第96回

多目的ローンで叶った古民家リノベーション。伝統と最新設備を融合させました。

岡山県にお住まいの86bdhiさんは、多目的ローンを使って、古民家を購入しリノベーションしました。昔ながらの様式をできるだけ残しながら、水回りなどは最新の設備を導入して住みやすさも確保。自然を身近に感じながら、ゆったりとした生活を楽しんでいます。

オーナーさんデータ
岡山県 86bdhiさんご一家(仮名)
家族構成:
86bdhiさん(59歳・元会社役員 現在農家)、妻(59歳・教員)、猫3匹
購入時の世帯年収:
3,000万円
購入した住宅:
古民家(地元工務店でリノベーション)
延床面積と間取り:
土地2,346m2、建築面積146m2、延床面積:180m2。6LDK(リノベーション前は10DK)
購入価格 :
土地+家屋650万円、リノベーション3,000万円
利用ローン:
備前日生信用金庫「信金個人ローン」
金利タイプ:
固定金利型
金利:
1.58%(平成29年9月実行)
ローン借入金額 :
1,000万円
借入期間:
10年
毎月の返済額:
約9万円

現役時は浅草のマンションで暮らしていた86bdhiさん。便利ではあるものの、無機質な東京の暮らしに息苦しさを感じ、退職後は自然が豊かな場所に移住したいと考えていました。
86bdhi
移住を考えるのと同時に、現在では姿を消しつつある古民家にも憧れを抱いていました。というのも、古民家には素晴らしい建築技術が使われ、伝統や文化が息づいていると思うからです。
かつては当たり前のものとして存在していた日本の民家は、周囲の環境と調和し、何世代にもわたり暮らすことができる住まいです。清涼感のある畳の間、空間効率のいい引き戸、周囲の景観に融合した外観など、たくさんの魅力があります。大切な知恵や技術が詰まっている古民家に住み、伝統を継承したいと考えていました。
そこで、退職する数年前から古民家サイトを検索し、価格や、地域による特色などを調べていました。
日本各地で探していましたが、岡山県の妻の実家に帰省した際、古民家サイトで気になっていた物件を見にいくことに。数件回り、そのなかの1件がとても気に入りました。
重厚な造りの母屋は、伝統的な瀬戸内の民家の佇まいをそのまま残しています。石垣と外壁と蔵、虫籠窓(格子が等間隔に並ぶ窓のこと。虫籠のように見えるためこう呼ばれている)が作る、とても美しい外観が印象的でした。
リノベーションにかかる費用を工務店に試算していただき、購入に至りました。

印象的だった虫籠窓

リノベーションの際に気をつけたのは、できるだけ古民家の本来の姿を残すことでした。
86bdhi
何年も空き家だったため、庭は草だらけ。水は井戸、トイレは汲み取り式のうえ、一部雨漏りもしていました。

リフォーム前の外観。趣はあるが、かなり手入れが必要な状態

リフォーム前の玄関

リフォーム前の母屋の2階。荒壁で未内装

リノベーションする際は、できるだけ本来の趣のある姿や、石場建てを残すことを希望しました。
石場建てとは、石の上に柱を載せた伝統構法。現代の建物はコンクリートの基礎があり、土台とつながっていますが、石場建ては建物と礎石とは縁が切れています。基礎と緊結されていないため、地震があった場合、家屋自体が揺れに対応できます。これは、最先端の制振、免震構造と同じつくりとなり、とても丈夫です。
現在の法律に従うと、石場建ての保存は困難です。大幅な増築や改修をすると建築確認申請が必要となり、数学的な構造解析ができないため在来工法を採用しなければなりません。
しかしこの場合、家屋をジャッキアップで持ち上げ、コンクリート基礎を新たに作る必要があります。大幅な工事となりますが、コスト高、耐震性の劣化、開口部の減少、間仕切りの変更が困難になるなどデメリットばかりです。担当していただいた工務店も石場建ての良さをよく理解されていて、残すことになりました。
リノベーション前に床下の点検をした際にわかったのですが、土台部分に亀裂が入り、西側の床が2cmほど下がっていました。壁で家を支える現在の建築方法では、こうしたゆがみが生じると大問題です。この家は、家屋の重みを複数の大きな梁と桁で支える伝統工法で建てられているため、そのままでも強度への影響は軽微だったようです。
新しくする建具なども、古民家の雰囲気を壊さないように、アクセントになる建具や照明器具、釘隠しはできるだけ古材を使おうとインターネットで探しました。
間取り、造作の収納は図面を自分で書いて工務店さんに反映してもらいました。
玄関ホール、東の離れ、階段室などの床は、保温、歩行感がいい着色加工の杉の無垢板で新しく張り直しています。

リフォーム後の玄関。奥に見える格子戸は勝手口

昔ながらの雰囲気を残し、すっきりとした和室

季節の掛け軸を楽しむ床の間。
付け書院の上部にある鳳凰の欄干も美しい

母屋の2階。時を重ねた小屋組には重厚感がある。
壁は漆喰で仕上げ、天井はボードの上に漆喰調のクロス仕上げを施した。
リビングルームと寝室として使用

母屋の他に東側に離れがあるのですが、こちらは梁や柱だけを残し、全部解体してから再構築し、キッチンとリビング、洗面室、浴室にしました。水回り、床暖房など、最新の設備を導入したおかげで、生活するうえで不便を感じません。

東側にある離れのキッチン。
背面には納戸がありキッチン・カウンターと食器棚、冷蔵庫を収容している

母屋と離れをつなぐ通路には家事室を作った。
造作カウンターでは、アイロンやミシンを使っている

家事室の反対側は洗面室。水回りは最新のものを取り入れている

新居では自然の流れに身を任せ、ゆったりとした生活を楽しんでいます。
86bdhi
この家に住み始めてから、夜明けとともに目覚め、日が暮れれば就寝するというふうに、自然と呼吸を合わせて暮らしています。長年人の手が入らず、たくさんの植物が自生していた庭も手入れをし、今では四季折々の美しい花を楽しめるようになりました。天気のいい日は縁側で食事をしたり、庭を眺めながら昼寝をしたりと、のんびりとくつろいでいます。

自生していたソテツを中心に、新たに苔を貼った庭

ローン借入額は約1,000万円。備前日生信用金庫「信金個人ローン」を選びました。
86bdhi
多額の納税があり、ちょうど手持ち資金がなかったので、つなぎ融資を受けました。
メインバンクである都市銀行では「別荘」という扱いになり、住宅ローンはもちろんのこと、多目的ローンも融通してもらえませんでした。工務店の紹介で、備前日生信用金庫で多目的ローンを組みました。
最後に、86bdhiさんのように、古民家に住みたいと考えている人へのメッセージを伺いました。
86bdhi
中国地方には古民家がたくさん残っています。古くからある家は、昔の人の知恵が詰まっていて、日本の気候にもなじむ、素晴らしいものだと思います。都会の生活に不満や疑問がある方は地方の古民家を利用することもおすすめします。
ライターからのコメント。

代々受け継がれてきた民家の美しさが随所に残ったご自宅ですね。母屋は昔ながらの様式を残し、離れに最新の設備を導入したことで、住みやすさも維持できているのが素晴らしいです。
古民家を購入する際、居住条件等により住宅ローンを利用できない場合がありますので、本格的に移住するのか、セカンドハウスとするのか、ライフプランをしっかり立ててから動くといいでしょう。

※今回ご協力いただいた86bdhiさんのブログ「虫籠窓の古民家」のURLは https://86bdhi.blog.fc2.com/

文/齋田多恵、企画/カデナクリエイト、編集/イー・ローン