第835回

消費税引き上げによる中小企業の納税額への影響は?

中小企業を営んでいますが、2019年10月からの消費税率の引き上げに伴って納税額が増えるため、資金繰りに不安を感じています。注意すべきことがあれば教えて下さい。(50歳 経営者)
消費税率が8%から10%に引き上げられると、納税額は1.25倍に増加します。 消費税の滞納は経営に大きな影響を与えかねないため、これまで以上に資金繰りに注意を払う必要があります。 月次や日次の資金繰り表により、資金の移動を正確に把握して、資金不足が予想される場合は、早めに借り入れなどの検討をして、納税資金を確保する必要があります。
中村 宏
中村 宏

消費税額が増えるだけでなく、1年間の納税回数が増える場合も!!

2019年10月から消費税率が2%引き上げられ10%になります。このことにより、売上高や経費が変わらなければ、消費税の納税額は、1.25倍にアップします。

たとえば、売上高が年間5,000万円(税抜)、消費税のかかる経費が年間2,000万円(税抜)だとすると、税率が8%のときの納税額は(5,000万円-2,000万円)×8%=240万円ですが、税率が10%になると(5,000万円-2,000万円)×10%=300万円となり、納税額は1.25倍になります。

納税額が増えると、「中間申告制度」によって、例年よりも早い時期に消費税を前払いする必要が生じる場合があります。「中間申告制度」とは、法人では前事業年度の消費税の年税額が48万円(地方消費税は含まない)を超えた場合に、年1回の確定申告とは別に、中間申告を行って消費税を前払いする仕組みです。

中間申告は、直前の課税期間の確定消費税額に応じて、次のように決められています。

直前の課税期間の確定消費税額 48万円以下 48万円超から 400万円以下 400万円超から 4,800万円以下 4,800万円超
中間申告の回数 中間申告不要 年1回 年3回 年11回
中間納付税額 直前の課税期間の確定消費税額の1/2 直前の課税期間の確定消費税額の1/4 直前の課税期間の確定消費税額の1/12
1年の申告回数 確定申告1回 確定申告1回
中間申告1回
確定申告1回
中間申告3回
確定申告1回
中間申告11回

※「確定消費税」とは、中間申告対象期間の末日までに確定した消費税の年税額(地方消費税は含まない)。
※中間申告不要の場合でも、任意で中間申告をすることが可能。

たとえば、消費税率が8%のときは、直前の課税期間の確定消費税額が48万円以下だったため年1回の確定申告・納付でよかった会社が、売上や経費が変わらないのに税率が10%にアップしたために確定消費税額が48万円超になると、1年のうちに中間申告1回、確定申告1回の合計2回の申告・納付が必要になります。そのため、消費税率8%時とは納税する時期と金額が異なることになり、これまでとは違う資金繰りをする必要が生じます。

消費税の滞納をすると、金融機関からの借り入れが困難になることも!?

消費税を滞納してしまうと、経営に大きな影響を及ぼしてしまう場合があります。たとえば、滞納税が発生してさらに資金繰りが悪くなったり、納税証明書が出ないために金融機関からの借り入れが難しくなったり、取引先などからの社会的な信用を失ったりするかもしれません。

そのような事態に陥らないようにするためには、まずは、月次や日次の資金繰り表を作って、資金の動きを正しく把握し、今後の入出金の計画を立て、必要に応じてそれを更新することを繰り返し、常に資金の流れを意識した経営を行う必要があります。

資金繰り対策は、経営者だけでなく全員で行う!

資金繰り対策は、経営者だけでできることではありません。日々の仕事の中に資金繰り対策の要素を組み入れる必要があります。

たとえば、大きな金額の入出金の予定を社内で共有する習慣があれば、資金計画が早く立てられます。また、日々の仕事の中で、請求や債権回収を確実、着実に行えていれば、請求漏れや債権の未回収で困ることもありません。販売計画が精緻であれば、在庫を抱え過ぎて資金繰りを圧迫することもありません。

運転資金や納税資金が一時的に不足する事態に備えて、金融機関と信頼関係を築いておけば、借り入れをするときの手続きも円滑に進めることができます。

【参考リンク】

担当:中村 宏 (執筆:2019年08月08日)