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第1162回

子育て世帯の住宅ローン繰上返済、教育費とのバランスのとり方は?

昨年、住宅ローンを借りました。ボーナスなどが入ったときに、繰上返済をすべきかどうか迷っています。どのようにすればいいか、考え方を整理したいです。(会社員、34歳、子どもは2人)
住宅ローンを利用すると、繰上返済を急ごうとする方もいますが、生活予備費のほか、お子さんの進学をはじめ、ご家庭のライフイベントを考慮したうえで、ムリのない範囲で行うようにしましょう。

繰上返済は「返せる額」ではなく「残す額」から考える

住宅ローンを借りると、「早く返すほど安心」「早く返して支払い利息を減らしたい」などと焦る気持ちになる方が少なくありません。特に子育て世帯では、家計を引き締めて住宅ローン残高を減らすことが、将来への備えだと感じられるかもしれません。

しかし、子育て世帯であれば進学などのライフイベントが控えています。他にも、ご家庭ごとにさまざまなライフイベントが想定されるでしょう。繰上返済を優先しすぎると、進学時に教育資金が足りず、教育ローンや奨学金を利用することになるケースもあります。繰上返済は安心につながる行動である一方、過剰に行うと家計の柔軟性を奪うことにもなりかねませんので、家計全体を見ながら進めることが大事です。

生活予備費と目的別貯蓄は繰上返済しない

具体的に、どのような資金を手元に残すべきなのでしょうか。

まずは、生活予備費を確保しなくてはなりません。人生、何があるかはわかりません。リストラや倒産、減収、家族の病気、親の介護など、家計の緊急事態は突然やってくるかもしれません。これに備えるための貯蓄が生活予備費で、「自家保険」とも言われます。

会社員なら3~6カ月、自営業者は6~12カ月の生活予備費が理想です。3カ月とする場合、毎月の生活費が30万円の家庭であれば、30万円×3カ月=90万円。この分は、普通預金や定期預金など、引き出しやすい金融商品で準備しておくのがポイントです。

繰上返済の際に、予備費以外に残すべき分は、目的別貯蓄です。教育資金や住宅リフォーム資金、家族の長期旅行やレジャー費、車の買い替え資金、その他、ご家庭によって異なります。下記に目的別貯蓄プラン表の例を示しますが、このような形で計画的な貯蓄を整理してみると、現時点の貯蓄額を把握することができます。

教育資金は高校3年以降の受験期から大学時代に照準を当て、自宅通学で400~600万円、自宅外なら500~700万円を目安に貯めるようにしましょう。不足分は毎月の家計から捻出し、それでも足りない場合は奨学金や教育ローンを活用するという順番で考えるといいでしょう。表では500万円を目標額にしています。

計画的に貯めるべき目的別貯蓄の残高分は、繰上返済に回さず、手元に残す必要があります。この例では、今の貯蓄額の合計である614万円(予備費含む)が繰上返済に回してはいけない貯蓄額と言えます。

貯蓄プランを明確にしていない状態だと、600万円超の貯蓄があることから、「できるだけ繰上返済をしよう」という発想になってしまう可能性があります。しかし、現状の目的別貯蓄額が614万円であることを考えると、将来的に、他のライフイベントなどに影響が出てしまいます。1度、こうした目的別貯蓄プランをしっかり立てることが大事です。

目的別貯蓄プラン表(例)
目的 目標額① あと何年?② 今の貯蓄額③ 今後の貯蓄額④ 年平均 貯め方 金融商品
(①‐③) ④÷② 毎月 ボーナス
合計
予備費(生活費3カ月分) 90 常時 90         定期預金・普通預金
家族旅行 60 4 24 36 9   9 定期預金
住宅リフォーム 180 15 0 180 12 1    
長男大学資金 500 12 260 240 20 1 8 学資保険+NISAつみたて投資枠
長女大学資金 500 14 220 280 20 1 8 財形貯蓄+NISAつみたて投資枠
成人式2人分 80 15 20 60 4   4 ネット定期
合計 1,410   614 796 65 3 29  

※筆者作成/単位:万円

繰上返済を行う場合も返済額軽減型で

特に子どものいる家庭では、繰上返済は慎重に行う必要があります。一般的に、子どもが大きくなるほど教育費の負担が大きくなることから、繰上返済の方法は「返済期間短縮型」よりも、「返済額軽減型」を選んだ方がいいでしょう。あるいは、教育費の負担がピークを過ぎた後に、繰上返済を加速させるという考え方も有効です。いずれにしても、ムリな繰上返済は行わないようにしましょう。

私が書きました

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2025年12月22日