第1136回NEW

2025年度も支援継続!長期優良住宅化リフォームとは?

5年前に中古で購入した戸建住宅のリフォームを考えているのですが、最近は物価が上昇していることもあり、補助金などの支援が受けられる制度がないかとネットで探していると「長期優良住宅化リフォーム推進事業」があるのを知りました。ただ、内容を読んでもよくわかりません。教えてもらえませんか。 (自営業 男性 47歳)
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、既存住宅の質の向上、子育てしやすい環境の整備、防災性・レジリエンス性(逆境や困難を乗り越える力)の向上等を目的にリフォームを実施する場合に、国が費用の一部を支援する助成制度で、昨年度に引き続き2025年度も実施されています。補助額や限度額は、工事の内容等によって細かく定められています。専門的な事項が多いだけに、リフォームを検討する段階で、業者と、スケジュールや工事内容、受け取れる補助金の額などを確認するようにしましょう。
住宅の屋根や外壁を修繕しているイラスト

長期優良住宅化リフォーム推進事業で助成対象になる工事の具体例

2025年度も、昨年度に引き続き長期優良住宅化リフォーム推進事業が実施されています。

以下に挙げた工事によるリフォームを検討されている方は、補助金を受け取ることができるかもしれません。

性能項目等 工事の具体例
住宅の性能向上工事 特定性能工事 劣化対策 ・床下の防腐・防蟻処理
・外壁通気構造化工事
・ユニットバスへの交換
・床下防湿シートの設置
・床下点検口の設置  など
耐震性 ・耐力壁の増設
・軸組筋違いの設置
・屋根の軽量化  など
省エネルギー対策 ・断熱材の設置
・ガラス交換
・内窓設置  など
維持管理・更新の容易性 ・排水管の更新工事  など
高齢者等対策(共同住宅のみ) ・共用廊下の幅員の確保 など
可変性(共同住宅のみ) ・天井の高さ確保 など
その他の性能向上工事 その他性能向上工事 ・高断熱浴槽の設置
・節水型トイレの設置  など
インスペクションで指摘
を受けた箇所の改修工事
・外壁・屋根の塗装
・外壁・屋根の張替え工事
・雨樋の交換  など
バリアフリー改修工事 ・手すりの設置
・床段差の解消工事
・ホームエレベータの設置
・屋外スロープの設置
・玄関から道路までの手すりの設置 など
テレワーク環境整備改修工事 ・造作デスクの設置
・間仕切りの設置  など
三世代同居対応改修工事
(キッチン、浴室、トイレ、玄関のうちいずれか2つ以上がそれぞれ複数箇所ある住宅、かつ、住宅内で行き来ができること)
・調理室の増設
・浴室の増設
・トイレの増設  など
子育て世帯向け改修工事 ・キッズスペースの設置
・対面式キッチンへの移設・交換
・防犯カメラの設置  など
防災性・レジリエンス性の向上改修工事 ・雨戸・シャッター等の設置
・止水板の設置  など

長期優良住宅化リフォーム推進事業は、工事後に所定の性能基準に適合する必要がある!

補助金を受けるためには、次の主な4つの要件をすべて満たす必要があります。

要件1 ・1階の床面積(階段部分を除く)が40m2以上、かつ、延べ面積が55m2以上。リフォーム前後ともに、延べ面積の過半が住宅であること
要件2 補助対象の住宅に実施するリフォーム工事が以下のいずれかであること
・住宅の性能基準に適合させるための工事
・三世代同居対応改修工事
・子育て世帯向け改修工事
・防災性・レジリエンス性向上改修工事
要件3 ・リフォーム工事実施後の住宅が、所定の住宅性能に関する評価基準に適合するものであること
要件4 ・リフォーム工事着手前にインスペクション(現況調査)を実施すること
・維持保全計画とリフォーム工事の履歴を作成すること

補助限度額は最大で160万円ですが、三世代同居対応改修工事を実施する場合や、若者(発注者が2025年4月1日時点で40歳未満世帯)・子育て世帯(18歳未満の子がいる世帯)が改修工事を実施する場合、中古住宅を購入し改修工事をする場合は、限度額が50万円加算されます。

なお、実際の補助額は、工事内容によって細かく設定されています。

補助金の交付申請、受け取りはリフォーム業者等が行う

補助金の交付申請等は、事前に事業者登録をして、国土交通省のホームページに公表されたリフォーム業者等のみが行えます。また、補助金の交付を受けるのも業者です。リフォーム発注者は、工事代金を業者に全額支払って別途補助金相当額を業者から受け取るか、補助金相当額を差し引いた工事代金を業者に支払うかのどちらかになります。

したがって、リフォームを発注する前に、登録をしている業者であるかどうか、予定しているリフォーム工事が助成の対象になるか、助成の対象になる場合は補助金をいくら受け取れるかなどの確認をしっかりする必要があります。なお、設定されている交付申請期間を過ぎると補助金の交付を受けることができません。さらに、予算の執行状況によってはスケジュールが変更になる場合があるため、工事の時期などにも注意を払う必要があります。

補助金の有無とその金額は、リフォーム予算や資金の準備に大きな影響を与える場合があります。リフォームを検討する場合は、事前にリフォーム業者と工事内容、工事の時期、工事費用、補助金の額などについて入念に検討し、見積もりを行うようにしましょう。必要なリフォームを実施するために、自己資金で対応できそうにない場合は、リフォームローンの活用なども検討したほうがいいかもしれません。

【参考リンク】

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2025年06月16日