第1014回

準備が難しい介護リフォーム。将来のリフォームに備えて、把握しておきたいこと

マイホームを購入して15年。傷みや不具合も多少出てきましたが、リフォームは老後の体の状態に合わせたバリアフリー化などと同時に行いたいと思っています。将来のリフォームに備えて、知っておくべきこと、考えておくべきことがありましたら教えてください。(山口県 Tさん)
ご自宅のバリアフリー化は、要介護者の症状や家族の状況に合わせて行いたいもの。しかし、すべてのリフォームを高齢期に先延ばしするのもハイリスクです。傷みや不具合等の修繕は、先に実行しておいた方がよいでしょう。

バリアフリー化は、症状や家族の状況に合わせて

「体が不自由になる前に、マイホームもバリアフリー化を」と考える方は多いと思います。しかし、体が不自由になったときに備えようと思っても、いつ・どこが・どのように不自由になるかはわかりません。事前に高額なバリアフリー工事をしても、ニーズに合わなければ再工事が必要になってしまう可能性もありますものね。仮に足が不自由になった場合でも、杖があればよいのか、階段とスロープのどちらが上りやすいのか、車いすを使うのか、どのような手すりが持ちやすいのか、病状・症状によって適した「バリアフリー化」は異なります。工事不要の置く手すりや突っ張り棒タイプの手すり等の福祉用具であれば、その都度ニーズに適した「バリアフリー化」ができる場合もあります。

したがって、基本的にバリアフリー化は、体が不自由になったり介護が必要になったりしたときに、その病状・症状に合わせて行った方が無駄はないでしょう。要介護状態になって公的介護保険の対象となれば、リフォーム工事費用や手すり等の福祉用品レンタルのための給付を受けられる場合もあります。

高齢期の大規模リフォーム工事は、負担大

しかし、「リフォーム工事は、バリアフリー化が必要になってから」とすべてを先送りにするのは避けたいところです。リフォーム工事は、リフォーム会社を探したり、計画を立てたり、資金繰りを考えたりする必要があります。さらに、工事期間中の家具の移動や仮住まいが必要になる場合や、工事事業者の家の出入りへの気遣いなど、なかなか大変なものです。それを介護が必要になってきた時期に一気に行うとなると、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかってしまいます。

また、リフォームローンを利用しなければならない場合、年齢条件(「借り入れ時の年齢は65歳以下」「完済年齢は75歳以下」という条件のローン商品もあります)を満たせず借り入れができない可能性もあります。仮に借り入れができたとしても、年金生活中のローン返済は大きな負担になりかねません。

したがって、補修・交換、耐震化等の修繕に関するリフォームは、先に実行しておいた方がよいでしょう。その際、段差の解消やスペースの確保等、「だれでも使いやすい観点」からのリフォームも進めておけるとよいですね。その後、体を動かすのが不自由になってきたら、病状や症状に合わせたバリアフリー化を進めてみてはいかがでしょうか。

リフォーム工事をするなら、介護保険や税制優遇などもチェック

リフォーム工事には、条件を満たせば助成金や税制優遇が受けられる場合があります。また、バリアフリー化には、公的介護保険からの給付が受けられる場合があります。リフォームを検討する際は、事前に助成や優遇措置などが受けられる条件・手続き等を確認しておきましょう。

公的介護保険からの給付

公的介護保険には、家庭での介護生活支援のため、住宅改修や福祉用具の利用(レンタル・購入費用の一部支給)のサービスがあります。ここでは、「住宅改修」についての概略をご紹介しましょう。

住宅改修

要介護認定で要支援1・2、要介護1~5のいずれかに認定された在宅介護利用者には「住宅改修にかかった費用の一部が、介護保険制度の「住宅改修費」として支給されます。

支給限度基準額は要介護度に関わらず20万円。住宅改修に要した費用の7~9割(各自の負担割合による)が支給されます。限度額を超えた部分は自己負担になります。

改修の種類
(1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸等への扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他(1)~(5)の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

税制優遇

リフォームに係る税制優遇制度には、所得税が控除される「リフォーム促進税制」「住宅ローン減税」、「固定資産税の減額の制度」などがあります(2023年2月現在)。ここではバリアフリー化に関する制度をご紹介しますが、耐震、省エネ等を目的とするリフォームにも優遇制度がありますので、それぞれの条件などは国土交通省・国税庁のホームページや工務店等でご確認ください。

バリアフリー改修に関する所得税の特別控除
制度の適用期間 適用期間:2023年12月31日まで
制度の概要・
控除額
ローン利用の有無に関わらず利用可能。
一定の個人が、自己の居住の用に供する家屋にバリアフリー改修工事を含む増改築等工事を行った場合について下記(ア)及び(イ)の合計額が所得税から控除される
(ア)一定のバリアフリー改修工事に係る標準的な工事費用相当額(上限:200万円まで)の10%
(イ)以下(1)、(2)の合計額((ア)と合計で1,000万円まで)の5%
(1)(ア)の工事に係る標準的な工事費用相当額のうち200万円を超える額
(2)(ア)以外の一定の増改築等の費用に要した額((ア)と同額を限度)
控除期間 1年
住宅ローン減税(増改築等) ※令和4年度改正
制度の適用期間 適用期間:2025年12月31日まで
制度の概要・控除額 償還期間10年以上のローンを利用した場合に利用可能
1年間の控除額=(改修工事費用相当分の年末ローン残高-補助金等)×0.7%(最高14万円)
控除期間 10年
固定資産税の減額
制度の適用期間 適用期間:2024年3月31日まで
制度の概要・控除額 新築後10年以上を経過した住宅に対して一定のバリアフリー改修工事を行った場合、翌年度分の固定資産税から3分の1が減額される(床面積100m2相当分までが限度)
控除期間 1年

リフォームローンの利用条件は、早めに確認を

リフォームの資金準備についても考えておく必要があります。自己資金だけでは不足する場合は、ローンの利用も視野に入れ、サービス内容や利用条件をチェックしておきましょう。利用者の年齢や収入の要件に制限が設けられている場合もあるので、早めに確認しておくことが大切です。

なお、リフォームローンには、無担保型と有担保型があります。

無担保型は抵当権設定が不要なので、そのための費用がかからず、審査期間も短めです。しかし有担保型に比べると借入可能額は低く、金利は高い傾向にあります。一方、有担保型は、抵当権設定費用がかかりますが、担保があるので金利は低い傾向にあり、借入可能額は大きくなります。大規模なリフォームで費用がかさむ場合などは、有担保型を検討されるとよいでしょう。

ピカピカだったマイホームも、時を経れば傷みが出てきます。意識せず行っていた階段の上り下りが負担になってくることもあります。傷みや懸念事項は早めにリフォームし、バリアフリー化などは状況に合わせて対応して、その時点の自分や家族のニーズを満たすマイホームにしていきたいですね。

【参考リンク】

私が書きました

大林 香世 の写真

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2023年02月15日