第1044回

2024年度から奨学金制度の対象が拡大!我が家も利用できるかも?

中高生3人の子どもがいます。3人とも理系志望で、貯めてきた貯蓄だけで大学進学資金がまかなえるか不安です。来年度、奨学金制度の改正があると聞いたのですが、利用しやすくなるのでしょうか。(埼玉県 Kさん)
2024年度に、大学進学や高等教育等の負担を軽減し、子育てを支援する奨学金制度の改正があります。給付型奨学金・授業料減免制度の改正では支援対象が多子世帯や理系進学者等にも広がり、今までは条件を満たしていなかったご家庭も、支援が受けられる可能性があります。
学校を背景に立っている男性の画像

2024年度、奨学金制度が改正される

2024年度から文部科学省は、3つの奨学金制度の改正を行います。

  1. 「高等教育の修学支援新制度」の支援対象者拡大(大学生等向け)
  2. 大学院(修士課程)の授業料後払い制度の創設(大学院生向け)
  3. 貸与型奨学金の減額返還制度・所得連動型返還方式の見直し(大学等の卒業生向け)

これらの改正により、給付型奨学金を利用できる対象者が拡がり、返済方法の選択肢も広がると考えられます。それぞれの改正について確認してみましょう。

なお、今回対象となる「奨学金」は、日本学生支援機構の奨学金制度を指します。

日本学生支援機構の奨学金制度には、返還(返済)不要の給付型奨学金と、返還が必要な貸与型奨学金があります。

「高等教育の修学支援新制度」の支援対象者拡大

「高等教育の修学支援新制度」とは、「授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)」と「給付型奨学金の支給」を同時に受けられる制度です。現在、この制度では「住民税非課税世帯の学生」「住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生」を対象とし、家族構成に応じた世帯年収の上限の条件を満たさないと支援が受けられません。

2024年度からの改正では、対象者の範囲が広げられ、3人以上の子どもを扶養する多子世帯は満額の1/4、理工農系の進学・在学者に対しては「文系との授業料の差額」が支援されることになります。支援対象の年収上限は4人世帯のモデルケースの場合で従来380万円でしたが、改正では600万円程度に引き上げられます。

したがって年収などの条件を満たせずに給付型奨学金が受けられなかったご家庭でも、「3人以上の子どもがいる」「理系進学を希望している」場合は、2024年度から給付型奨学金や授業料減免が受けられる可能性があります。

なお、「多子世帯支援」と「理工農系支援」の両方の条件を満たす場合には、原則として多子世帯支援が優先されます。

「高等教育の修学支援新制度」の支援を受けられる年収の目安と支援金額
(両親・本人(18歳)・中学生の家族4人世帯の場合)
支援対象者 年収の目安 支援金額
従来からの対象者 住民税非課税世帯の学生 ~270万円 満額
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生 ~300万円 満額の2/3
~380万円 満額の1/3
2024年度から追加の対象者 多子世帯支援 ~600万円程度 満額の1/4
理工農系支援 文系との
授業料差額

表は文部科学省HPより下記を参考に筆者作成
・学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度  高校生の皆さんへ
・「こども未来戦略方針」の「加速化プラン」等に基づく高等教育費の負担軽減策について(令和6年度~)

大学院(修士課程)の授業料後払い制度の創設

大学院に進学する人の授業料を後払いにできる制度も創設されます。この制度は、2024年秋入学者及び修学支援新制度の対象者であって2024年度に修士課程に進学する人を対象に開始される予定です。

後払いにできる授業料の金額の上限は、国公立は国立授業料の標準額(約54万円)、私立は私立授業料の平均的な金額(約78万円)までとされる予定です。

卒業後の授業料納付金額は所得に応じて決まり、納付が始まる本人の年収が基準の300万円を上回ると、課税対象所得の9%を納付することになります。ただし、納付については子育ても考慮されており、たとえば子どもが二人いる場合には、本人年収400万円程度までは、所得に応じた納付は始まりません。

貸与型奨学金の減額返還制度・所得連動返還方式の見直し

貸与型奨学金の返還は、収入の少ない若手社会人の家計には重い負担となる場合もあります。

貸与型奨学金の返還方法には、毎月の返還額が一定の「定額返還方式」と所得に応じて月々の返還額が決まる「所得連動返還方式」がありますが、2024年度から、それぞれで月々の返還額を減らす条件が緩和されます。

定額返還方式の場合、返還困難なために減額返還制度を利用する場合の現在の年収の条件は、本人年収325万円以下ですが、2024年度からは400万円以下に引き上げられます。子どもがいる場合には、人数に応じて上限年収が引き上げられます。さらに、返還割合の選択肢が、「1/2または1/3」から、「2/3,1/2,1/3,1/4」の4種類に増えます。なお、減額返還制度を利用すると、月々の返還額は減りますが、総返還額は変わらず、返還期間が長くなります。

所得連動方式利用の場合は、返還額算定のための所得計算に子ども1人につき33万円の所得控除が上乗せされるので、子どもがいないときの金額に比べて、子育て中の返還額を少なく抑えることができます。

教育資金準備手段には、教育ローンも

2024年度からの3つの奨学金制度等の改正についてご紹介してきました。

進学資金不足が心配な方は、まず、返還不要の給付型奨学金や授業料減免などの支援が受けられるのか、条件を確認されるとよいでしょう。

支援対象となる世帯年収は家族構成や構成員の年齢等により異なります。支援の対象となるか、どれくらいの支援が受けられるか等を日本学生支援機構のホームページで大まかに調べることができます。

制度が改正されても家族構成・収入等の条件によって給付型奨学金や授業料減免を受けることできず、お子様の進路に必要な資金の準備が間に合わない場合には、貸与型奨学金や教育ローンを検討することになります。

貸与型奨学金も教育ローンも、「進学等に必要な費用を借り入れる。借入金と利息を返済する」ことには変わりませんが、大きな違いは「だれが借りるか、返済するか」ということです。奨学金は、学生本人が借り入れ、学生本人の収入で返還していくことになります。一方、教育ローンは、原則親などの保護者が借り入れ、保護者が返済します。

返還が必要な奨学金・教育ローンの利用は、無理のない返済計画を立てた上で借入金額の条件を決めるなど、事前によく確認し検討されるとよいでしょう。

【参考リンク】

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2023年09月12日