第414回

「残価設定ローン」は本当にお得?

新車を購入しようとしたら、ディーラーに残価設定ローンを勧められました。期間は3年で金利が年3.9%、毎月の返済額は2万円台ですが、ローン最終回は50万円ほど払うことになります。お得なローンだと言われましたがよくわかりません。もっと金利の低い普通の自動車ローンを利用した方がいいでしょうか?(Eさん 29歳 会社員)
「残価設定ローン」とは、下取り価格を差し引いた新しい形の自動車ローンです。向いている人とそうでない人がいますので、商品のしくみをよく理解することが大切です。

残価設定ローンとはどんなもの?

こども店長の「トヨタ3年ぶん下さい」のCMが印象的でしたね。最近注目されている残価設定ローンとは、車の価格から3~5年後の下取り価格(残価)を差し引き、その金額でローンを組むというものです。例えば200万円の車で5年後の残価が80万円と設定されている場合、200万円から80万円を引いた120万円をローンで払っていくというイメージ。当然200万円のローンを組むより毎月返済額は低くなります。このローン最大のメリットは「毎月の返済額を抑えて車を購入できる」ということです。

では5年後はどうなるでしょうか?主に3つの選択肢があります。1つめは車を返す、2つめは車を返して別の車に乗り換える、そして3つめは車を買い取るです。1つめと2つめの場合は残価を支払う必要はありませんが、3つめの場合はローン最終回に残価を一括して払わなければいけません(または再クレジットしてローン払い)。この買い取りのケースで注意が必要です。残価設定ローンは3~5年後に車を返すという前提の商品なので、買い取るつもりであれば通常の自動車ローンを組んだ方が有利かもしれません。

通常ローンと残価設定ローン、どちらがお得?

では通常の自動車ローンと残価設定ローンを数字で見てみましょう。ホンダのフィット13G、車両価格123万円(税込)を36回払いするという仮定でシミュレーションしました。通常ローンの金利(実質年率)2.2%はイーローンの自動車ローンランキングから、残価設定ローンの金利年3.9%はホンダファイナンスのホームページから引用しました。

通常の自動車ローンと残価設定ローンの比較
ローンの種類 通常ローン 残価設定ローン
借入金額 123万円 123万円
金利(実質年率) 2.20% 3.90%
初回返済額 - 24,218円
毎月返済額 35,338円×35回 23,000円×34回
最終月返済額 35,333円 -
残価設定額 - 527,144円
支払総額 1,272,163円 1,333,362円

* 筆者作成

金利は通常ローンの方が低いのですが、毎月の返済額は残価設定ローンの方が12,338円(35,338円~23,000円)低くなります。しかし3年後に残価を払って車を買い取るとなると事情は変わってきます。支払総額は通常ローンの方が61,199円(1,333,362円~1,272,163円)お得に。残価設定ローンの金利はそれほど低くなく、残価にも金利がかかるため、支払総額でみると割高になることが多いのです。

【参考リンク】

残価設定ローンが向いている人は?

まとめると、残価設定ローンは毎月の返済額をとにかく抑えたい、3~5年後には必ず車を返す、別の車に乗り換えたい、という人に向いています。ローンの毎月返済額が同じなら、ワンランク上の車を購入することができるでしょう。
もちろんデメリットもあります。車を返す際に車体の傷や事故歴、走行距離によっては新たな負担が生じる可能性があること、改造等ドレスアップしていればすべて元に戻さなくてはいけないことなどです。あくまで所有期間限定の車であることを肝に銘じなければいけませんね。
買い取る可能性が高いのならば、通常の自動車ローンも選択肢に入れてじっくり検討してみてください。借入金額や返済期間、来店の要不要など、イーローンの検索機能を使えば希望に合ったローンが見つけやすくなります。金利を比べる際には、保証料や事務手数料などが織り込まれた「実質年率」を見るのがポイントです。

私が書きました

神田 理絵 (かんだ りえ)

ファイナンシャル・プランナー、住宅ローン・アドバイザー、心理カウンセラー。

大学卒業後、大手総合商社へ入社し、貿易事務に携わる。その後、税理士事務所、社会保険労務士事務所を経て2005年に独立。現在は生命保険や住宅ローンの見直し、資産運用に関する相談や、各種マネーセミナー、FP資格取得講座の講師、コラムの執筆等で活躍中。大人だけでなく、小学生向け金銭教育活動にも力を注いでおり、首都圏を中心に、今までの実務経験と女性の感覚を生かした独立系FPとして活動中。

※執筆日:2011年04月22日