第1076回

マイナス金利が解除!住宅ローン金利の見通しは?

マイナス金利解除で住宅ローンの金利が上がるのでは?と言われていましたが、この先、どうなるのでしょうか?変動金利で住宅ローンを借りるか、固定金利にするか迷っています。どう考えればいいか教えてください。(千葉県・Sさん)
結論から言えば、マイナス金利解除後の住宅ローン金利については、大きな動きはありませんでした。ただし、10年後、20年後も現状の低金利が続くわけではありませんので、変動金利で借りるなら、金利上昇したときの返済額をシミュレーションしておくといいでしょう。
住宅ローン金利

ほとんどの金融機関の変動金利は据え置き。直近での急激な変化はない

3月19日に日銀がマイナス金利政策の解除を発表し、住宅ローン金利への影響を不安視する声が多く聞かれました。政策金利を引き上げたことで、変動金利が上昇するのではないかとの報道も多く見られました。

結果としては、4月の変動金利は、ほとんどの金融機関では据え置き、逆に一部の金融機関では引き下げたところもあり、直接的な影響はほとんどないという状況でした。

一部のネット銀行では引き上げ、引き下げがあり、混在する形となりましたが、これはマイナス金利政策の解除の影響というよりは、変動金利の基準金利について異なる仕組みを採用していたり、キャンペーン終了のために一時的に引き上げられた結果です。また引き下げに関しては、このタイミングで金利引き下げキャンペーンを実施する金融機関もありました。総じて、今回のマイナス金利政策の解除による影響は非常に小さいものでした。

しかしその後、一部の銀行が5月の短期プライムレートを0.1%引き上げると発表しました。住宅ローンの変動金利の基準金利も連動して0.1%引き上げられることになります。他行が追従するかは気になるところですが、毎月毎月、金利動向をチェックするよりも、長期的な目線で冷静に判断することが大事でしょう。

今後については、日銀総裁の「当面は、緩和的な環境が続く」との発言があったことからも、急激な利上げがないと考えられていましたが、直近では、「円安が物価に対して無視できない影響を与える状況になれば、追加の利上げなど金融政策の変更もあり得る」との考えを示すなど、注目しておく必要があります。

しかしながら、変動金利については、基準となる政策金利が矢継ぎ早に利上げされない限り、小幅な動きがあったとしても、最低水準の金利が当面は続くものと思われます。物価が上昇しても賃金が上がらないうちは、金融緩和策を全面的に解除するのは難しいでしょう。

固定金利、変動金利が上がる仕組みや契約内容を再度確認する

住宅ローンの固定金利と変動金利では基準とする金利が異なります。変動金利は、これまで述べたように、日銀の政策金利の影響を受けますが、固定金利は長期金利(10年もの国債)を基準に決められています。

【参考リンク】


長期金利はここ数年上昇傾向にあり、その影響を受け、住宅ローンの固定金利も上昇しています。固定金利の代表である【フラット35】(※)は、直近で最も長期金利が上昇した2023年11月には最頻金利は1.96%まで上昇し、その後は引き下げられましたが、今年4月の最頻金利は1.82%で、3年前の4月の最頻金利1.37%からは0.45%の上昇です。長期金利は、多少の上げ下げはありますが、上昇傾向に入ったと見ていいでしょう。

(※)借入期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合

変動金利に関しては、政策金利が今後どうなるか次第で、今年末までに2回程度の引き上げも予想されており、0.1%ずつ2回で0.2%~0.3%になる可能性も否定はできません。ただし、各金融機関が政策金利の上昇に合わせて即座に変動金利の適用金利を引き上げるかは、わかりません。金利優遇の幅を狭めることで調整することも考えられます。現在借りている場合は、適用金利が引き上げられたとしても、5年間は毎月返済額に変動はありません。5年後に増額になっても1.25倍にとどまるというルールもあります。

しかし、金融機関や返済方式よっては、このルールが適用されない場合もありますので、改めて、契約内容を確認し、毎月返済額が増額したときに備えておく必要はあるでしょう。

新規で借り入れするなら、長期的な返済計画で無理なく返せるかのチェックを

固定金利にするか変動金利にするかは、ライフスタイル、マネープランによるところが大きく、そのセオリーは変わらないでしょう。現時点で見れば、まだまだ変動金利が低利で、借入金額が同じであれば、毎月返済額の負担は少なくて済みます。しかし、今後は上昇傾向にあると考えれば、変動金利で何%まで上がっても無理なく返済できるかをシミュレーションしておくことが大事です。現在の最優遇金利ではなく、1%になったら、2%になったら毎月返済額はいくらになるのか確認し、それでも無理なく返せるかチェックしておきましょう。

全期間固定金利で借りる場合は、借り入れ時の金利が返済終了まで変わらないので、安定した家計管理ができます。注意が必要なのは、購入物件の完成が半年後、1年後となった場合、借り入れ時の金利が、現在よりも上昇している可能性があることです。全期間固定金利で借りる場合も、半年後、1年後に仮に0.5%上がっていたら、毎月返済額はいくらになるのかをシミュレーションしておくようにしましょう。

【参考リンク】

私が書きました

伊藤 加奈子 の写真

伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2024年04月22日