第511回

資産運用のバックアップ資金に使えるローンがあるの?

近頃、急速に円安が進んでいますね。今までは円高や株価の低迷で、外債投資や株式投資であまりいい目にはあっていないのですが、今度こそ投資のチャンスだと思って張り切っています。FXにも挑戦したいと思っていますが、注意点などを教えてください。
FXは、レバレッジを効かせて取引をすることができるので、大きなリターンが狙える反面、大きな損失を出す可能性もある投資方法です。余裕資金での取り組みが必須で、ムリは禁物ですが、一時的な相場の変動による強制ロスカットを避けるためのバックアップ資金として、カードローンをひとつ持っておくのも安心して取引するための1つの方法です。

FXは、少額の資金で大きな取引をできるのが魅力

今回のご相談者は外貨建て金融商品や株式への投資はご経験があるようですが、さらに、レバレッジ効果のあるFXにも挑戦したいということですね。

「レバレッジ効果」というのは、「てこの原理」のことで、投資資金よりも大きな金額を運用することができる効果のことをいいます。FX(外国為替保証金取引)は一定の保証金を担保とした上で、25倍までの売買が可能になります。

例えばFXでレバレッジ25倍で取引する場合、1米ドル=100円のときに、1万米ドルを購入するには本来であれば「100万円」が必要なところ、25分の1の保証金「4万円」で取引をすることが可能です。1米ドル=101円になれば、1万円のプラス、1米ドル=110円になれば、10万円のプラスと、円安になった場合は、少ない元手を効率よく増やすことができます。

しかし、為替相場への投資は貯蓄と異なり、利子や元本の保証はありません。さらにFXは、価格変動リスクがレバレッジに応じて大きくなる、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」の投資方法です。先ほどの例で言えば、1米ドル=99円になれば、1万円のマイナスとなり、保証金は3万円に減ってしまい、必要な保証金額が維持できずに、後述するように自由に取引ができなくなったり、追加入金が必要になったりします。さらに急速に円高が進むと、保証金をすべて失うだけでなく、保証金額を上回った損失額を取引業者に支払わなくてはならなくなる場合もあります。

したがって、FXを行う際は、余裕資金を投資して、もしも大きな損失を被っても、生活に困ることのないように取り組みましょう。

そのほか、通常の取引では、「買い」からしか始められませんが、FXでは「売り」から始めることもできるなど、さまざまな特徴があります。取引を始める前に、取引業者ごとの取引方法の特徴をしっかり確認しておきましょう。

【参考リンク】

ギリギリの保証金で取引をするのは避けよう

FXの場合は、取引できる通貨ごとに取引単位と必要な保証金額が決められています。相場は日々刻々と変わっていくので、必要な保証金額は相場につれて上下します。また、取引の結果、損失が発生すれば保証金から差し引かれるので保証金は減少することになります。

取引に必要な保証金額が維持されていれば自由な取引ができますが、必要な保証金額が維持できていないと、取引中の建玉を強制的に決済(ロスカット)されてしまう場合があります。

<追証(おいしょう)>

保証金が決められた基準以下になってしまうと、保証金不足の連絡が取引業者から入ります。業者によっても仕組みは違いますが、追加入金するか、取引中の建玉を一部決済して、必要な額の保証金を回復させなければなりません。期限までに必要な保証金を回復できなければ、強制的にそれまでの取引が決済(ロスカット)されてしまいます。追加入金の期限も業者によって異なりますが、業者から連絡が来た日の深夜や翌営業日などと、大変短い期間となっています。

<自動ロスカット>

FXには投資元本よりも損失が大きくならないようにするために「自動ロスカット」という仕組みがあります。これは、あらかじめ指定した範囲以上の損失が発生して保証金額が減ってしまった場合、保有している通貨を自動的にロスカットすることで、それ以上に損失が拡大しないようにする仕組みです。
たとえばあなたが寝ているときも為替相場は動いています。そんなときに相場が急変し、何の手段も講じなければ損失は膨らんでいくばかりですが、自動ロスカットされれば、損失を限定させることができるわけです。(ただし、価格変動が急激な場合には、預けた資産以上の損失が出る場合もあります)

ロスカットは、損失を投資金額以上に広げないための措置なのですが、利益を得る機会をみすみす逃す場合もあり得ます。このようなロスカットを避けるためには、保証金額は最低保証金を大きく上回る余裕を持ったものにしておくことが大切です。相場が大きく動けば大きなリターンをもたらしますが、同じ幅でマイナスに振れることもあるわけですから、最低保証金額ギリギリではなく、予測する変動幅以上のゆとりを持たせておきましょう。一般的に、FXは25倍のレバレッジを効かせることが可能ですが、想定と逆の方向に動いた場合の対応を考えると、目一杯レバレッジを効かせてギリギリの最低保証金で取引をすることは現実的ではないと認識しておきましょう。

相場の急変時に追証や自動ロスカットを避ける方法は?

しかし、どんなに保証金額に余裕を持たせていたつもりでも、各国の経済情勢の変動などによる相場の急変で、保証金額の維持が難しくなる場合があります。相場の急変による保証金の不足を補うためには、カードローンの借入枠をあらかじめ設定しておくこともひとつの方法です。もちろん、投資資金として、恒常的に借入金をつぎ込むのではなく、相場の急変時に必要な保証金額を維持して取引を継続するために、借入金をピンポイントで利用するのです。

例えば、雇用統計や政策金利の発表時に相場トレンドの一時的な急変が予想される場合には、カードローンを使って一時的に保証金を積み増しておけば、わずかな利息負担でロスカットを避けることができ、利益を得る機会を逃さずに済みます。

カードローンは、一度契約しておけば、素早く借り入れができ、短期間で完済すれば利息負担を小額で抑えることができます。例えば、実質年率18%のカードローンを10万円借りた場合、今日借りて、明日返せば、負担する利息は約49円(10万円×0.18÷365日×1日分)で済みます。

【参考リンク】

投資をする際の注意点は?

FXは、いわゆるハイリスク・ハイリターンの投資方法です。

  • ・余裕資金で取引をすること
  • ・保証金には余裕を持たせてレバレッジをコントロールすること
  • ・相場の急変に備えて、資金を準備しておくこと
    (普通預金の残高を増やしておく、カードローンの借入枠を契約しておく等)
などが注意点として挙げられます。

また、取引業者によっても取引のルールや手数料は異なり、損失を拡大しないための仕組みも、さまざまに用意されています。デモ画面で取引のシミュレーションができる場合もあるので、始める前に、比較検討されるとよいでしょう。

【参考リンク】

投資の世界には「休むも相場」という格言があります。投資に熱中して判断力を失うことのないように、むやみに生活資金まで投資につぎ込むことにならないように、時には投資を休んで冷静に考えることも大切です。自分なりの相場観、投資方針を持って投資しましょう。

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2013年03月15日