第929回

起業資金に民間のビジネスローンは利用できる?

会社の早期退職に応じ、以前から温めていたビジネスをスタートさせたいと考えています。退職金だけでは足りない事業資金をどう調達すべきでしょう?ビジネスローンの利用も検討しています(Kさん 会社員、45歳)
変化はチャンスの時ですね。まずは公的支援をあたり、利用できるものがないか探してみるといいでしょう。ビジネスローンを利用する場合は、2年目、3年目以降になります。

まずは公的融資・補助金をあたる

通常、起業資金は自己資金と借り入れがベースになります。まずは、事業実績がなくても利用できて、比較的低利で借りられる日本政策金融公庫に相談することになります。日本政策金融公庫でも、返済能力(自己資金の有無、信用情報、税金の滞納がないかなど)や事業計画がしっかりできているかなどは重要で、内容によっては審査が通らないケースもあります。Kさんも事業計画をしっかり立てる必要がありそうですね。

また、起業時に自治体の制度融資が利用できる場合もあります。制度融資とは、自治体が推薦する形で信用保証協会の保証を付けて、金融機関が創業間もない中小企業や個人事業主への融資を行うものです。自治体によっては保証料や金利の一部を負担してくれるところもあり、その場合は、比較的低金利で借りられます。ただし、融資実行まで時間がかかるため、起業のタイミングに合わないと利用できません。

さらに、経済産業省や厚生労働省をはじめ、さまざまな補助金・助成金の募集が出ています。地域や業種、対象年齢が限定されているものなどもあるので、Kさんのビジネスで利用できるものがないか探してみるといいでしょう。ただし、補助金・助成金は通常、いったん支払った後で、「1/3」「1/2」など一定割合での清算払いになります。起業時点の資金には間に合わない点は注意しましょう。審査もあり、期待しすぎないことも大事です。

起業資金に使うなら不動産担保ローン

民間のローンで、起業資金に活用できるものとしては、不動産を担保にして融資を受ける不動産担保ローンが挙げられます。戸建て、マンション、土地等が対象で、金融機関によっては本人名義のほか、配偶者や親族名義の物件でも担保にできるところもあります。担保があるため、無担保ローンに比べて低利で利用でき、返済期間も長期で設定できます。

ただし、不動産の評価や審査があるため、融資実行までは2週間から1カ月程度かかります。ビジネスローンのカテゴリーの中にもこの不動産担保ローンが含まれ、例えばイー・ローンでは「事業性資金用の不動産担保ローン」と位置付けられて紹介される商品もあります。

無担保ビジネスローンを利用する場合はココに注意

もう1つ、無担保で利用できるノンバンク系のビジネスローンもあります。法人や自営業、個人事業主の事業資金などに利用できるローンです。審査期間が短く、つまりは融資実行が早いため、急な資金調達には便利ですが、無担保のため、金利は高めです。来店不要で即日審査のローンもあり、短期間で少額の資金繰りに困った時などは利用しやすいローンです。

ただし、注意すべき点があります。無担保ビジネスローンでは、事業実績が求められることが多いため、起業してすぐは利用できない場合が少なくありません。原則として1期分または2期分の決算書類を求められることが多いのです。どうしても起業前後で資金が必要な場合は、担保になる不動産があれば、不動産担保ローンを利用する選択肢はあります。

起業を焦るあまり、高金利のローンが増えてしまうことがないよう、しっかり事業計画を立てて臨んでくださいね!

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私が書きました

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豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2021年06月15日