第1157回NEW
住宅ローンを50年借りても大丈夫?留意点を踏まえてメリットを活かそう!
- 結婚して子供もできたので、そろそろ住宅を購入しようと思っています。住宅ローンについて調べると、最近は、借入期間が最長50年の住宅ローンがあることを知りました。現在は20代とまだ若く年収も多くないので、月々の返済額を抑えるため、家を買う時は最長50年返済の住宅ローンを利用したいと考えていますが、大丈夫でしょうか。また、メリットやデメリットなども教えて下さい。(会社員男性27歳)
- 住宅価格の高騰や実質賃金の減少などを背景に、近年、借入期間が最長50年の超長期住宅ローンの取り扱いを始める金融機関が増えてきました。借入期間を長くすれば月々の返済負担を抑えることができ、家計運営は楽になります。一方で、支払利息の総額は増えるため、トータルでの経済的負担は重くなります。留意事項をしっかりと理解し、納得した上でメリットを活かしましょう。
借入期間35年超50年以内の住宅ローンの利用者は全体の4分の1
独立行政法人住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月調査)」によると、借入期間が「35年超50年以内」の人の割合は25.5%と、全体の約4分の1を占めています。3年前の2022年4月調査では9.3%でしたので、増加傾向にあることがわかります。
住宅ローンの借入期間は、最長35年が今も一般的ですが、近年は、35年を超える超長期の住宅ローンを提供する金融機関が増え、利用者も増えています。その背景には、都市部を中心に住宅価格が高騰していることや、生活費をはじめとした物価の上昇に、賃金の上昇が追いつかない(実質賃金の減少)状態が続いていることなどがあります。住宅を取り巻く環境が変化する中で、生活にゆとりを持ちつつ、子育て・教育費と住宅ローンの返済をうまく両立したいという20代・30代のニーズが高まっているようです。
借入期間を延ばすことができれば、月々の返済額を低く抑えて家計負担を軽くすることができます。
下表の例の場合、借入金額は同じ5,000万円でも、借入期間が「35年」と「50年」では、「50年」のほうが毎月返済額を約35,000円軽減できます。ただし、支払利息額の増加分で返済総額は約323万円増えます。
| 借入期間 | 35年 | 50年 | 差額 (50年-35年) |
|---|---|---|---|
| 毎月返済額 | 135,960円 | 100,545円 | ▲35,415円 |
| 返済総額 | 5,710万円 | 6,033万円 | +323万円 |
※借入条件
借入金額:5,000万円
変動金利:0.775%(借入期間中の金利変動がないと仮定)
元利均等返済/毎月返済のみ(ボーナス返済なし)
「借入期間35年超50年以下」の超長期住宅ローンの特徴やメリット・デメリットは?
借入期間35年超50年以下の超長期住宅ローンの主な特徴は、金融機関によって異なるものの、以下のような点が挙げられます。
- 完済年齢は「借入期間35年以下の住宅ローン」と同様に、80歳未満としている場合が多い。
- 中古物件の購入や、借り換えには対応していない場合がある。
- 上乗せ金利が設定され、「借入期間35年以下の住宅ローン」よりも適用金利が高くなる場合が多い。
- 団体信用生命保険の保険期間は完済までであるため、保障期間が長い。
住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している住宅ローン【フラット50】も、借入期間は35年超50年以下です。これは、全期間固定金利タイプであり、対象となる住宅が長期優良住宅、予備認定マンション、管理計画認定マンションに限定されているなどの特徴があります。適用金利は、【フラット35】(借入期間21年以上35年以下)より高く設定されています。
借入期間35年超50年以下の超長期住宅ローンのメリット・デメリットを整理すると、次のようになります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・月々の返済負担を減らすことができる。 ・返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)を抑えられるため、借入可能額を増やすことができる。 ・団体信用生命保険による弁済の確率が高まる(返済が高齢期に渡るため、返済中の死亡や特定疾病罹患の可能性が高まる)。 |
・返済総額が増える(支払利息額が増えるため)。 ・元金がなかなか減らない。 ・年収が大きく減る定年後も返済が長く続く。 |
留意事項をしっかりと理解し、納得した上でメリットを活かす!
借入期間最長50年の住宅ローンの最大のメリットは、毎月の返済額を軽減できることです。そのため、返済中の家計運営にゆとりが生まれ、住宅ローンの返済と、子供の教育費などの他のライフイベント資金とのバランスをとりやすくなります。価格が高騰する中で住宅を取得するには、借入期間を長期化しないと、返済中の家計の運営に支障をきたしかねない事情もあるでしょう。
ただ、一方で返済総額は増えます。支払利息の総額が数百万円増える場合もあります。変動金利タイプで借りて、返済中に金利が上昇した場合、残りの返済期間が長いほど、負担は大きくなります。
また、返済が長期に及ぶため、老後まで住宅ローンが残る可能性が高まります。定年退職後の収入減で生活が苦しくなるリスクもあります。
そのため、超長期の住宅ローンを利用するときには、完済時の年齢を確認し、定年後の返済をどうするかを含めた資金計画を立てることが大切です。
そして、利用後は、繰上返済を積極的に行って、返済期間を短縮するようにしましょう。将来の収入増やボーナス、定年時の退職金を活用して早めに返せば、超長期の住宅ローンのデメリットを抑えることができます。
住宅の購入には大きな資金が必要なだけに、購入前も購入後も、家族の将来設計や老後の生活費、修繕や建て替え費用なども含めて総合的に考えることが重要です。
【参考リンク】
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2025年11月13日
- 前の記事へ
- 次の記事へ
