4つのメリット
- 住宅ローンを変動金利から固定金利に借り換える4つのデメリット
- 住宅ローンの変動金利から固定金利へ借り換えるタイミングはいつ?
- 住宅ローンの変動金利から固定金利へ借り換える際の注意点
- まとめ

変動金利で住宅ローンを組んでいる人のなかには、最近の経済情勢や金融市場の動向に不安を感じている人は少なくないでしょう。「このまま変動金利で借り続けて大丈夫だろうか」「金利が上がったら返済額はどのくらい増えるのだろう」。金利の上昇に備えるため固定金利への借り換えを考える方もいるでしょう。
変動金利から固定金利に借り換えをするためには、借り換えのタイミングを見極めたり、現在契約している変動金利と新たに検討している固定金利の契約内容を比較したり、シミュレーションを活用して具体的な返済額の変化を把握することが大切です。
この記事では、住宅ローンの変動金利と固定金利の概要、変動金利から固定金利へ借り換えるメリット・デメリットについて解説します。併せて、借り換えを検討するタイミングや注意点についても紹介します。
住宅ローンの「変動金利」と「固定金利」の違い
はじめに、「変動金利」と「固定金利」それぞれの特徴や違いについて、改めて確認しておきましょう。住宅ローンの金利タイプは、大きく「変動金利型」と「固定金利型」に分かれ、固定金利型は「固定金利期間選択型」と「全期間固定金利型」に分かれます。
変動金利型
変動金利型は、金融市場の動向に応じて定期的に金利が変動するタイプの住宅ローンです。金利が上がれば、毎月の返済額や返済総額が増え、金利が下がれば毎月の返済額や返済総額が減ります。一般的に変動金利は固定金利よりも低めに設定されていますが、市場金利が上昇した際は固定金利で借りていた場合よりも高くなるリスクがあります。
返済額の急激な負担増加を抑えるために、多くの場合、変動金利には「5年ルール」と「125%ルール」が適用されます。
固定金利期間選択型
固定金利期間選択型は、一定期間の金利変動リスクを避けつつ、将来の金利状況に応じて柔軟に対応できることが特徴です。契約時に定めた一定の期間(例えば2年、3年、5年、10年など)だけ金利が固定されます。固定期間が終了した後は、一般的には変動金利型へ移行しますが、金融機関によっては再度固定金利期間選択型の選択が可能です。
全期間固定金利型
全期間固定金利型は、住宅ローンの金利が返済期間全体にわたって一定のまま変化しないことが特徴です。
返済額が毎月一定なので、金利上昇リスクを回避しながら、安定した返済計画を立てることができます。金利上昇局面では固定金利の方が有利となる場合があります
住宅ローンを変動金利から固定金利に借り換える4つのメリット

次に、変動金利から固定金利へ借り換えることによって得られる4つのメリットをご紹介します。
金利上昇による返済額増加のリスクを避けられる
変動金利から固定金利に借り換える最大のメリットは、将来的な金利上昇による返済額の増加リスクを回避できる点にあります。変動金利は市場金利の動向に連動するため、金利が上昇すれば返済負担が増大します。
具体的には、どのくらいの差が出てくるのでしょうか。借入金額や返済期間などの条件が同じ場合に、変動金利と固定金利でどの程度の差が出るのか、イー・ローンの「住宅ローンのこだわり借り換えシミュレーション」を用いたシミュレーションの結果を見てみましょう。
シミュレーション条件
- 借入金額:3,000万円
- 返済期間:25年
- ボーナス払い:なし
- 返済方式:元利均等方式
- 変動金利:当初0.8%、1年後から毎年0.1%ずつ上昇
- 固定金利:1.5%
元金 | 利息 | 合計 | |
---|---|---|---|
変動金利(0.8%) ※1年後から毎年0.1%ずつ上昇 |
¥30,000,000 | ¥6,428,397 | ¥36,428,397 |
固定金利(1.5%) | ¥30,000,000 | ¥5,994,148 | ¥35,994,148 |
借り換え効果 | ¥0 | ¥-434,249 | ¥-434,249 |
変動金利が上昇し続けた場合、最終的な金利は3.2%となります。借り換えから8年目には金利が逆転し、固定金利の1.5%を上回ります。
25年間の返済総額で比較すると、変動金利が上昇し続けた場合は約3,643万円となり、固定金利1.5%で借り換えていた場合の約3,600万円よりも約43万円多く支払う結果となりました。
このシミュレーションの結果は、将来の金利上昇リスクを考慮すると、固定金利への借り換えが有利になる可能性があることを示しています。
家計管理がしやすくなる
変動金利の場合、市場金利の変動によって返済額が変わる可能性がありますが、固定金利は毎月の返済額が一定なので、住宅ローン返済による将来の家計への影響を把握でき、教育費や老後資金など、将来必要となる大きな支出に備えた計画を立てやすくなります。
金利変動に対する精神的負担が軽減される
固定金利は契約期間中、金利が変わらないため、将来金利が上昇して返済額が増えるといった心配をする必要はありません。変動金利とは対照的に、将来的な金利上昇リスクから解放され、不安やストレスを感じることなく安定した生活を送ることが期待できます。こうした心の安定も固定金利への借り換えのメリットと言えるでしょう。
今までよりも手厚い団体信用生命保険に加入できる場合がある
住宅ローンの借り換えは、団体信用生命保険(団信)の内容を見直す良い機会にもなります。
各金融機関は競争力を高めるために、より魅力的な団信を付帯した商品を開発しています。数年前に契約した団信よりも、借り換え先の団信の方が手厚い保障を受けられる可能性がありますので、借り換えを機に充実した保障内容の団信に加入できれば、家計に与える安心感をさらに高めることができるでしょう。
住宅ローンを変動金利から固定金利に借り換える4つのデメリット
変動金利から固定金利への借り換えには多くのメリットがありますが、一方で、デメリットも存在します。ここでは前項目のメリットを踏まえ、借り換えにともなうデメリットを4つご紹介します。
諸経費が発生する
現在利用している金融機関で金利タイプを変更する場合、変更手数料は無料であることが一般的です。しかし、別の金融機関の住宅ローンの固定金利に借り換える場合は、事務手数料、保証料・保証事務取扱手数料、印紙税などの諸経費が発生します。
借り換えを検討する際は、金利差による返済額の軽減効果だけでなく、これらの諸経費を含めた総コストで判断することが大切です。
住宅ローン控除の対象外になる場合がある
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の利用条件の一つに、「返済期間が10年以上であること」という定めがあります。利息を抑えるために、借り換えた住宅ローンの返済期間を10年未満に設定すると住宅ローン控除が適用されなくなるので注意が必要です。
借り換えには審査に通る必要がある
住宅ローンの借り換えは、新規でローンを組む時と同様に、金融機関による審査に通る必要があります。
以下のような状況に該当する場合、審査に通らず借り換えができない可能性があります。
- 信用情報機関に延滞や債務整理の履歴が残っている場合
- 収入が不安定または大幅に減少した場合
- 健康状態に問題があり団信への加入が難しい場合など。
借り換えのタイミングの見極めが難しい
変動金利から固定金利への借り換えを検討する上で、もっとも難しいのがタイミングの見極めです。
金融市場が変化し金利が上昇し始める際、固定金利は変動金利よりも先に上昇します。固定金利は、国債の利回りに影響を受けるため、国債の利回りが上がると、固定金利もそれに応じて上昇するのです。一方、国債の利回りは、将来の市場動向を見越して行動する投資家の売買に左右されるので、固定金利が変動金利よりも早く変動するのです。
つまり、将来的な金利上昇が意識され始めると、まず国債利回りが上昇し、それに連動して固定金利が上昇し始めます。
したがって「そろそろ金利が上がりそうだから固定金利に換えよう」と考えたときには、すでに固定金利の上昇が始まっており、借り換えのメリットが薄れている可能性があります。
変動金利から固定金利への借り換えは、タイミングを考慮する必要がありますが、タイミングを正確に捉えることは専門家でも容易ではありません。
住宅ローンの変動金利から固定金利へ借り換えるタイミングはいつ?

変動金利から固定金利への借り換えにおけるメリットとデメリットを把握した上で、次に気になるのは「具体的にいつ借り換えるのが良いのか?」というタイミングの問題でしょう。次は借り換えに適したタイミングについて解説します。
金利の上昇が予測される場合
金融情勢や政策などにより、金利の上昇が予測される場合は、借り換えのタイミングといえます。
前述のように固定金利は変動金利よりも先に上昇するので、市場が金利上昇を織り込み始めると、固定金利はすぐに反応して上昇し始めます。それからでは、有利な条件での借り換えが難しくなっている可能性があります。
金利上昇のタイミングを正確に判断することは困難ですが、できれば、固定金利が上昇する前に借り換えるのが理想です。
固定金利のほうが低いとき
もう一つの分かりやすいタイミングは、現在利用中の変動金利よりも低い水準の固定金利の住宅ローンがあった場合です。この状態は稀なケースですが、金融市場の状況によっては起こり得ます。固定金利のほうが低い場合、金利負担の軽減が確実であるため、借り換えのメリットは大きいといえます。
住宅ローンの変動金利から固定金利へ借り換える際の注意点
変動金利から固定金利への借り換えを決断する前に、いくつか注意しておきたいポイントがあります。借り換えの際の注意点について解説します。
借り換えのタイミングを十分に見極める
住宅ローンを変動金利から固定金利へ借り換える際には、タイミングの見極めが極めて重要です。金利が上昇し始める前や、将来的な金利上昇が予測される時期に借り換えるのが理想的ですが、そのタイミングを図るのは困難です。
金利が上昇しそうかどうかを判断するためには、専門家のアドバイスを受けるほか、日本銀行の発言、国際情勢、国債の利回りや株式市場の動向などに注意を払うことが大切です。
既存と新規の契約内容を十分に比較する
借り換えを検討する際は、単に金利の差だけを見るのではなく、手数料や諸費用、返済期間などを細かに確認し、借り換えがメリットになるかどうかを判断することが大切です。
団信の内容も、しっかりチェックしましょう。団信は日々進化しているので、契約条件や内容が良くなっているケースは少なくありません。また、固定金利にすることで得られる「金利が変化しない安定性」と、変動金利のままにしておくことの「金利上昇リスク」を比較検討し、ご自身のライフプランに最適な選択をすることが大切です。
シミュレーションを活用する
住宅ローンの借り換えをする際はシミュレーションによる比較検討が不可欠です。シミュレーションツールは、金融機関のWebサイトや住宅ローン比較サイトなどが提供しています。シミュレーションでは、現在の住宅ローンの借入残高や残りの返済期間を考慮しつつ、新しい金利での試算を行うことで、現在のローンと新しい金利の返済総額や毎月の返済額を具体的に比較できます。金利や手数料は金融機関によって大きく異なるため、複数の金融機関のローンでシミュレーションを行い、比較検討することが重要です。
まとめ
住宅ローンを変動金利から固定金利へ借り換えることには、将来の金利上昇による返済額増加のリスク回避や家計管理のしやすさ、金利変動に対する精神的な負担軽減、手厚い団信への加入といったメリットがあります。一方で、諸経費の発生や住宅ローン控除の対象外になる可能性、審査不通過などのデメリットも把握しておく必要があります。
また、変動金利から固定金利への借り換えの際は、タイミングを十分に見極めるとともに、シミュレーションを活用して複数の金融機関のローンを比較検討することが重要です。
ご自身に合った住宅ローンをお探しの方は、さまざまな金融機関のローン情報を比較検討できる総合ローンサイト「イー・ローン」のご利用がおすすめです。ぜひ、最適な選択に向けた情報収集と比較検討にご利用ください。
住宅ローンの利用についてもっと知りたい方は、ぜひこちらのページもご覧ください。
ライター紹介

2級ファイナンシャル・プランニング技能士
都内ゲーム会社に12年勤務後、2018年12月にフリーライターとして独立。個人事業主としての開業を機に、金融・年金・不動産などのFP領域への関心を深める。毎年iDeCoと小規模企業共済の掛金を増額中。好きなものはふるさと納税。
融資の審査に関する内容につきましては、特定の金融機関がお申込みされたお客様に対して独自に行うものであり、当社は審査の過程および結果については一切関与しておりません。また、特定の金融機関の審査への適合性、正確性、完全性について保証するものではありません。
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