第1064回

不動産担保ローンは資金使途や特徴に注意して探そう!

子どもが3人おります。私立理系を希望しているため、これまで準備してきた分では大学進学の資金が不足するのではと心配です。不動産担保ローンを利用する際、どんなことに注意すればいいでしょうか? 自宅の住宅ローンは残り2,000万円ほどあります。(東京都・Sさん)
教育資金であれば、教育ローンなどを優先的に検討すべきですが、数年にわたり多額の教育費が必要となる場合、不動産担保ローンも選択肢のひとつになるでしょう。個人向けであれば、資金使途は原則自由ですが、担保となる不動産の価値によって借り入れできる金額が変わってきますので、早めに金融機関にご相談されるといいでしょう。
自宅を担保に利用するイメージ

不動産担保ローンには、個人向けと事業者向けがある

フリーローンやカードローンなどの無担保ローンとは異なり、不動産担保ローンは文字どおり、不動産を担保に資金を借り入れする商品です。担保不動産は、個人であれば自分名義の土地建物が対象となります。両親や配偶者名義であっても名義人が担保として提供すれば、不動産担保ローンを利用することも可能です。

不動産担保ローンは個人向けと事業者(個人事業主、法人)向けがあります。個人向けは教育資金をはじめ、マイカー購入資金、生活資金、リフォーム・セカンドハウス購入資金など資金使途は自由です。ローンの借り換えや複数のローンを一本化するおまとめローンとしても利用できます。ただし、投資物件の購入に関しては、個人の場合は不可とするケースもあります。

事業者向けは、開業資金、運転資金など事業運営のための資金として利用することができます。特に起業したばかりの事業者が開業資金を銀行の銀行融資で調達するのが難しい場合、不動産担保ローンを選択するケースもあります。

メリット・デメリットを理解して無理のない範囲で借り入れを

不動産担保ローンは個人向け、事業者向けともに、不動産を担保にするため、その評価が借入可能額に大きく反映されます。そのため不動産評価によっては多額の資金の借り入れも可能となることがメリットのひとつです。1億円、2億円、なかには10億円を借入可能額とする商品もあります。

また一般的な無担保ローンよりも金利が低く、返済期間も長期の設定が可能となります。無担保ローンの返済期間は最長でも10年程度が一般的ですが、不動産担保ローンの場合は20~30年と長期で返済できる商品が多くあります。

逆に、評価額が低い場合、借入可能額が少なくなり、必要な資金の調達ができない可能性もあります。金融機関によっては、担保物件は営業管轄内の不動産に限定されるなどの条件もありますので、慎重に不動産担保ローンを比較検討するようにしましょう。

不動産担保ローンならではの注意点を確認

担保にする不動産があればメリットが多いように思えますが、不動産担保ローンならではの注意点も確認しましょう。

不動産担保ローンの場合は、ローン事務手数料や抵当権設定登記費用などの諸費用がかかります。借入金額によっては、金利が比較的高い一般的な無担保ローンのほうが最終的に負担が小さく済む可能性も考えられます。金利だけではなく、諸費用も考慮した商品選びが重要です。

また、仮審査が通り、本審査の段階では、本人確認書類や収入証明のほか、担保とする不動産に関する書類(登記事項証明書、固定資産評価証明など)を用意する必要があります。不動産鑑定も行いますので、融資決定まで時間がかかります。緊急な資金需要の場合は他の手段も検討してみましょう。

ご相談者のように住宅ローンが残っていても、第二抵当で融資可能とする商品もあります。しかし、第一抵当の住宅ローンの残債が多ければ、不動産評価額から差し引いた金額しか借り入れができません。仮に不動産評価額が3,000万円で住宅ローンの残債が2,000万円だとすると、残り1,000万円が借入可能額の上限となります。さらに、ローン返済が増えることにもなりますので、無理のない返済計画を立てておくことが大事でしょう。

何よりも、万一、返済不能となった場合、大事な資産である担保物件を失うリスクがあることを忘れないようにしましょう。

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2024年01月30日