第860回

残価設定型ローンと銀行マイカーローン。車購入なら、どっちがお得?

車の購入を検討中です。初めて購入するので、どういうローンを使えばいいのか、わかりません。 毎月の支払い額はできるだけ安くしたいと思っています。車に詳しい友人は「残価設定型ローン」がおすすめ、と言うのですが、銀行のマイカーローンと何が違うのでしょうか?(愛知県 Sさん)
残価設定型ローンは、毎月の支払い額が抑えられるメリットがありますが、3年、5年後に、当初据え置かれた残価を一括で支払うなど、条件があります。 低金利の銀行のマイカーローンもありますから、メリット・デメリットを理解したうえで、自分の返済可能な金額で比較検討を十分にしましょう。

主なマイカーローンは3種類。金融機関で借りるか、ディーラー通しで借りるか

自動車を購入する際、現金一括で支払えるならそれに越したことはありません。しかし、新車購入となると100万円単位のお金が必要になります。 そこで、一般的には、ローンを組んで数年かけて支払っていくことになります。

車のローンは、大きく分けて3つの種類があります。

多くの銀行や信用金庫などの金融機関が扱っている「マイカーローン」、 ディーラーの関連会社や提携先の信販会社を利用する「ディーラーローン」、 そして、ディーラーが最近、力を入れているのが「残価設定型ローン」。 それぞれメリット・デメリットがあります。

それぞれのメリット・デメリットは?金利は?条件は?

銀行のマイカーローンは新車購入だけではなく中古車購入や、購入時にかかる費用にも使え、他のマイカーローンからの借り換えにも利用できます。 金利は1%~4%程度と他のローンと比較して、低利であること、返済期間10年など長期で借りられることもメリットと言えます。 ただし、審査には時間がかかり、最近はネットで申し込めば最短1日で結果がわかる金融機関も増えてきましたが、多くは3~5日程度かかります。 また、年収基準などの審査が、他のローンに比べて厳しいという側面もありますが、裏を返すと、審査が通れば低金利でお得なローンである、ということにもなります。

ディーラーローンは、新車、中古車、車種によって金利が異なり、販売店によっても異なるケースがあります。 金利優遇のキャンペーンが実施されることもありますが、通常、金利は3%~10%と銀行のマイカーローンと比べて高く、分割払い手数料がかかるのが一般的です。 ディーラーの関連、もしくは提携先の信販会社なので、審査は早く、手続きもディーラー通しになるため、手間がかかりません。

残価設定型ローンは、ディーラーローンと同じように、ディーラーを通じて借りることになりますが、仕組みが異なります。 残価設定型ローンは、あらかじめディーラーが設定した残価(据え置き額、下取り価格)を差し引き、残りの金額を毎月支払っていくため、支払い額を抑えることができます。 残価は車種や返済期間によって異なり、おおむね新車価格の3割~5割とされています。

返済期間は3年、5年とするところがほとんどで、最終支払い時の残価の清算は、 [1] 車を返却する(所有権はディーラーにあるため)、 [2] 残価を下取り分として、新車に乗り換える、 [3] 残価を一括で支払って買い取る、 [4] 残価分を再クレジットで分割支払いにする、の4つの選択肢から選ぶことになります。

ディーラーローンも残価設定型ローンも、支払いが終了するまで所有権はディーラーにあるため、車をカスタマイズすることはできません。 また、残価設定型ローンの場合、月間走行距離1000km以下などの条件のほか、事故・修理があった場合、査定額と残価との差額を自己負担する必要があります。 逆に、市場の中古車相場によらず、残価が決まっているため、次に乗り換えを考えている場合などは、利用しやすい仕組みと言えます。

金利や毎月の支払い額だけではなく、乗り方も考えてローンを決める

どのローンを利用するにしても、できるだけ低金利のローンを利用したいものですが、 一番大事なのは、総合的にみて、家計に負担のかからない返済額であるのか、 何年乗り続ける予定なのか、乗り換えの際には中古車も想定しているのかなど、 金利以上に考えておくべきことは多いです。

一般的な銀行のマイカーローンと、残価設定型ローンとで、支払いがどうなるかシミュレーションしたのが、下表です。 ともに条件は、借入額200万円、頭金なし、5年(60回)払い、ボーナス返済なしの場合です。

借入金額:200万円、返済回数60回(元利均等返済、ボーナス返済なし)
銀行のマイカーローン 残価設定型ローン
金利 1.50% 実質年利 2.99%
返済期間 5年(60回) 返済期間 5年(60回)
毎月返済額 3万5000円 毎月返済額 2万6112円
最終回1回前の返済額 2万6102円
最終回支払い(残価) 63万6000円
利息 8万円 分割払い手数料 20万2710円
総支払額 208万円 総支払額 220万2710円
(※金融機関によって事務手数料がかかるケースもある)

※マイカーローン(自動車ローン)のシミュレーションは、「イー・ローン」の返済シミュレーションを使用

※残価設定クレジットローンは「マツダクレジット」のクレジットシミュレーションを使用

金利は銀行のマイカーローンのほうが低いのですが、毎月の返済額は残価分を差し引く分、残価設定型ローンのほうが1万円程度安くすみます。 ただし、最終支払い時に残価の63万円強を一括で支払うか、それを元に次の新車に乗り換えるかなど、最後に決断をしなければなりません。 また、銀行のマイカーローンの利息は8万円ですが、残価設定型ローンのほうは、分割払い手数料として20万円以上かかります。

結果的に、総支払い額は銀行のマイカーローンのほうが、12万円以上、お得、ということになります。 毎月の返済額を抑えたいなら、銀行のマイカーローンであれば、10年返済も可能なので、大事に乗り続けていく、という考え方もあるでしょう。

さらに、銀行のマイカーローンは、購入当初から、所有権は購入者にあるので、返済途中での売却もでき、返済終了後は、ローンなしで乗り続けることも可能です。 残価設定型ローンは、返済が終了するまで所有権はディーラーにあるため、残価分の再クレジットを組んで乗り続けるにしろ、新車に乗り換えるにしろ、ローンの支払いは続くことになります。 また、最終回の支払いを車両の返却で代えることもできますが、使用状態が悪いと、負担金が発生する可能性があります。

このように車のローンを組む時には、メリット・デメリットをよく理解し、いろいろな条件でシミュレーションをして、無理のなく返済していけるかを十分に検討するようにしたいものです。

【参考リンク】

私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2020年02月12日