第494回

買った後で後悔しない、ゆとりのある住宅購入計画を立てる方法は?

現在、夫婦2人で賃貸マンションに住んでいます。来春に子どもが生まれる予定のため3LDKくらいのマンション購入を検討中です。マイホームには物件価格以外に費用がかかると聞いたのですが、どのような費用があって、それぞれどのくらい必要なのでしょうか?(Y.M 30代 会社員)
マイホームを購入する際には物件本体のお金以外に「諸費用」と呼ばれるお金がかかります。一般的にはマンションの場合「新築なら物件価格の3%~5%、中古なら物件価格の5%~10%程度」が目安です。そして購入後も、住宅ローン返済はもちろんのこと、物件に対する税金など、マイホーム維持のための諸費用もかかってきます。住宅購入の資金計画を立てる際には、マイホーム「購入時」と「購入後」の諸費用を踏まえ、「住宅ローン」+「諸費用」を毎月無理なく支払い続けることができるのか、検討してみてください。

マイホーム「購入時」の諸費用とは?

「マイホームってお金がかかるのね…」当たり前のことですが、マイホームを購入しようと住宅展示場やショールームに行った人が驚くのが「諸費用」の存在です。

ほとんどの人は、物件価格や工事費用以外にどれだけお金がかかるか把握していません。そのため資金計画をシミュレーションしてもらうと、その金額の多さにびっくりされます。

諸費用は、大きく分けて「購入時」と「購入後」にかかります。

まずは購入時の諸費用を見てみましょう。

購入時の諸費用は、以下の3つに分けられます。

1、「物件」に対する費用

具体的には、契約書に貼付する印紙税、不動産登記にかかる登録免許税や登記費用、マンションにかかる修繕積立基金、中古物件にかかる仲介手数料、土地や建物を取得する際にかかる不動産取得税など。

なかでもマンションの修繕積立基金は、将来の大規模修繕などの費用の一部になるお金で、首都圏の平均は約42万円。もっと高額な修繕積立基金を一括払いするケースもあります。

2、「住宅ローン」に対する費用

住宅ローン契約書に貼付する印紙税、ローン保証料、事務手数料、団体信用生命保険料(以下、団信保険料)、抵当権設定費用など。

とりわけ「ローン保証料」「事務手数料」「団信保険料」は、銀行などによって異なり、コスト削減できる可能性の高い費用です。例えば、保証料がかからない銀行もありますし、事務手数料も3~5万円といった定額の銀行や、借入金額に対して定率の事務手数料設定としている銀行もあります。例えば、「融資金額に対して2.1%の銀行事務取扱手数料(消費税込)がかかります」と表記がある金融機関から2,000万円の融資を受ける際には、42万円の事務手数料がかかることになります。

団信保険料については、ほとんどの銀行で保険料込みの住宅ローンになっていますが、「フラット35」で借りた場合、団信保険料を別途支払う必要があることもお忘れなく。ローン比較サイトを活用する際は、各ローンについて、以下のポイントに注目してチェックしてみると良いでしょう。

  • ・団体信用生命保険料(込み/別)
  • ・保証料(なし/あり)
  • ・手数料(定額/定率)

【参考リンク】

3、その他

火災保険料や地震保険料、引っ越し費用、家具や家電の購入費用など。

以下のページもを参考にしてチェックしてみてください。

【参考リンク】

いずれにせよ、諸費用は、その物件が新築か中古か、戸建てかマンションかによっても異なりますし、住宅ローンの種類や借入額によっても異なります。

諸費用の目安はマンションの場合、「新築なら物件価格の3~5%、中古なら物件価格の5~10%程度」と言われています。例えば、物件価格4,000万円の新築マンションなら120万円~200万円かかるわけです。原則として、このお金は現金で支払うことになります。諸費用込みの住宅ローンもありますが、その分返済額も膨らみますから、しっかり確認して別途準備しておくことです。

マイホーム「購入後」の諸費用とは?

諸費用がかかるのは購入時だけではありません。購入後にも必要になってきます。マイホーム購入後にかかる諸費用は、物件にかかる固定資産税や都市計画税などの税金、マンションの場合の管理費や修繕積立金、マイカーを保有している場合の駐車場代、火災保険料や地震保険料などの保険料など。そして、もちろんこれに毎月の住宅ローン返済も加わるわけです。

つまり、マイホーム維持のためには、「毎月の住宅ローン返済」+「購入後の諸費用」のお金が必要なのです。資金計画を立てる際にも、この点を想定しておかなければなりません。

<購入後にかかる主な諸費用>
費目 内容 目安
固定資産税・都市計画税 マイホームなど所有する不動産にかけられる市町村税。毎年1月1日時点の所有者に4月に通知。納税は6月(年4回分納可) 固定資産税について、新築は3年間(マンションは5年間)の軽減措置あり。年額10~15万円
管理費 マンションの共用部分の清掃や、設備の管理、管理会社への支払いなどに充当される マンションごとに金額が異なり、専有面積が広いほど管理費が高くなる。平均月額1万4,768円*
修繕積立金 マンションの大規模修繕に備えて毎月積み立てるお金。積立金額が不足すると、修繕時に一時金が必要になることも 専有面積が広い場合、築年数が古い場合は金額が高くなる傾向がある。平均月額6,793円*
駐車場代 マンションで駐車場を契約する場合には駐車場代がかかるほか、専用庭やルーフバルコニー付きの住戸の場合、その使用料が必要になることも 平均月額1~2万円程度

※筆者作成
* 2010年首都圏新築マンション契約者動向調査(リクルート調べ)より

マイホーム購入後の住居費負担をシミュレーションしてみよう!

では、毎月どのくらいかかるか、実際にシミュレーションしてみましょう。
 例えば、物件価格3,500万円のマンションを、頭金500万円、残金3,000万円に対して30年固定ローンを組んで借りた場合(ボーナス返済なし。金利:年2.50%)、毎月返済は118,536円になります。

これに管理費などを加えると、月額約15万円以上の住居費がかかることがわかりますね(下図)。さらに、税金などの負担も加えて年額のコストも試算しておかなければなりません。

<購入後にかかる毎月の住居費負担額>
住宅ローン毎月返済額 管理費 修繕積立金 駐車場 合計
住宅ローン毎月返済額:118,536円
15,000円
5,000円
15,000円
153,536円

※イー・ローン「住宅ローンシミュレーション」を使って筆者が任意で計算

【参考リンク】

決め手は住宅ローン選び!

このように諸費用も含めたコスト管理意識を高く持つことによって、住宅ローン選びの視点も変わってきます。とりわけ、昨今のように先行き不透明な時代だからこそ、20年、30年と長期で返済していく住宅ローンを組んでマイホームを購入するのならば、さまざまな諸費用を見越して毎月支払うことのできる金額からムリのない範囲の住宅ローンの金額を算出し、よりよい条件の住宅ローンを比較・検討することが大切です。

私が書きました

黒田 尚子 (くろだ なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、第2種情報処理技術者、初級システムアドミニストレータ。

92年大学卒業後、日本総合研究所に入社。約5年3ヶ月間、システム開発に携る。退社後、98年ファイナンシャル・プランナーとして独立。 まったくの異業種からの転職のため、できるだけ幅広いテーマを手掛けるようにしている。雑誌・インターネットなどの連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。モットーは「夢をカタチに」。現在、夫1人&猫1匹と暮らす。

※執筆日:2012年11月09日