第368回

将来の住宅ローン返済の見通しを立てて、住宅購入の検討材料にするには?

マイホームの取得を考えています。いま人気の住宅ローンの金利タイプは、金利の低い「変動金利型」や「固定金利期間選択型」だと聞きました。これらは、金利の変動にともなって返済額も変わるとのことですが、将来の金利上昇の可能性も踏まえてローン返済の見通しを立てるにはどうしたらいいでしょうか?(東京・HNさん 34歳 主婦)
金利変動リスクのある住宅ローンを選ぶのであれば、将来の金利上昇をあらかじめ具体的に想定し、現時点では家計にゆとりある返済プランを組んだほうがよいでしょう。そのために、金利上昇に伴ってアップする返済額をはっきりさせ、あらかじめ備えておきましょう

住宅ローンでは「変動金利型」を選択する人が約5割

独立行政法人住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の調査によると、2010年4月に民間住宅ローンを利用した人のうち、変動金利型を選択した割合は46.9%。5割弱を占めます。固定金利期間選択型も、固定金利期間の短いもの(10年未満)を選んだ割合が13.8%。金利変動の影響を受けやすいこれらのタイプの合計は全体の約6割に昇ります。

金利タイプ 選択割合
変動金利型 46.9% 60.7%
固定金利期間選択型(2年) 2.6%
(3年) 4.6%
(5年) 5.9%
(その他10年未満) 0.7%
(10年) 13.6% 13.6%
(10年超) 4.6% 4.6%
全期間固定金利型 21.5% 21.5%

(独立行政法人 住宅金融支援機構「民間住宅ローン利用者の実態調査」より)

背景には長引く景気の低迷によって低金利状態が続いていることが挙げられます。そのため、住宅ローンの金利タイプも、当面低金利が続くとの予測から、当初の適用金利が低い変動金利タイプや固定金利期間の短いタイプが好まれているようです。

金利変動リスクのある金利タイプを選ぶときは、リスクを具体化する

住宅ローンを借りる際、「全期間固定金利タイプ」を選べば、金利変動のリスクはありません。ローン実行時に全期間の適用金利が決まるため、途中で返済額がアップするかもしれないという不安を感じなくてすみます。その代わり、当初の適用金利は「変動金利型」や「固定金利期間選択型」にくらべ、かなり高い。
いっぽう、「変動金利型」や「固定金利期間選択型」には金利変動リスクがあります。
当初の適用金利が最も低い「変動金利型」は半年に一度金利が見直されます。
「固定金利期間選択型」は、選んだ固定期間が終了した後、再び固定期間等を選択することになりますが、その度に、その時点の金利情勢の影響を受け、返済額が変化します。

低金利が続いている現在は、住宅を購入するのなら「変動金利型」など適用金利の低いローンを選びたい、しかし、将来の金利がどうなるかわからないことから、住宅購入やローンの借り入れじたいに踏み切れない、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
そのような方は、将来のリスクを具体化して目に見えるようにすれば、住宅購入の検討が一歩前進するのではないでしょうか?
現在の適用金利が、+1.0%、あるいは、+2.0%くらいアップすることを想定して、毎月返済額がいくら増えるかをあらかじめ把握しておくのです。そして「増える金額を収入の範囲内でまかなえそうか?」、あるいは、「貯蓄を取り崩して対応できそうか?」などを考えておくのです。

いくつかの条件で返済額をシミュレーションし、対策を考えておく

具体的な条件で試行錯誤するには、シミュレーションサイトを活用するのが便利です。
イー・ローンの住宅ローンシミュレーション「返済額シミュレーション」を使ってみましょう。

■条件■
借入金額:3,000万円 変動金利タイプの適用金利:1.175%
返済期間:35年
返済方式:元利均等返済方式
ボーナス返済:なし

上記条件での毎月返済額は、87,154円です。

適用金利が1.0%上昇して2.175%になったときの毎月返済額の目安は、102,094円。返済額は、14,940円アップします。
同じく2.0%上昇して3.175%になったときの毎月返済額の目安は、118,405円。返済額は、31,251円アップします。
つまり、いま変動金利1.175%で住宅ローンを組んでも、月3万円程度の積み立て貯蓄ができるくらい家計に余裕を持たることができるのであれば、将来2.0%の金利アップに備えることができるということです。ですから、今回の条件であれば、

■3万円ずつ積み立てていき、将来の金利上昇リスクに備える
■3万円ずつ繰り上げ返済し、将来の金利が上昇しても対応できるよう元金を減らす

といった行動を借入当初から実行できるようであれば、十分購入の見込みがあるといえるのではないでしょうか。
ちなみに繰上げ返済についてですが、住信SBIネット銀行などのネット専業銀行では、住宅ローンの一部繰上げ返済が無料ですので、後者の行動を実行しようとする方は、金利だけでなく「繰上げ返済手数料の有無」についても注目してみましょう。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2010年05月21日