第1159回NEW
地価上昇で相続税負担増!不動産担保ローンで乗り切る方法も
- 地価上昇により相続税がかかる人が増えていると聞きました。両親に相談してみても、「豪邸でもないし、自宅以外に大した財産もないから相続税は関係ない」と考えているようです。実際のところどうなのでしょうか。(会社員 51歳)
- 基礎控除額の引き下げや地価等の高騰により、相続税の申告・納税の対象となる人は増加傾向にあります。家族で相談しながら生前に対策を進めておくとよいでしょう。
近年の相続税の動向
国税庁の「相続税の申告実績の概要」によると、相続税の申告対象となる被相続人(亡くなった人)の割合は、2014年に4.4%だったものが2023年には9.9%と2倍以上に増えています。その主な理由は、相続税の基礎控除額の引き下げと、地価や株価の高騰です。
相続税は、亡くなった人から財産を受け継いだ際にかかる税金で、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を超えている場合にかかります。従来の相続税の基礎控除額は、5,000万円+(相続人の数×1,000万円)でしたが、2015年から3,000万円+(相続人の数×600万円)へと大幅に引き下げられました。例えば、相続人が配偶者と子1人だった場合、従来7,000万円だった基礎控除額が、現在は4,200万円になっています。
それに加えて近年、地価や株価が高騰し、相続財産の金額が大きくなりつつあります。2025年の路線価の全国平均は4年連続で上昇し、前年比で2.7%の上昇率でした。特に首都圏では地価だけでなくマンション価格の高騰も顕著です。また、地方都市やインバウンド需要のある観光地の一部でも地価が上昇しており、資産家ではない層にも影響を及ぼし始めています。
相続税の納税資金の準備方法
相続税は、現金による一括納付が原則です。しかし、相続財産の大部分が不動産であり、金融資産が少ないと、納税資金を準備できない場合があります。このような場合、相続した不動産を売却して納税資金を確保する方法がありますが、相続税の納付期限(10ヶ月)に間に合わなくなるおそれがあります。納付期限に間に合わせようと売却を急ぐと、売却価格を下げなければならないなど不利な条件で取引せざるを得なくなる可能性があります。
こういったデメリットを避け、不動産を売却せずに納税資金を確保する方法として、不動産担保ローンを活用する方法があります。
不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして融資を受ける商品です。無担保のローンと比べて低金利で利用でき、借入可能額も大きく、長期で借りることができる点が特徴です。
一方、借り入れには審査が必要で、諸費用や手数料もかかります。また、担保不動産には抵当権が設定されるため、返済が滞った場合、不動産を失うリスクがあります。利用する際には、しっかりと返済計画を立てることが重要です。
基礎控除額の引き下げや地価等の高騰により、相続税は一般家庭でも対策が必要になりつつあります。遺言書の作成や贈与の活用、生命保険への加入などの生前の相続対策に加え、納税が必要になった際の資金調達の選択肢として、不動産担保ローンのような多様な手法を理解しておきましょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。
大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。
※執筆日:2025年11月28日
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