第693回

二世帯住宅を建てる時は住宅ローンの借り方と登記方法に注意!

20代後半の息子一家が私たち夫婦と一緒に住んでもいいと言ってくれました。我が家は古くて狭いので、取り壊して二世帯住宅を建てることにしました。住宅ローンを利用する予定ですが、借り方で注意することはありますか?(M・Fさん 55歳 会社員)
二世帯住宅を建てる時は、住宅ローンの借り方だけでなく、登記の仕方による税制の違いや将来の相続でもめないように他の相続人との合意を得ておくなど、考えるべきポイントはたくさんあります。借り方と登記方法による税制の違いを確認しておきましょう。

親子で借りる住宅ローンには2種類ある

二世帯住宅を建てる時に親子で使える住宅ローンは、親子リレー返済と親子ペアローンの2種類があります。 ともに、親子の収入を合算することで、どちらか一方だけで借りるより融資額を増やる場合が多いです。しかし、返済方法などは異なります。

親子リレー返済は当初は親が返済し、親が高齢になって返済ができなくなった、あるいは子の収入が増えて返済を行えるようになったら、子が返済を引き継ぎます。 親子で返済というバトンをリレーする方法です。この場合、住宅ローンの契約は1つで、子が連帯債務者となるのが一般的です。

親子ペアローンは親子がそれぞれで住宅ローンを借りて、それぞれで返済する方法です。 住宅ローンの契約は2つで、お互いに担保提供者・連帯保証人となります。

住宅ローンを借りる際、金融機関は不動産に抵当権を設定のため登記が必要になります。 質問者はご自身の土地に建物を建てるとのことですから、土地は質問者の名義で登記されているはずです。 ですから、建物の名義をどうするかが問題です。

住宅ローンの借り方によって登記方法が限られることがある

親子で住宅ローンを借りる時の登記方法は、共有登記か区分登記かのいずれかにするのがセオリーです。 前者は二世帯住宅を1つの建物として親子共有名義で登記すること、後者は親世帯と子世帯を別の住まいとしてそれぞれの名義で登記することです。 区分登記をするには、建物に2つの玄関があり、完全に建物が分かれていること、または家の中で行き来はできても鍵付き防火壁で仕切られているなどの条件があります。

親子リレー返済は、基本的にどちらの登記方法でも借りられますが、親子ペアローンは区分登記を条件とする金融機関があります。 どちらの登記方法が条件になっているか、住宅ローンを選ぶときに金融機関に確認しましょう。

どちらの登記方法を選んでも、出したお金(借りるお金)の割合で名義を分けることがポイントです。 例えば、子が半分も出していないのに、親子で半分ずつの名義にすると、贈与税がかかるかもしれないからです。

税制面では、どちらの登記方法でも、住宅ローン控除は親子それぞれで受けられます。 また、不動産取得税や固定資産税、都市計画税は親子で連帯納付の義務が生じます。不動産取得税と固定資産税には軽減措置がありますが、適用されるかどうかは、登記の方法と住宅の広さなどで変わってくるので複雑です。 そして、登記方法で相続時に特例が受けられるかどうかも変わります。 前述のとおり二世帯住宅は、建て方、登記方法、住宅ローンの借り方、相続対策など、非常に複雑で専門的なので、詳しくは税理士やファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談しましょう。

【参考リンク】

私が書きました

小川 千尋 (おがわ ちひろ)

ファイナンシャル・プランナー。

1994年ファイナンシャル・プランナー資格取得。資格取得後、以前から携わっていた出版物の編集・執筆の経験を活かし、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー誌や一般誌、新聞、ウエブサイトなどのマネー記事の編集・執筆・監修などの執筆関連業務および個人のライフプランなどの相談業務、セミナー講師として活動。

※執筆日:2016年09月26日