第372回
住宅ローン「借り換え」と「繰上げ返済」はどれだけおトク?
- 夏のボーナス活用法で、投資よりも住宅ローンの見直しを勧められました。具体的にはどうすればいいのでしょうか?また、どれだけ得するものなのでしょうか?(M.Eさん 35歳 会社員 男性)
- 住宅ローンの見直し方法には「繰上返済」と「借り換え」があります。うまく利用することによって、将来の負担を大きく減らすことができます。不確実な投資よりも、確実な節約効果に注目してみてはいかがでしょうか。
「繰上返済」と「借り換え」の違い
「繰上返済」とは、通常のローン返済以外に臨時の返済を行い、借入元金を減らすことです。つまり「借入金の一部を早めに返す」ということ。そうすればその元金部分の利息を払わずに済み、総返済額を減らすことができます。具体的には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類がありますが、ここでは利息軽減効果の高い「期間短縮型の繰上返済」で話をすすめていきましょう。
一方「借り換え」とは、新たに別の金融機関でローンを組み、それを原資に元のローンを一括返済すること。一般的には高い金利のローンから低い金利のローンに乗り換えることを指します。保証料や登記費用などの諸費用がかかりますが、ローンの適用金利が低くなるので、それ以上の節約効果が期待できます。
それぞれのメリット・デメリットは、以下をご覧下さい。
繰上返済 | 借り換え | |
---|---|---|
メリット | 手間と費用がそれほどかからない 返済中いつでも誰でもできる |
手持ち資金をそれほど減らさずに総返済額を抑えられる |
デメリット | 手持ち資金が減る | 手間と費用がかかる できない場合もある |
*筆者作成
どちらがどれだけおトク?
誰でも手軽にできるのは「繰上返済」による節約です。しかし、手数料の有無、まとまった金額(100万円など)でなければ受付できないなど、それぞれ金融機関によってルールがありますので、まずは利用中の金融機関へ確認しましょう。
「借り換え」は、借入当初より年収が下がった場合や他のローン(車や教育ローンなど)が増えた場合など、審査が通らないケースもあります。また、繰上返済に比べて手間も時間もかかり、諸費用も高いので、それ以上の節約効果があるのか必ずチェックしましょう。
しかしどれだけ得するのかは、適用される金利やローンの残高、手数料などの条件により変わってきます。そこでイー・ローンの住宅ローンシミュレーションを用いて、以下の条件の人が5年目に住宅ローンの見直しをしたと仮定して概算値を出してみました。
前提条件
・借入額:3,000万円
・借入期間:35年
・金利タイプ:全期間固定
・金利:年3.00%
・返済方法:元利均等返済(ボーナス返済なし)
繰上返済しなかった場合 | 繰上返済した場合 | 節約効果 | |
---|---|---|---|
残り返済期間 | 30年 | 28年4ヶ月 | ▲20ヶ月 |
総返済額 | 4,849万円 | 4,714万円 | ▲135万円 |
*筆者作成
100万円の手持ち資金が無くなりますが、将来の利息135万円を減らすことができました。繰上返済手数料が3万円かかったとしても32万円(135万円-100万円-3万円=32万円)得することになります。
もっとも、インターネット繰上げ返済に力を入れている新生銀行などであれば繰上返済手数料が無料で、1回あたり1円から返済できるので、日頃の生活で節約したお金をちょこちょこ返済していくのもいいと思います。
【借り換え】5年目に借り換えをした場合
・5年目のローン残高:2,740万円
・借り換えするローンの金利タイプ:全期間固定
・借り換えするローン金利:年2.70%
借り換えしなかった場合 | 借り換えした場合 | 節約効果 | |
---|---|---|---|
毎月の返済額 | 115,519円 | 111,133円 | ▲4,386円 |
残り総返済額 | 4,158万円 | 4,000万円 | ▲158万円 |
*筆者作成
金利が年0.30%(3.00%-2.70%)しか低くなりませんでしたが、それでも158万円の節約をすることができました。諸費用が80万円かかったとしても、78万円(158万円-80万円=78万円)ほど得をします。保証料無料のローンを選べばさらに費用が抑えられ、節約効果がアップするでしょう。
なお、東京スター銀行では、6月21日から全期間金利0%の住宅ローンを限定で発売しているそうです。気になる人はチェックしてみましょう。
スターゼロ住宅ローンの借入条件
・2010年9月6日(月)~9月30日(木)に融資を受けることができる方
・2010年7月30日(金)までに来店申込をすることができる方(※先着500名まで)
確実にお金を生かせる方法
数字を見ると、上記の前提では「借り換え」の方が有利です。けれど今回注目していただきたいのは、どちらが優れているのかではなく、その節約効果です。どちらの場合も確実に将来の負担を減らすことができました。気持ちの上でも楽になりますよね。
住宅ローン返済関連の見直しは、ちょっと手間のかかることですが、大きな効果を得ることができますので、現在住宅ローン返済中の方は、この2つの見直し方法でシミュレーションをして、返済について検討してみてください。お金を増やすことも大切ですが、「借入金を減らす」ということも忘れないでくださいね。