第687回

いつの間にか公私混同!?自営業はお金の管理に注意!

個人事業を始めて半年ほどたちました。仕事と生活費の入出金を一緒にしていたら、お金の流れがわからなくなってしまいました。どう管理すればいいでしょうか?(M・Sさん 34歳)
ご本人または家族だけの小規模な事業主の人の中には、仕事と生活費をまとめて管理しているケースが見受けられます。売上のお金を生活費に充てたり、生活費の予備費に貯めておいたお金を仕事の経費の支払いに充てたり…で、いつの間にか、お金は公私混同状態に陥りがちです。この状態は経営上、家計管理上、どちらにとっても健全とは言えません。やはり、分別管理をすべきです。その方法をアドバイスします。

お金の公私混同はやめよう!

個人事業主本人は、所得税法上、給料という概念がないため、給料(生活費)を経費にすることはできません。給料を経費として認めてしまうと、給料を増やすことで所得税がかからないようにできてしまうからです。 ですから、個人事業主の人は仕事の入出金と生活費がごちゃごちゃになり、公私混同が起こりやすいのです。

しかし、公私混同していると、仕事も家計もお金の流れが見えにくくなり、税金の申告作業も大変ですし、何らかの事情で経費と家計費を見直す際の作業も大変です。 やはり、仕事と生活費は分別管理しておくに越したことはありません。

分別管理はこうする!

では、分別管理はどうすればいいのでしょうか? 次のような流れで行います。

金融機関の口座を分ける

金融機関の口座を仕事用と生活費用に分けます。仕事用は、さらに売上のみを振込・入金する口座と、経費の引き落とし・支払いをする口座の2つにしてもかまいません。こうすると、売上と経費が通帳上で一目瞭然になり、記帳するときに楽です。 仕事で得られたお金は仕事用口座に集中しますから、ここから仕事の経費用口座と生活費用口座にお金を移動させます。

生活費口座に生活費を移動する

毎月1回、日にちを決めて、一定額を生活費として資金移動します。家計費のやりくりは、この一定額の中で行います。 経費用口座も作る場合は、1か月にかかる経費の見積額より少し多めの金額を移動しておきます。

配偶者に給料を支払う

配偶者がいて、一緒に仕事をしていたり、手伝ってくれていたら、毎月一定額を給料として、仕事用口座から配偶者の口座に振り込みます。 これは、経費にできます(税務上の条件あり)。配偶者に給料を払う場合は、生活費の一部を負担してもらいましょう。

仕事の入出金は仕事用口座で行う

売上金は仕事用口座に振り込んでもらいます。現金で受け取った場合、そっくり入金します。毎日現金売上がある職種の人は、数日分まとめてでもいいので、入金します。 仕事の経費は経費用口座から振り込みます。現金仕入れも経費用口座から引き出して、生活費とは別の財布で管理します。

記帳する

仕事の入出金・家計費ともに、こまめに記帳し1か月に1回は収支を集計しておきます。

このような形で分別管理をしますが、一時的に仕事のお金が足りなくなることもあるでしょう。そんなときは、生活費の余りで貯めた貯蓄あれば、そこから一時的な借り入れを検討しましょう。 入金があったら、すぐに生活費に戻して、仕事のお金と生活費には一線を画しておきましょう。

貯蓄がなければ、銀行のカードローンやノンバンクのビジネスローンなどで一時的なつなぎ資金を手当てする方法もあります。

【参考リンク】

私が書きました

小川 千尋 (おがわ ちひろ)

ファイナンシャル・プランナー。

1994年ファイナンシャル・プランナー資格取得。資格取得後、以前から携わっていた出版物の編集・執筆の経験を活かし、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、マネー誌や一般誌、新聞、ウエブサイトなどのマネー記事の編集・執筆・監修などの執筆関連業務および個人のライフプランなどの相談業務、セミナー講師として活動。

※執筆日:2016年08月15日