第880回

フラット35の制度変更を知っている?2021年の変更点も要確認!

来春、子どもが入学する頃までに、一戸建て住宅を購入しようと考えています。住みたいエリアは決まっていますので、あとは物件と資金計画です。住宅ローンでは固定金利のフラット35が有名ですが、ローンについてはどう考えたらいいでしょうか。(Aさん 会社員 35歳)
フラット35は2020年4月に制度変更がありました。また、2021年1月にも変更を控えています。フラット35の変更点を確認した上で、民間住宅ローンも選択肢に加えて金利タイプや返済計画を検討しましょう。

2020年4月、フラット35の制度が一部変更に!

フラット35は、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している最長35年間の長期固定金利の住宅ローンです。住宅ローンの選択肢として検討する方も多いと思われます。

実は、2020年4月にフラット35の総返済負担率の算定方法が一部変更されました。総返済負担率とは、年収に占める「全ての借り入れの年間合計返済額」の割合です。フラット35の総返済負担率は下記の基準を満たす必要があります。

フラット35の総返済負担率基準
年収 400万円未満 400万円以上
基準 30% 35%

今回、「全ての借り入れの年間合計返済額」に含める借入金の対象が下記の通り変更されました。

・フラット35
・自動車ローン、教育ローン、カードローン等
・【追加】賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金
・【条件変更】フラット35以外の住宅ローン

この変更により、ローンを使用したマンション投資等の不動産賃貸の借入金も、返済負担率の計算に含めることになりました。但し、賃貸用アパート向けローン(ローンの対象がアパート1棟の共同住宅)は含める必要はありません。

また、フラット35以外の住宅ローンについては、返済中の住宅ローンを売却によって完済できることが確認できる場合に限り、売却を予定している住宅のローンを返済負担率の計算から除くことができるようになりました。つまり住宅の「買い替え」によるフラット35の使い勝手が良くなったといえます。

また、セカンドハウス取得を理由に、フラット35を二重に借り入れることができなくなった他、「借り換え」でフラット35を利用する場合の融資可能な借入期間も一部見直しになっています。このような使途でフラット35を利用する場合には内容をよく確認しておきましょう。

2021年1月のフラット35の制度変更は?

フラット35では、2021年1月にも制度変更が予定されていますので確認しておきましょう。

耐震性、省エネルギー性、バリアフリー性などの基準を満たした新築住宅・中古住宅の場合、フラット35の金利から一定期間金利引き下げを受けることができるものが「フラット35S」と呼ばれていますが、AプランとBプランがあります。今回、フラット35SのBプランの省エネルギー性の基準が見直されることになりました。

現行では、断熱等性能等級4の住宅【または】一次エネルギー消費量等級4以上の住宅、というのが基準要件でしたが、2021年1月より、断熱等性能等級4の住宅【かつ】一次エネルギー消費量等級4以上の住宅、に変更される予定です。より基準が厳しくなりますので注意しておきましょう。

また、要件に適合するリフォームを行った場合に一定期間金利を引き下げる、「フラット35リノベ」も2021年1月からはAプランは300万円以上、Bプランは200万円以上という工事費の規模要件が導入される予定です。さらに、Bプランでの対象となる工事要件も緩和される予定です。中古住宅を購入して自分好みにリノベーションをして住むという方法も最近流行していますので、住宅購入の選択肢が広がりそうです。

住宅購入の際の住宅ローンは固定金利と変動金利どちらを選ぶ?

フラット35は申込みを行う金融機関によって金利が異なり、2020年6月現在年利1.29%~2.03%、最頻金利が1.29%(返済期間21年~35年・融資率9割以下の場合)です。全期間固定金利なので返済計画が立てやすいというメリットがありますが、住宅金融支援機構が定める建築基準をクリアした住宅でないと融資が受けられません。

現在、民間住宅ローンの変動金利プランでは1%を切る融資を受けることも可能ですので、返済額を抑えるということでしたら民間金融機関の変動金利の住宅ローンという選択肢もあります。ちなみに、国土交通省が発表した「平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、住宅ローンの新規貸出額(平成29年度分)において、変動金利型の割合は50.7%と最も高くなっています。

また、一定期間固定金利でその後は変動金利か固定金利か選択できる「固定金利期間選択(指定)型」の住宅ローンもあります。これは、固定金利期間は3年、5年、10年などから選択し、固定期間が終了したらその時の金利で再度固定金利にするか、変動金利にするか選択する商品です。商品によっては変動金利しか選択できないものもあります。

「固定金利期間選択(指定)型」や「変動金利型」の住宅ローンにする場合は、将来的な金利変動によって返済額が増える可能性もありますので、資金に余裕を持って返済計画を立てることが必要です。

住宅ローンは、借入時に返済負担率を満たしているからといって、その後も確実に返済できるというものではありません。最近ではコロナウィルスの影響から収入にも変化が見られるご家庭が増えています。今の収入をベースに住宅購入後の教育費や老後資金などのライフプランも踏まえ、どのような金利タイプにするか、よく検討して住宅ローンを選びましょう。

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私が書きました

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福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2020年06月29日