第1074回
物流や建設業等の2024年問題をおさらい!対策と資金繰りは?
- 運送業を営んでいます。2024年4月からいわゆる働き方改革による残業規制などが始まり、人手不足が深刻になっています。経営を圧迫することなく従業員の労働時間を減らすことはできないかと悩んでいます。(愛知県Hさん)
- 業務行程の見直しやITの活用などで生産性をあげ、働きやすい環境を作る取り組みが、さまざまな企業で行われています。他社の事例も参考に、業務行程などを見直し、助成金なども活用して環境改善に取り組まれてはいかがでしょうか。
2024年問題とは
「2024年問題」とは、2024年4月から施行された、「働き方改革関連法」による労働時間の規制などの問題のことです。
「働き方改革」の一環として、時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、すでに2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。
改正後の時間外労働時間は、原則として月あたり45時間、年あたり360時間です。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、「年720時間以内」等の条件が定められています。
しかし、物流や建設、医師、砂糖製造業については、業務特性や取引慣行から、時間外上限規制の導入を5年間遅らせていました。それが、2024年4月から施行されることになり、人手不足や業務の遅れが懸念され、「2024年問題」と話題になっているのです。
なお、建設業については、時間外労働の上限規制はすべて適用されます(災害の復旧・復興の事業を除く)。自動車運転の業務に関しては、一定条件を満たす場合の年間の時間外労働の上限が960時間となります。
働きやすい職場をつくり、労働時間を減らすために
長時間労働による過労は、病気や障害の発症の原因ともなり、事故を引き起こす場合もあります。労働時間の規制は、働く人を守るために必要な制度ではありますが、一方で、労働時間が減ればできる仕事量も減るので、人手不足を招き、請負業務が減ることによる売上減少、消費者に対するサービス低下を招くことになります。
そこで、各企業で業務の見直しやIT導入などによる業務の効率化が図られています。政府では働き方改革に対応する、企業への助成金なども準備されています。
たとえば運送業の場合、運送業務の効率化のため、積載量の多いトレーラーを導入して一度に多くの荷物を運べるようにして、労働時間を減らす。運行に伴う事務作業効率化のため、デジタル式の運行記録計を導入する。「働き方改革推進支援助成金 業種別課題対応コース(運送業)」にはこういった事例が紹介されています。
企業の取り組み事例については、働き方改革特設サイトに多数掲載されています。ITの活用やリモートワークの推進、システム導入による業務の効率化や教育制度による人材育成による人手不足解消など、労働時間抑制につながる実践例を参考にされてはどうでしょうか。
参考:厚生労働省 働き方改革特設サイト 中小企業の取り組み事例
参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)
働く環境の改善のために業務効率化システムや機器を導入する場合、助成金の活用がまず検討されますね。しかし、助成金申請には時間がかかる場合もあるので、一時的な資金繰りには、ビジネスローンの活用も検討してみると良いでしょう。
現在の職場で長時間労働の原因となっていることはないか、改善できる部分はないかを検討し、助成金やローンの情報を集めて、働きやすく、生産性の高い職場への改善を進めてください。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2024年04月09日
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