第755回

中古物件は価格上昇中?新年度から義務化されるインスペクションとは

東京23区内で住宅を購入しようと考えています。予算の関係で中古も選択肢として検討していますが、修理が必要になるのでは、と心配です。 耐震性や構造などを客観的に判断してもらえる「インスペクション制度」があると知りましたが、どのような制度なのでしょうか?(会社員 Tさん 35歳)
インスペクション制度とは、専門家が住宅の構造上重要な部分を調査する、住宅診断ともいわれる制度です。 宅地建物取引業法の改正により、平成30年4月以降は中古住宅売買の際にはインスペクション業者のあっせんの可否の提示が義務づけられます。

最近の中古住宅価格の動向は?

国土交通省が平成29年11月に発表した「不動産市場動向マンスリーレポート」によりますと、首都圏の中古マンションの10月の成約件数は、前年同月比7.1%減の3,103件ということです。 成約件数としては減ってはいるものの、成約平均価格は前年同月比で2.3%上昇の3,209万円、58ヶ月連続で前年同月を上回っており、新築マンションの供給戸数が減ってきている中、中古住宅市場は安定的に推移していると言えます。

欧米では新築物件より中古物件の方が数多く流通していますが、日本では全住宅流通量に占める中古住宅の流通シェアは平成25年で約14.7%(出典:国土交通省HP「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」)とかなり低い水準です。 そのため、政府も既存住宅の流通を増やし、リフォーム市場の環境整備を進めていく方向に舵を切っています。

中古住宅の売買には必須?インスペクションとは

消費者が中古物件を購入する際には、物件の品質は大丈夫なのか、価格は適正なのかという点に着目すべきでしょう。 そこで政府は、平成28年2月に既存の建物の取引における情報提供の充実を促進するよう「宅地建物取引業法」の一部を改正することを決定しました。 平成30年4月からは、宅地建物取引業者に対し以下の事項を義務付けることになっています。

(1)媒介契約の締結時に建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の依頼者への交付
(2)買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明
(3)売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付

これにより、中古住宅を購入する際のインスペクション制度の利用が認知され、利用者には、建物の基礎部分や外壁などの品質をチェックした調査結果が書面で交付されることになりますので、安心して取引が行えます。

中古住宅で住宅ローン減税を利用する際の注意点

中古住宅でも新築住宅と同様、10年間に渡って年末の住宅ローン残高に対し1%の税額控除が受けられる「住宅ローン減税」を利用することができますが、家屋が建築された日からその取得の日までの期間が20年(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)以下という条件があります。

では、築20年を超える木造住宅では住宅ローン控除が受けられないかというと、そういうわけではありません。 「耐震基準適合証明書」を取得した建物や、「既存住宅売買瑕疵担保責任保険」が締結されている建物では、築年数の要件を超えていても住宅ローン減税を受けることが可能です。 インスペクションを行う際にはこのような耐震診断や保険加入についても対応できる業者を選ぶとよいでしょう。

診断によりリフォームが必要となれば、当初より費用が増える可能性もあります。 リフォーム費用も合わせて借り入れができる住宅ローンもありますので、自分に合ったローンを探してみましょう。

【参考リンク】

私が書きました

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福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2017年12月12日