第967回

不動産担保ローンの借入可能額の目安を知りたいときはどうする?

新型コロナウイルス感染症対策の渡航規制が緩和されるのを待って、子供が数年間海外に留学をする予定です。ある程度まとまった資金が必要になるため、5年前に親から相続して空き家になっている一戸建ての住宅を担保にして、お金を借りようと思っています。不動産担保ローンの借入可能額の目安を知る方法があれば教えてください。(52歳 会社員 男性)
不動産担保ローンの借入可能額の目安は、不動産評価額(時価)×担保掛目(60%~80%)程度と考えておけばよいでしょう。ただし、不動産評価に使う指標や担保掛目は金融機関によって異なります。また、既に他の融資の残債がある場合や、契約者の年収、職業、延滞履歴の有無などによっては、借入可能額が低くなる場合があります。
虫眼鏡と家の模型の画像

不動産担保ローンの借入可能額の目安は、不動産評価額(時価)の60~80%程度

不動産担保ローンは、カードローンなどの無担保ローンと違って、比較的大きな金額を長期間、低金利で借りることができます。また、教育ローンなどと違って基本的に資金使途に制約がないため、自由に使うことができます。ただし、万が一返済不能に陥った場合、担保の不動産を売却するなどして残債の支払いをしなければなりません。

不動産担保ローンの借入可能額は、不動産の評価額に一定比率を乗じた金額をもとに決められます。この比率のことを担保掛目といい、それぞれの金融機関が60%~80%程度の範囲で設定していると言われています。したがって、たとえば不動産評価額が2,000万円の場合、借入可能額の目安は1,200万円~1,600万円と考えられます。

不動産は価格が変動する資産です。金融機関は、ローン契約者が万が一返済不能になった場合、担保を売却した代金でローンの残額を確実に回収する必要があります。そのため、担保掛目は100%よりも低く設定し、ローン残額の未回収リスクを回避します。

不動産の評価額を知る方法について、土地は、国土交通省の公示地価、都道府県の基準地価、国税庁の路線価など、毎年公表されている土地の価格で、大まかに把握することができます。なお、路線価は公示地価の8割相当とされています。建物については、一戸建てで築年数が長い場合、価値が認められないことも多いため、評価額の目安に加える必要はないでしょう。

過去数年内に、不動産会社に対象の不動産の査定を依頼したことがある場合、その査定額を不動産評価額としても差し支えありません。

金融機関に確認するのが最も確実

借入可能額を知るために最も確実な方法は、金融機関に直接確認してみることです。公示価格、基準価格、路線価などはあくまで土地の適正な価格を算出する際の指標です。金融機関によって、利用する指標や評価の方法、担保掛目も異なります。

また、実際に不動産担保ローンを借りるときの金融機関の審査では、担保不動産の評価額だけで借入可能額が決められるわけではありません。借りる人の年齢、年収、職業、勤続年数、債務の状況などの情報提供も求められ、それら内容や、過去の延滞履歴の有無などによっても借入可能額は変わります。

不動産担保ローンの借り入れ計画をしっかりと立てようとするなら、まずはさまざまな金融機関が提供している商品を比較検討していくつかの金融機関を選び、その上で個々の金融機関に必要な情報を提供して借入可能額を確認する方法が効率的でしょう。

【参考リンク】

私が書きました

中村 宏 の写真

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2022年03月10日