第899回

老後に向けた自宅のリフォームを考えるタイミングは?

コロナ禍で家にいることが多くなったのもありますが、築25年になる家の傷みが気になってきました。老後に向けたバリアフリー工事も含め、リフォームしようか迷っています。50代ではまだ早いものでしょうか?(Rさん 会社員、56歳)
快適に過ごすためのリフォームは、家計にムリのない範囲であれば、必要性を感じたタイミングで行うのは問題ないでしょう。補助金や減税なども参照しながら、タイミングを検討してはいかがでしょう。

老後に向けたリフォームは元気なうちに

老後に向けたリフォームを行うタイミングとしては、一般に、50代後半から60代前後がよいとされています。バリアフリーに限れば、実際に介護が始まったときがよいともいわれますが、予防的にバリアフリー工事を行うのは悪いことではないでしょう。

住みながら家全体のリフォーム工事を行うには、実は体力や労力が必要なうえ、ストレスもかかります。リフォーム会社を探し、何度か話し合って工事の内容や日程を細かく詰めます。工事が始まれば、必要な場所を片付けたり、気になれば掃除も行うことになります。

また、工事の間は毎日のように人が家を出入りするため、いろいろと気も使います。家族の荷物も置いてあるため、工事期間中は、不在にして任せるのは少々不安で、家族ができるだけ立ち会う形をとることも多いのではないでしょうか。

他にも、高齢者の事故の9割が自宅で起きていて、骨折から要介護状態になることもあります。そのため、転倒につながる危険な箇所は無くしておきたいもの。

こうしたことを考え合わせると、家族が元気で、体力もあり、老後の生活スタイルも見えてくる年代でリフォームを行っておきたいとされる理由がわかりますね。

公的介護保険における住宅改修費

「バリアフリー工事は実際に介護が始まったときがよいといわれる」と書きましたが、それは、公的介護保険から支援を受けられるためです。金額は決して大きくはなく、対象工事も限られますが、押さえておきましょう。

要介護認定(要支援・要介護)を受けた人は、上限20万円まで(自己負担は所得により1~3割)の住宅改修費の支援を受けられます。ただし、工事の前にケアマネジャーへの相談が必要です。自治体によっては独自の助成金を用意しているところもあります。

対象となる工事は次の通りです。

・手すりの取り付け
・床段差の解消
・滑りにくい床材・移動しやすい床材への変更
・引き戸等への扉の取り替え、扉の撤去
・和式から洋式への便器の取り替え
・畳敷や板製床材等から畳敷(転倒時の衝撃緩和機能が付加されたもの)への変更
・その他これらの各工事に付帯して必要な工事

なお、引越しや要介護度が高くなった場合は、再度支給を受けることができます。

減税制度も上手に活用を

リフォームを行う際には、減税制度を上手に活用しましょう。支払いは現金かローンか、ローンでも期間はどれくらいか、工事の内容はどのようなものかなどで受けられる減税の内容も違ってきます。手元資金が少なくなってしまう場合などは、あえてローンを利用するのも一法です。

リフォーム時に使える所得税減税制度一覧(2020年11月現在の制度)
制度 リフォームローン減税
(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
住宅ローン減税
(住宅借入金等特別控除)
投資型減税
(住宅特定改修特別税額控除)
ローンの条件 5年以上のローンを利用 10年以上のローンを利用 ローン利用の有無を問わず
対象工事 バリアフリー、省エネ、三世代同居対応、長期優良住宅化工事 耐震、バリアフリー、省エネ工事、三世代同居対応、長期優良住宅化工事、ほか 耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居、長期優良住宅化工事
居住開始 ~2021年12月31日 ~2021年12月31日 ~2021年12月31日
控除率 1~2% 1% 10%
控除期間 5年 10年(2020年は13年) 1年
最大控除額(年) 12.5万円 40万円 20万~50万円

国税庁タックスアンサーより筆者作成 *詳細は確認の上ご利用ください

リフォームに利用するリフォームローンについて整理しておきましょう。

リフォームローンは、本人または同居家族が所有する住宅の、増改築や修繕費用などのリフォーム工事に利用できるローンです。無担保型と有担保型があり、無担保型は抵当権設定が不要で、そのための諸費用が発生しない反面、金利が高めです。

一方、有担保型は、抵当権設定が必要になるため、そのための費用や保証料などが発生します。しかし、金利は低めで借入限度額が大きいため、大規模なリフォームの際に向きます。

工事の予算・内容で使い分けるといいでしょう。

【参考リンク】

私が書きました

豊田 眞弓 の写真

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2020年11月10日