第808回

個人事業主の法人化(法人成り)で資本金や役員報酬はいくらにすべき?

現在、個人事業主として会社を経営しています。 今後の事業拡大などを見据えて法人成りを検討していますが、資本金や役員報酬の額をいくらにしたらいいのか悩んでいます。 金額を決める上での注意点などを教えてください。(Sさん 38歳 会社員)
法人成りをする際には、事前に決めておくことがたくさんあります。 資本金や役員報酬の額によっては税負担が変わるだけでなく、金融機関からの借り入れに影響することもありますので、十分に検討しましょう。
宮野 真弓
宮野 真弓

資本金を決めるときの注意点

法律上は資本金1円で会社を設立することが可能です。しかし、あまり現実的とは言えません。

資本金は、開業時点での元手や運転資金となるものです。 個人事業主からの法人成りの場合は、すでにある資産を法人に引き継ぐことができるのでそれほど多額の元手や運転資金は必要ありませんが、会社の設立費用やある程度の運転資金は必要です。

また、資本金の額は会社の信用力にも大きく関わります。 特に設立間もない会社が新しい取引を開始する際などは、資本金の額が低すぎて取引を断られるケースも考えられます。 金融機関との取引においても、資本金の額は重要な判断材料になります。 資本金の額があまりにも少ない場合には、取引口座を開設できない場合がある他、融資が受けられない、あるいは融資を受けられても額が少ないということにもなりかねません。

それでは、資本金の額は多いほどいいのかというと、そうでもありません。 会社設立後2年間は消費税の課税が免除されますが、資本金が1,000万円以上の場合は初年度から課税されます。 また、法人住民税の均等割りも資本金が1,000万円を超えると負担が増えます。

これらのことを考慮し、事業計画や資金計画をしっかりと立てた上で資本金の額を決定しましょう。

役員報酬を決めるときの注意点

役員報酬は会社設立後3か月以内に決める必要があり、毎月定額で支払わなければなりません。 そして一度決めた役員報酬は1年に1回、事業年度開始から3か月以内にしか変更することができません。 事業年度の途中で役員報酬を増額した場合、増額した部分は法人税の計算上、経費(損金)として認められなくなってしまうため、役員報酬の額は慎重に決める必要があります。

役員報酬をあまり高く設定してしまうと、所得税や住民税、社会保険料の負担が大きくなります。 さらに、報酬を支払うだけの資金が会社になければ、資金繰りが悪化することも考えられます。 一方、役員報酬を低く設定した場合は会社に資金を残しておくことができますが、法人税等の負担が大きくなります。

借り入れを検討している場合の注意点

資本金や役員報酬の額について特に陥りやすい失敗例として、世間体を気にするあまり資本金を入れすぎたり、個人としての節税を意識して役員報酬を低くしすぎたりしたことにより、生活費が不足してしまうことがあります。 個人事業主の場合は「事業主貸」として事業用の資金を生活費に充てることができますが、法人成りをした後はそういうわけにはいきません。「役員貸付金」として会社からお金を借りることはできますが、利息を付けて返済しなければなりません。 また、役員貸付金があると、事業用資金を私的に利用している可能性があると判断され、金融機関からの信用を落としてしまい、銀行融資のみならず、ノンバンクを中心に提供している無担保のビジネスローンでも借り入れが難しくなってしまう恐れもあります。

借り入れの予定がある場合はもちろん、すぐに借り入れの予定がない場合でも、資本金や役員報酬の額については今後の事業戦略やプライベートでの生活費を考慮して検討しましょう。

【参考リンク】

担当:宮野 真弓 (執筆:2018年12月26日)

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