第878回

資金繰りの選択肢にビジネスローンを検討!

小さいながら会社を経営しています。 休業はしていませんが、コロナ禍で収入が激減し、事業資金がショートしそうです。 さまざまな給付金を申請していますが、入金されるまで時間がかかりそうです。 取引銀行にも資金繰りの相談をする予定ですが、当面の事業資金をすぐに確保できる方法はないでしょうか? (神奈川県 Mさん)
公的な給付金や助成金、補助金制度は、数多く用意されていますが、Mさんが心配されるように、手続きが煩雑で、申請から入金までかなり時間がかかっています。 緊急性が高い場合は、当面の事業資金として、ビジネスローンを検討してみてはいかがでしょう。

公的な給付金や補助金の申請は、確実に行うことが大事

コロナ禍によって収入が減少した中小企業、個人事業主が申請できる公的な制度は数多く用意されています。

比較的申請しやすい「持続化給付金」は、前年度同月比で収入が50%減の月があれば申請対象となり、中小企業では最大で200万円、個人事業主で100万円が給付されます。 ただ申請時に不備があると審査に時間がかり、入金までに時間を要するケースも出てきています。

このほか法人であれば、雇用調整助成金、小規模事業持続化補助金、IT導入補助金などもありますが、やはり手続きが複雑なこともあり、補助金等を確保するにはあまりにも時間がかかりすぎ、資金ショートの不安を抱える経営者もいるかもしれません。

国の制度以外にも、各自治体独自に休業要請に協力した事業所に対して休業協力金などを給付するところもありますが、事業継続できるだけの給付金額ではありません。

とはいえ、こうした公的な制度については、対象事業者であれば確実に申請しておくことが大事です。 同時に金融機関へ資金繰りの相談をしていきましょう。

無利子・無担保融資が次善の策だが、申し込みが殺到

資金繰りに苦しむ中小企業が利用できる金融機関の融資は、主に以下の3つです。

(1)取引先の金融機関からの直接融資

(2)日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

(3)信用保証協会の支援制度「セーフティネット保証4号」「同5号」

日頃から取引先の金融機関と付き合いがあれば、まずはその担当者へ相談してみましょう。 政府からの通達で、コロナ禍での緊急対応の要請を各金融機関に対して行っており、大抵は専用の窓口を設置しています。 ただし、すでに借入枠(与信枠)の上限近くまで達している場合や、申請に必要な資料の準備が不足している場合では時間がかかることが予想されます。 他にも同じように困っている会社は多く、相談も多いと考えられます。 また各金融機関では専用の融資商品を組成しておりますが、借入期間や金利等に違いがありますので、よく確認してみましょう。

日本政策金融金庫の特別貸し付けは、無利子・無担保で融資額規模も大きいのが特徴です。 事業規模によって、国民生活事業と中小企業事業という制度融資に分かれています。 また農林水産事業者の方は、農林水産事業という同業者の長期資金を扱う制度融資があります。 借入期間も長期資金に対応しており、先の見通しがなかなか難しい状況であれば非常に助かります。 ただ申し込みが殺到しているようで、こちらも時間がかかることを念頭に置く必要がありそうです。

セーフティネット保証は、従前からある制度で、災害時に適用され、今回のコロナ禍においては、3月初めから取り扱いが開始され、対応は早かったと言えます。 また銀行の一般貸付とは別枠のため、銀行の借り入れが上限に達しているケースでも使える制度です。 信用保証協会が保証を行いますが、事前に自治体から認定書を取得する必要があります。 認定書を取得してからの申し込みとなる為、実質窓口をもう一つ経由することになります。 セーフティネット保証は銀行等の金融機関も対応に慣れている為、金融機関にアドバイスを受けるのがいいかもしれません。

こうした金融機関の融資等も選択肢となりますが、やはり相談や申請に時間がかかっているようです。

来店不要で短期間での融資が可能なビジネスローンも検討を

公的な制度融資や金融機関の特別貸し付けなど、使える制度は使い、事業継続に向けて手間、時間を惜しまずに取り組んでほしいところですが、さまざまな支払いは待ったなし、というのが現実です。

緊急かつ、当面の事業資金を確保するには、ビジネスローンの利用を視野に入れてもいいでしょう。 ビジネスローンは、個人事業者向けと法人向けがあり、いずれも保証人・担保なしで借りられるものがほとんどです。 また来店不要でネットから申し込みができるなど、予約で待たされることもありません。

ビジネスローンは専業としている会社をはじめ、銀行やカード会社などが取り扱いをしています。 審査の方法や返済方法、金利、融資限度額などの貸付の条件は異なります。

ひとくちにビジネスローンと言っても、どこで借りるかは慎重に選ぶ必要があります。 返済可能かどうかはもちろんですが、支払い予定のある一時的な資金であれば、審査回答期間が短いローンを選ぶ必要があるでしょう。 また長期的に事業の改善を目指すのであれば、できるだけ低利のローンを選ぶことも大切です。

いずれにしても、公的な給付金や助成金が入金されるまで、緊急制度融資が下りるまでなど、ビジネスローンを借りる目的は明確にしておくべきでしょう。 また通常の一般融資と同様に必要書類の準備や借りた後の事業計画はしっかり策定しておきましょう。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2020年06月16日