第261回

住宅ローンの繰上げ返済にはどんなメリットがあるの?

住宅ローンの「繰上げ返済」を検討しています。2つの方法があるようですが、その違いは何ですか? また、どんなときに、どちらを選んだらよいのでしょうか? (東京都 Nさん)
住宅ローンの繰上げ返済には、「返済期間を短縮する方法」と「返済額を減額する方法」があります。どちらを選んだ方が良いのかは、今後の家計の状況やライフイベントによって異なりますので、シミュレーションをし、比較した上で選択するようにしましょう。

「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の違い

繰上げ返済とは、月々の返済やボーナス時の返済とは別に、借入残高の一部または全部を返済することです。元金が減ることで、支払う利息が少なくなります。特に借り入れ当初は利息の割合が多いため、繰上げ返済は早ければ早いほど、その効果は高くなります。
繰上げ返済には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。「返済期間短縮型」は、返済期間が短くなるため、早く完済することができます。また、「返済額軽減型」は、返済期間は変わらないものの、返済額を減らすことができるため、家計の負担を軽くすることができます。

方法

返済期間短縮型 返済額軽減型

どんなしくみ?

返済額は変えずに、
返済期間を短くする方法

返済期間は変えずに、
返済額を減らす方法

どんな人に向いている?

早く完済したい人 ローンの負担が重い人

利息の軽減効果が高いのは「返済期間短縮型」

どちらの方法で繰上げ返済を行っても借入残高が減るため、支払う利息は少なくなりますが、返済額を変えずに返済期間を短くする 「返済期間短縮型」のほうが、より利息の軽減効果が高くなります。


<例>借入金額:3,000万円、返済期間:30年、金利:3%
借り入れてから1年後に100万円を繰上げ返済した場合

◆返済期間短縮型の場合
・軽減された利息 : 約130万円
・短縮された期間 : 1年6ヶ月

◆返済額軽減型の場合
・軽減された利息  : 約50万円
・軽減された返済額 : 約4,300円/月

繰上げ返済をするときのポイントや注意点

最初にお話しましたように、借り入れ当初は利息の割合が多いため、繰上げ返済は早ければ早いほど、その効果は高くなります。 また、金利が高いローンや残高が多いローンから繰上げ返済したほうが、効果が高くなりますので、複数のローンがある場合には、優先順位をつけて返済しましょう。 その際には、金融機関のサイトなどで繰上げ返済のシミュレーションを行い、より効果の高いローンを確認することが大切です。

<繰上げ返済の優先順位>
1.金利が高いローン
2.残高が多いローン
3.返済期間(残存期間)が長いローン

また、繰上げ返済には手数料がかかる点に注意が必要です。少額から繰上げ返済ができる金融機関もありますが、 せっかく利息が軽減できても、手数料が高いとその効果がうすれてしまいますので、どれくらい手数料がかかるのか確認しましょう。 ただし、「ソニー銀行」「新生銀行」「住信SBIネット銀行」など、 繰上げ返済の手数料が無料となっている金融機関もあります。 ほとんどが1円から1円単位で繰上げ返済できるため、残業代が多めに入ったなど、お金に余裕が出たときに利用するとよいでしょう。

最近ではネットで簡単に繰上げ返済の手続きができ、利息の軽減効果も高いため、繰上げ返済をする人が増えています。 ただし、繰上げ返済をしすぎて、これから必要になるライフイベント費用に影響がないか確認することも大切です。

私が書きました

中森 順子 (なかもり じゅんこ)

ファイナンシャル・プランナー。

プログラマー・SEを経験後、結婚を機に税理士事務所へ転職。企業の税務・社会保障・融資のサポートなど幅広く経験。個人のお金に関する相談が増えたことから、FP資格を取得。10年勤務後、個人の家計サポートに集中すべく、2003年に独立。住宅購入や資産運用、保険見直しなど、自分自身の経験も交え、執筆・セミナー・相談と幅広く活動中。家計診断は500件以上の実績あり。

※執筆日:2008年04月17日