第191回

注目の特定疾病保障付き住宅ローンとは?

ガンになったら返済不要の住宅ローンがあると聞いたのですが、どのようなものなのですか?(40歳、男性)
最近、取扱いが増えている「三大疾病保障付き」や「ガン保障特約付き」など疾病保障付きの住宅ローンは、ガンや急性心筋梗塞、脳卒中と診断されたら住宅ローン残高がゼロになり、その後のローン返済は不要という新しいタイプの住宅ローンです。

疾病保障付き住宅ローンとは?

疾病保障付き住宅ローンは、2005年10月に三井住友銀行が発売して以来、現在では、三菱東京UFJ銀行や中央三井信託銀行、住友信託銀行等の銀行で取り扱っています。
住宅ローンの保険といえば、これまでは団体信用生命保険(以下、団信)をまず思い浮かべますが、団信の場合、保険金が下りて住宅ローン返済が完済されるのは、原則死亡時のみ。それをガンなどに対しても保障しようというのが、疾病保障付き住宅ローンです。

疾病保障付き住宅ローンの特徴は?

疾病保障付き住宅ローンの主な特徴は、ガンと診断された時点、もしくは急性心筋梗塞、脳卒中を発病し、所定の状態になったと診断された時点で、保険会社から金融機関にローン残高債務相当分が支払われるというもの。 基本は、「ガンのみ保障タイプ」と「三大疾病のいずれも保障タイプ」ですが、三井住友銀行では、この3つに加え高血圧症・糖尿病などの5つの重度慢性疾患、三菱東京UFJ銀行では、4つの生活習慣病も対象にしています(女性特有の疾病特約も付帯可)
また、中央三井信託銀行では、三大疾病およびその他の病気やケガで入院した場合の入院保障付きの三大疾病保障付き住宅ローンも取り扱うなど、銀行によって商品はさまざま。 保険料は、金利に上乗せするタイプが多いようですが、三菱東京UFJ銀行の場合、保険料はローン返済額とは別に月払いとなり、年齢が上がるほど金額がアップするしくみになっています。

利用するならこんな点に要注意!

疾病保障付き住宅ローンの最大のポイントといえば、一般の医療保険やガン保険ではまなかえない住宅ローン全額の返済をしてくれる点。イザというときに住宅ローンの心配をせずに治療に専念でき、病気が治った後の住宅ローンの心配もありません。
ただし、次のような点には注意が必要です。

  • 借入時年齢が満45歳(もしくは50歳)以下という年齢制限がある。
  • 「待期期間」があり、ローン実行日(責任開始日)より3ヵ月の間の発病等の場合は、対象外。
  • 待期期間を過ぎても、保険金が支払われるための一定の要件(例えば、脳卒中は初診から60日以上たっても言語障害などの後遺症が継続していることなど)がある。
  • ガンにかかったことのある人は利用できない。
  • 初期ガンでもO.K.だが、上皮内ガンは対象外。等々。

このほかにも、保険料負担の問題もあります。銀行で加入する団信は強制加入で、保険料は金利に含まれ、別途支払う必要はありません。一方、疾病保障付き住宅ローンは任意加入で、保険料は別途必要となります。 例えば、借入額1,000万円、借入期間35年(元利金等返済・ボーナス併用なし)借入利率2.0%に三大疾病保障付きタイプで0.3%上乗せとなった場合、毎月の住宅ローンは34,686円。同じ条件の通常の住宅ローンよりも月額1,560円アップし、トータルで約66万円増えることになります。

このように、疾病保障付き住宅ローンを選ぶ場合、金利や保険料アップすることや、保険金が支払われる場合・支払われない場合を考慮し、さらに、現在加入中の生命保険や医療保険・ガン保険等と比較して、選択することが大切です。

私が書きました

黒田 尚子 (くろだ なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、第2種情報処理技術者、初級システムアドミニストレータ。

92年大学卒業後、日本総合研究所に入社。約5年3ヶ月間、システム開発に携る。退社後、98年ファイナンシャル・プランナーとして独立。 まったくの異業種からの転職のため、できるだけ幅広いテーマを手掛けるようにしている。雑誌・インターネットなどの連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。モットーは「夢をカタチに」。現在、夫1人&猫1匹と暮らす。

※執筆日:2006年11月06日