第794回

住宅ローンや不動産担保ローンの手続きで必要な「不動産登記」とは?

住宅ローンを借りるときなど、不動産を担保にしてお金を借りるときは、「不動産登記」をする必要があると聞いたことがありますが、これは何のための手続きなのでしょうか。 また、手続きをするにあたってどんな準備をする必要があるのでしょうか。(37歳 男性 会社員)
「不動産登記」は、土地や建物を取得したとき、また、これらを担保にしてお金を借りるときなどに行う手続きです。 登記をすることによって、その不動産に対する所有権などの自分の権利を第三者に主張することができます。 住宅ローンや不動産担保ローンを借りるときに必要な登記は抵当権設定登記といい、金融機関が提携している司法書士に依頼して手続きをすることが一般的です。

登記によって不動産の物理的状況や権利関係が一般に公開され、権利を主張できる!

土地や建物は、所在や面積などの物理的な状況、および所有権や抵当権などの権利関係が不動産登記簿という公的な帳簿に登録され、一般に公開されています。 このことによって、不動産に対する自分の権利を第三者に主張することができ、取引を安全、かつ円滑に行うことができます。

登記簿に不動産の所有者としての登録がなければ、住宅ローンなどのように不動産を担保にした融資を金融機関から受けることができません。 また、売却しようにも手続きが円滑に進みません。

不動産登記は、建物の新築・増築・取り壊しをするときや、不動産の購入・売却・相続・贈与があったとき、また、住宅ローンや不動産担保ローンの利用・借り換え・完済をしたときなど、 つまり、不動産の物理的な状況や権利関係に変更が加わったときに、行う必要があります。

不動産登記を行う場所は、その不動産の所在地を管轄する法務局で、登記をするときには法務局に登録免許税を払う必要があります。 また、登記の手続きは専門的なため、建築会社や不動産会社、金融機関と提携している司法書士に依頼して代理申請をしてもらうのが一般的です。 なお、その際には司法書士に報酬を支払わなければなりません。

住宅ローンや不動産担保ローンを借りるときの登記は、抵当権設定登記

住宅ローンなど、不動産を担保にして金融機関からお金を借りるときに行われる不動産登記のことを抵当権設定登記といい、これによって金融機関は土地や建物を借金の担保として確保します。 お金を借りた人が返済不能になったとき、金融機関は優先的にその土地や建物を取りあげる権利を持ちます。

司法書士に抵当権設定登記の代理申請をしてもらう場合、金融機関やお金を借りる人が準備しなければないない主な書類等は以下の通りです。 なお、これらは、手続きに先立って、司法書士等から具体的に知らされるため、指示の通りに準備すれば構いません。

金融機関が準備する
主な書類等
・登記原因証明情報(または、抵当権設定契約証書)
 住宅ローンの場合は、金銭消費貸借契約書(兼抵当権設定契約書)
・資格証明書(発行後、3ヶ月以内のもの)
 金融機関の会社法人番号や名称、主たる事務所、代表者の資格、氏名、住所が記載されている書類
・司法書士への委任状
お金を借りる人が準備する
主な書類等
・登記済証(または、登記識別情報)
 ※住宅ローンの場合等で、所有権保存(移転)登記と抵当権設定登記を同日に行う場合は、司法書士が準備
・印鑑証明書(発行後、3ヶ月以内のもの)
・住宅用家屋証明書(建物が自己の住宅用であり一定の要件を満たす場合は、登録免許税が軽減されるため)
・司法書士への委任状
・身分証
・印鑑(実印)

不正登記、虚偽登記を防ぐため、司法書士との面談では本人確認が行われる

司法書士が不動産登記の代理申請を行う際には、司法書士によって本人確認が行われます。 特に、登記申請者が古くから所有している土地や建物を担保にしてお金を借りる場合などで、「登記済証(または、登記識別情報)」を紛失して準備ができない場合、 司法書士は、申請者と面談して間違いなく本人であることを示す「本人確認情報」を記載した文書を作成して、法務局に提出します。

本人確認情報の主な内容は、以下の通りです。

・面談情報(面談した日時、場所およびその状況)
・面識情報(面識がある場合、申請者の氏名を知り、かつ、申請者と面識がある旨及びその面識が生じた経緯)
・本人確認書類(面識がない場合、提示を受けた本人確認書類の内容、かつ登記名義人であると認めた理由)
※本人確認書類は、運転免許証、外国人登録証明書、住民基本台帳カード、旅券・乗員手帳、運転経歴証明書、個人番号カード(マイナンバーカード)など

司法書士による本人確認は、不正や虚偽の登記を防ぎ、事故を発生させないための仕組みです。

司法書士との面談に向けて、お金を借りる方は、運転免許証などの本人確認書類を準備する必要があります。

一般の個人が不動産登記の手続きを行うのは、住宅等の不動産の取得時や、住宅ローンや不動産担保ローンの借り入れ時、相続時などに限られ、頻繁に経験することではありません。 また手続きは専門的でもあり、取引の当事者間のさまざまな調整も必要です。 登記のプロである司法書士に任せれば、手続きをスムースに進行させることができます。

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2018年09月13日