第491回

子どもの教育資金を検討するときは、家計見直しのチャンス!?

高校3年生の息子が来春都会の大学(文系)に入る予定で、これから入試に向けて本格的にお金がかかりはじめます。現在ある程度の蓄えはありますが、最初に貯蓄からたくさん出すとあとで困りそうで心配です。住宅ローンも抱えている中で、どうやってやりくりをしたらよいか教えてください。(島根 専業主婦 46歳 T)
確かに、はじめて子どもを都会の大学に進学させるときには、入試にかかる費用や入学料、授業料、毎月の仕送り額などがわからず、不安に駆られるかもしれません。まずは情報を集めておおよその金額を把握し、その後、貯蓄から払うかローンを組むかを検討してはいかがでしょうか?また、その後のローン返済や仕送り負担のことも考え、家計の節約に取り組むことをオススメします。

まずは大学進学にかかる「費用」と「費用の性格」を把握する

子供の大学進学に伴う費用には、大きく分けると次のようなものがあります。

表1:大学進学に伴う費用
費用項目 内容 費用の性格
受験関連費 受験料
受験のための交通費や宿泊料等
一時的な費用
入学料 入学時に大学に支払う費用 一時的な費用
年間授業料 私立大学の場合は施設整備費もかかります 毎年かかる費用
新生活準備費 引越し代や住居の敷金・礼金、家具など 一時的な費用
生活費 家賃・食費・光熱費・雑費 毎年かかる費用

実際にかかる金額は、進学先が国公立大学か私立大学かによっても違いますし、自宅通学か下宿かによっても異なります。子供の進学先の可能性を踏まえ、いくつかのケースを想定して資金を確保しておく必要があります。

【参考リンク】

Tさんのお子さんの場合は、都会の文系学部への進学を希望しています。大学への初年度納付金は、1年目の授業料等も含めて100万円を少し上回る金額になります。また、受験関連費や新生活準備費などに100万円程度を見込めば、最初の年に一時的に出ていくお金として合計200万円程度を準備しておく必要がありそうます。

しかし、費用はこれだけではありません。1年目の4月からは仕送りをしなければなりません。2年目以降の授業料も必要です。これらは継続的に出て行くお金です。

教育費を考えるときには、その費用が「一時的な費用」なのか、「毎年かかる費用」なのかの仕分けをまず行い、「一時的な費用」は貯蓄やローンで準備をし、「毎年かかる費用」はできるだけ収入や奨学金から支払う。それでも足りなければ少しずつ貯蓄を取り崩すと考えたほうがいいですね。「毎年かかる費用」をローンで工面していくと、借金が膨れあがる恐れがあります。

低金利時代は、貯蓄があっても教育ローンを借りたほうがいい場合もある

Tさんの場合、現在ある程度の貯蓄はあるようですが、それでも、今後お金がいくらかかるか見当がつきません。とりあえず手元資金を多めに残しておきたいと思うのであれば、教育ローンを使って当面の必要資金を準備してもいいでしょう。

子供の大学生活が落ち着き、奨学金やアルバイトなどの収入や毎月の支出が安定してきた段階で、ゆとりがあるようなら、教育ローンの繰上返済をすればよいのです。

教育ローンには、日本政策金融公庫による国のローンや民間金融機関のローンがあります。国のローンは固定金利で年2.35%(2012年10月15日現在、保証料別)、民間金融機関のローンは、変動金利で年2.00%(保証料込)程度からあり、いずれも今は低金利で使いやすくなっています。

Tさんが200万円の教育ローンを返済期間10年で借りた場合のシミュレーションをしてみましょう。

表2:200万円の教育ローン(返済期間10年)を借りたときの毎月返済額と返済総額
金利(年率) 毎月返済額 返済総額
2.00% 18,403円 2,208,323円
2.35% 18,718円 2,246,144円
2.70% 19,036円 2,284,371円

※イー・ローン ローンシミュレーションにて試算

【参考リンク】

シミュレーションの結果によれば、いずれのケースも毎月の返済額は2万円以下と、家計の負担を考えてもムリなく返済できる範囲だと思います。

同じタイミングで住宅ローンも見直そう!

全国大学生協連合会の「第47回学生生活実態調査」によると、下宿生への親からの仕送り額の平均は月約7万円です(2011年)。月平均支出の約11万円を、この仕送りや奨学金、バイト代などの収入から支払っている構図です。

親は、毎月仕送りをしつつ、教育ローンがある場合にはその返済もし、さらには、毎年授業料を支払わなければなりません。家計への負担を和らげるために、少しでも他の支出を減らしたいものです。

Tさんのように住宅ローンがある場合には、これを見直して返済額を軽減できれば、家計費の節約につながります。現在は、もともと市場金利が低いうえに、金融機関同士の金利引き下げ競争によって、住宅ローンの適用金利はかつてより下がっています。

表3:住宅ローンの見直し試算例 (元利均等返済)
  ローン残 残りの返済期間 金利タイプ 適用金利(年率) 毎月返済額
現在 1,500万円 15年 全期固定金利 3.0% 103,587円
見直し後 10年固定 1.4% 92,437円

※イー・ローン ローンシミュレーションにて試算

たとえば、現在のローン残が1,500万円で残りの返済期間が15年、これまでの適用金利が年3.0%の場合、当初10年間固定金利年1.4%のローンに借り換えると、毎月返済額を約1万円削減することができます。「変動金利タイプ」の住宅であればさらに低金利ですし、「将来金利が上昇する」と指摘されている中でも、ここ数年は金利水準も低いままですので、今後の動向次第では「変動金利タイプ」への借り換えも有効ではないでしょうか。

【参考リンク】

このように、お子様の教育費を検討するタイミングで、他のローンの見直しを実施すれば、教育費の追加負担を和らげつつ、家計のキャッシュフローにもゆとりができます。

他にも、昔から入りっぱなしの生命保険や、何も考えずに更新している自動車保険なども現状にあわせて必要な補償を見直してみると、意外と節約できます。せっかくの機会ですから、家計全般のお金について徹底的に見直してくださいね!

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2012年10月19日