第896回

授業料以外にかかる大学の費用。これからの教育ローンの使い方

コロナ禍によって収入が減ってしまいました。大学に進学した子どもへの仕送りが難しく、教育ローンを借りることを検討しています。どんな点に注意したらいいでしょうか。(静岡県・Mさん)
教育ローンには国のローンと民間のローンがあります。金利や借入金額など、借り入れの条件が異なります。将来の返済が可能かどうかも考えて、借り過ぎには注意が必要です。また、ローンを借りる前に利用できる公的な制度もチェックしてください。

自宅外の場合、入学費用、授業料のほか、年間平均約100万円の仕送り

今春、晴れて大学に進学したのに、コロナ禍によって親の収入が減り、休学や退学せざるを得なかった学生が少なくない、と話題になりました。特に自宅外通学の場合、アルバイトもできず生活費に困窮、いったん親元に帰ろうにも外出自粛によって帰省もできないなど、社会人以上に困難な状況が続いていました。

ようやく、後期授業が再開され、大学によって対応は異なりますが、オンライン授業と対面授業を併用する形が多いようです。対面授業となれば、一時的に親元に戻っていた学生は、あらためて下宿やアパートの契約をしなければなりません。親にとっては、二重の出費となるケースもでてきます。

入学金や学費は、貯蓄や学資保険などで準備していたとしても、在学中の生活費は、毎月仕送りをする家庭も多いと思います。日本政策金融公庫の『教育費負担の実態調査結果』(令和2年発表、令和元年調査)によると、自宅外通学の子どもへの仕送り額は、年間平均で102万3000円(月額約8万5000円)となっています。

毎月これだけの仕送りをしなければならないのに、収入減に見舞われ、今後冬のボーナスの削減なども見込まれるとなれば、教育ローンを検討するケースも今後増えてくるでしょう。これから教育ローンを利用する場合、何に注意すればいいのでしょうか。

教育ローンは、教育関連であれば使い道自由。返済可能かどうかで考える

大きく分けて、教育ローンの取り扱いがあるのは、民間金融機関と日本政策金融公庫の2つです。民間金融機関は、銀行をはじめ、信用金庫、信販会社(クレジットカード会社)、JAバンクなど多くの金融機関で取り扱っており、金利や借入金額、返済方法、返済期間など、借入条件が異なります。金利は変動金利タイプが多く、適用金利は審査結果や申込者の取引状況によって変わります。借入金額は1000万円までとするところも多く、選択の幅があります。

一方、日本政策金融公庫は、民間金融機関の取り組みを補完する政府系金融機関です。民間金融機関と比べて、世帯年収に上限があり、借入限度額が450万円(自宅外通学などの場合、それ以外は350万円)まで、固定金利で1.7%(2020年10月現在)など、やや条件が厳しくなります。

いずれの教育ローンも、教育関連であれば使い道が自由で、入学金、授業料、教科書代のほか、パソコン購入費、アパートの敷金・礼金、家賃などの支払いに充てることができます。

教育ローンを利用する場合、もっとも大事なのは、返済が十分可能か、ということに尽きます。ましてや、今後の収入の見込みが不透明な中、借り過ぎは禁物です。返済シミュレーションなどを使い、リスクの少ない借り方を検討するようにしましょう。

たとえば、150万円を金利2%で10年返済とした場合、毎月の返済額は約1万3800円です。これを毎月返済していくことができるかどうか、いくらまでなら無理がないかを十分確認することです。仮に、子どもの在学中は、元金返済を据置、利息のみ支払う方法であれば、同じ条件で毎月返済額は利息の2500円のみで済みます。ただし、卒業した5年後からは、毎月返済額が約2万2100円となり、8300円ほど多く返済していくことになります。在学中の負担を減らしたいなら、こうした方法も検討してみるといいでしょう。

教育ローンを借りる前に、公的な制度の内容もチェックする

大学進学時は、収入に問題なく学費の心配はなかったものの、その後、ご相談者のように収入減となった場合、もう一つ、確認しておくべきなのは、国や自治体で行っている修学支援制度です。

2020年4月から国による高等教育の修学支援制度が新たにはじまっています。これは、大学の授業料、入学金の免除・減額のほか、原則、返還する必要のない給付型奨学金があります。支援の対象は住民税非課税世帯のほか、これに準ずる世帯で年収約380万円までであれば、支援額の3分の1までは支給されることとなっています。

支援対象となる年収基準は家族構成などによって異なりますが、収入が激減したなどの世帯は、こうした国の制度が受けられるかどうか、再度確認してみてください。進学後であっても、条件を満たせば、支援を受けることができます。

また、地方自治体でも独自に、県外大学への進学者に向けて給付型奨学金制度を設けているところも多くあります。

公的な制度をチェックし、それでも不足する、支援を受けられない場合に、教育ローンを借りるという選択をするようにしましょう。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2020年10月20日