第281回

住宅ローンはやっぱり全期間固定型がお勧め!

現在、新築一戸建ての購入を検討中です。銀行では、金利の低い変動金利型の住宅ローンを勧められたのですが、今後、金利がどうなるか不安なので、迷っています。住宅ローンの金利タイプを選ぶポイントを教えてください。(T.Kさん 35歳・会社員)
金利が変動する「変動金利型」や一定期間の金利が固定される「固定金利選択型」の住宅ローンよりも金利は高くなりますが、金利が変わらないのが「全期間固定型」の最大のメリットです。住宅ローンは20年以上の長期にわたることがほとんどのため、その間、家計を安定させたい人には、全期間固定型がお勧めです。

最近の金利動向と強まる金利先高感

長期金利の上昇で、ここしばらく上昇傾向にあった住宅ローン金利も、長期金利の低下を受けて、8月、9月と全面的に引き下げられ、とりあえず落ち着きを見せた感があります。

とはいえ、今年前半に比べると、全体的に金利は高い水準にあり、「平成20年度民間住宅ローン利用者の実態調査(第1回)」(住宅金融支援機構)によると、今後1年間の住宅ローン金利見通しは、「現状より上昇」との見方が全体で44.9%と前回調査(平成20年2月実施:29.1%)に比べてアップしており、民間住宅ローン利用者の間でも、金利先高感が高まっているようです。

目先の金利だけで安易に選ぶのは危険!

そんな中で、住宅ローンの利用を検討している人が頭を悩ませるのが金利タイプではないでしょうか?
たしかに、変動金利型や固定金利選択型のように、借りた後で金利が変動するタイプの商品は、全期間固定金利に比べて金利が低く(変動金利:1.375% 固定3年:1.400% 固定30年:2.70%(いずれも最優遇金利で)「住宅ローンベスト金利一覧」9月2日現在)、民間金融機関が実施する金利優遇キャンペーンによって、低金利である点が大きなメリットです。

住宅ローンは数千万円と高額な上、ほとんどの返済期間が20年以上と長期間にわたるため、金利が低ければ返済額は少なくなり、返済計画も立てやすくなります。しかし、金利の知識もないのに、目先の低金利ばかりにとらわれた返済計画は要注意です。

それぞれの金利タイプに向いているのはこんな人!

例えば、株式や投資信託などの金融商品への投資も積極的で、常に金利動向には敏感、家計管理や数字にも強いという人や、「夫婦共働き等で収入が高く返済に余裕がある」「収入に対して返済額の割合が小さい」「ある程度まとまった繰上げ返済のための余裕資金がある」など金利上昇のリスクに耐えられる人などは、金利が変動するタイプを選択しても柔軟に対応できる可能性が高く、変動金利型や固定金利選択型を選ぶのも良いでしょう。

しかし、多くの人の場合、金利上昇に対して不安感を持ち、住宅ローンという高額な借金を抱えるわけですから、あまりこれ以上リスクを負いたくないと考えるでしょう。
あまり金利動向をチェックする方ではないという人、まだ若いファミリーで子どもが増えたり、妻が退職したりして、ライフプランの変動要素が多い人などは、全期間固定型を選ぶのが無難です。

収入は伸び悩む一方で、食費やガソリン代等の生活費や、医療費、社会保険料、税金などの支出は増加傾向にあり、経済も先行き不透明感が強まっています。このような状況下では、住宅ローンもできるだけ安全性重視の全期間固定型が安心。金利と返済額を安定させることで生活設計が立てやすくなります。

ローンシミュレーションで自分の許容範囲を確認!

いずれにせよ、住宅ローンを選ぶ場合は、それぞれの金利タイプのメリット・デメリットをきちんと把握した上で、個々の家庭のライフプラン等を長期的に検討して選ぶことが大切です。その際には、それぞれの金利タイプ別の返済金額や総返済額等をシミュレーションして、具体的な数字を自分の目と頭で確認することが重要です。

私が書きました

黒田 尚子 (くろだ なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、第2種情報処理技術者、初級システムアドミニストレータ。

92年大学卒業後、日本総合研究所に入社。約5年3ヶ月間、システム開発に携る。退社後、98年ファイナンシャル・プランナーとして独立。 まったくの異業種からの転職のため、できるだけ幅広いテーマを手掛けるようにしている。雑誌・インターネットなどの連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。モットーは「夢をカタチに」。現在、夫1人&猫1匹と暮らす。

※執筆日:2008年09月04日