第728回

「銀行カードローン」の審査基準が銀行ごとに変わる!

銀行のカードローンの借り入れ条件が変わるという新聞記事を、最近頻繁に見かけるようになりましたが、ときどき利用しているため少し心配しています。 今後具体的にどのように変化していくのでしょうか。 (40代 男性 会社員)
近年、銀行による個人への過剰融資が多重債務問題につながりかねないという懸念が広がり、金融庁の意向を踏まえて2017年3月に業界団体の全国銀行協会が自主規制をすることを申し合わせました。 その後、独自にカードローンの審査基準の一部を見直して公表する銀行が出てきています。 これからは、カードローンの商品性を銀行ごとによく確認して利用する必要がありそうです。

2017年3月の全国銀行協会の申し合わせとその後の銀行の対応

2017年3月に一般社団法人全国銀行協会が加盟各行と申し合わせた内容は、以下の通りです。

1. 配慮に欠けた広告・宣伝の抑制
「改正貸金業法の総量規制対象外」、「高額な借り入れでも年収証明書が不要」など、借り入れをあおるような宣伝文句などの自粛。 過剰な借り入れを防ぐ注意喚起。
2. 審査態勢等の整備
・年収証明書等によって顧客の収入や返済能力を正確に把握する
・信用情報機関の情報を活用して、他社の融資も勘案して返済能力等を把握する
・個人の年収に対する融資率などを意識した審査をする
・貸付後も定期的に顧客の信用状況の変動を把握する

その後も、銀行のカードローンの行き過ぎた融資拡大と、それを問題視する内容の報道が新聞などで続きました。 これらを受け、各行はカードローンの融資条件の変更を公表しはじめました。

三井住友銀行は2017年4月から収入証明書の提出条件を「借入限度額300万円超」から「借入限度額50万円超」に引き下げました。 横浜銀行も2017年5月29日以降の審査結果連絡分より、収入証明書の提出条件を「借入限度額300万円超」から「借入限度額50万円超」に引き下げています。

今後は他の銀行からも収入証明書の提出条件の引き下げが公表される可能性があります。 収入証明書の提出条件が引き下げられると、限度額を超えるお金を借りようとする場合、源泉徴収票や給与明細、確定申告書などの提出が求められるため、手続きがひと手間増え、これまでのように手軽にお金を借りることが難しくなります。

なお、貸金業法では(消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者からお金を借りる場合)、自社の貸付残高が50万円を超える場合、あるいは他の貸金業者を含めた総貸付額が100万円を超える貸付けを行う場合には、収入証明書の提出が必要となっています。

その他の融資条件の変更については、現時点でははっきりとしていません。 「申し合わせ」の項目のうち、「信用情報機関の情報を活用して、他社の融資も勘案して返済能力等を把握する」、「個人の年収に対する融資率などを意識した審査をする」、「貸付後も定期的に顧客の信用状況の変動を把握する」は、個々の銀行がどのように行うかは、公表されない可能性もあります。 そのため、個別の銀行に確認をする必要があったり、借り入れの申し込みをして審査結果を待つ必要があるかもしれません。

なお、銀行の自主規制に委ねるとはいえ、その結果、多重債務問題が解決に向かわなければ、金融庁による新たな指導や法律による厳しい規制が行われる可能性があります。

カードローンで借りるのは、短期間で返済できる少額のお金に限定する

カードローンはうまく活用すればとても便利です。 借りるのに適したお金は、短期間で返済できるメドがあるのに現在たまたま手元にない必要なお金です。 短期間で返済できるとは、1ヶ月後の給料や数ヶ月後のボーナスですべて完済できるような場合です。つまり急場しのぎのお金です。 したがって、一般的には100万円を超えるような金額は適当ではありません。50万円でも多過ぎるくらいです。

カードローンは無担保なだけに金利が高く負担も重くなります。そのため、高額の借り入れをしないことがポイントです。

「少額」を「短期間」で無理なく借りるのであれば、たとえ審査が厳しくなっても問題なく借りることができるはずです。 心配する必要はまったくありません。

【参考リンク】

私が書きました

中村 宏 の写真

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2017年05月30日