第444回

2012年以降も競争激化!?2011年カードローン業界を振り返る

カードローンが借りやすくなったと聞きましたが、それって本当でしょうか?(N.Iさん 24歳)
「貸し手」である金融機関側では、金利の引き下げなどを実施しており、状況は変化してきています。2011年のカードローン業界を振り返って、今後について考えてみましょう。

金利は低く、限度額は高く、門戸は広く

まずは金利(実質年率)を見てみましょう。主要なカードローンをピックアップし、2009年から2011年までの実質年率の推移を比べてみました。

商品名 金融機関名 2011年11月実質年率 2010年12月実質年率 2009年12月実質年率
三菱東京UFJ銀行カードローン
バンクイック
三菱東京UFJ銀行 4.600%~14.600% 5.100%~14.600% 5.100%~14.600%
みずほ銀行カードローン みずほ銀行 5.000%~14.000% 5.000%~14.000% 5.000%~14.000%
「スターワン借換ローン」 東京スター銀行 1.200%~14.800% 1.200%~14.800% 5.800%~14.800%
住信SBIネット銀行のネットローン
プレミアムコース
住信SBIネット銀行 4.000%~10.000% 4.000%~10.000% 6.000%~10.000%
モビットカードローン モビット 4.800%~18.000% 7.500%~18.000% 9.800%~18.000%
プロミスのフリーキャッシング プロミス 6.300%~17.800% 7.900%~17.800% 7.900%~17.800%
オリックスVIPローンカード オリックス・クレジット 4.800%~14.800% 4.800%~14.800% 5.500%~14.600%
三井住友カードゴールドローン 三井住友カード 4.500%~9.800% 4.500%~12.800% 7.800%~12.800%

※ 2011年の実質年率は2011年11月25日現在
※ 2010年の実質年率は2010年12月のイー・ローン掲載データに基づく
※ 2009年の実質年率は2009年12月のイー・ローン掲載データに基づく

【参考リンク】

「銀行のカードローンは下限の実質年率5%程度」という目安も過去のものとなり、三菱東京UFJ銀行や住信SBIネット銀行のようにカードローンに力を入れている銀行では、「下限の実質年率4%台」が主流となってきました。また、上限金利についても、引き下げを実施する金融機関が徐々に現れてきており、実質年率14%以上のカードローンが大半を占める中で、三井住友カードなどは、実質年率10%以下のカードローンの提供をしています。

カードローンの金利が下がる一方で、借入限度額は年々増加傾向にあります。現在、 借入限度額の主流は「500万円」で、銀行系の中にはそれより高い700万円、800万円、さらに1,000万円と設定しているものもあります。これは今までより高い所得の人にも目を向けているということ。カードローン顧客のメインであった低中所得層だけでなく、収入が多く消費も多い高所得層まで、門戸を広げているということです。

なぜ金利は低くなる?新規参入組と大手銀行が積極的に取り組む理由

金利の引き下げも含めた、商品性の改定の理由については、もちろん、現在の市場の金利水準が下がってきているということもありますが、カードローン業界内の各社では、現在の低金利に加え、受付審査から契約、債権管理に至るまでの業務体制の改善や、グループで共通のシステムに統合して合理化をはかるなど、ローコスト経営で商品性を改定し、激しい顧客争奪戦に勝ち残ろうとしていることがわかります。

インターネット専業を中心とした新規参入銀行のカードローン残高が急速に拡大しています。2011年8月25日付けの日本経済新聞によると、新規参入組主要7行の2011年6月末のカードローン残高は、前年同月末に比べ3割増え、2000億円を突破したとのこと。業界全体の残高3兆2000億円から見れば1割にも満たない金額ですが、新規顧客向け低金利キャンペーンなどの積極策で急伸しています。

一方、大手銀行も活発な動きをみせています。新生銀行は10月から「レイク」ブランドを取り込み、カードローンサービスへの本格的な取り組みを始めました。三井住友銀行は先日消費者金融大手の「プロミス」を完全子会社化すると正式発表。ここ3年間については、毎年カードローンの商品性を改定しています。オリックス信託銀行については、預金残高1兆円突破を機に、2011年10月1日付けで「オリックス銀行」へ社名を変更しました。オリックス銀行については、来年3月からカードローン事業を始めようとしています。

住宅ローンや国債に頼りがちな預金の運用先を多様化するため、総量規制というハンディのない銀行が、その立場をフルに活用して続々と参戦しているわけですね。

カードローンがどのように変わっても、私たちの心構えは同じ

「貸し手」である金融機関のカードローンが変化する中で、「借り手」である私たちはどう考えたらいいでしょうか?金融機関の成長をかけた激しい競争は、我々「借り手」にとってはポジティブにとらえていいでしょう。選択肢が増えるということは、自分にとってさらに条件の良いローンが見つかるかもしれないということですね。

また、今後は成長著しい新規参入組の動きにも注目してみてください。これからカードローンを利用する人は、まず自分が利用しているネット銀行をチェックしてみるといいかもしれません。すでにお付き合いのある金融機関なので、審査が早かったり、手続きが簡単であったり、特別なサービス(金利の引き下げ、限度額の拡大など)を受けられたりする可能性があります。

ただし、どのように状況が変わっても忘れてはいけないのが「必要以上に借りない」「計画的に返済する」というローンの大原則。総量規制導入の背景には、身の丈に合っていないローンを抱える人の増加が社会問題となったことがありました。銀行は、みなさんからの大切な預金を預かって、私たちや企業に貸出をしていますから、慎重に貸出審査をして、着実に返済できる方に貸そうとしているはずです。「借り手」である私たちは、きちんとした「信用力」を身につけたいものですね。有利になった「借り手」の立場を、生かすも殺すもあなた次第だということを忘れないようにしましょう。

私が書きました

神田 理絵 (かんだ りえ)

ファイナンシャル・プランナー、住宅ローン・アドバイザー、心理カウンセラー。

大学卒業後、大手総合商社へ入社し、貿易事務に携わる。その後、税理士事務所、社会保険労務士事務所を経て2005年に独立。現在は生命保険や住宅ローンの見直し、資産運用に関する相談や、各種マネーセミナー、FP資格取得講座の講師、コラムの執筆等で活躍中。大人だけでなく、小学生向け金銭教育活動にも力を注いでおり、首都圏を中心に、今までの実務経験と女性の感覚を生かした独立系FPとして活動中。

※執筆日:2011年11月17日