第15回

不動産担保ローンの利用前に知っておきたいメリットとデメリット

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この記事のポイント
  • 万が一返済を滞ることがあれば、自宅や別荘、実家といった担保として提供した不動産を失うリスクがある
  • 一方で資金使途が自由・高額なローンを低金利で融資を受けられるメリットもある
  • 不動産担保ローンは、まとまった金額を比較的低い金利で借り入れできる点がメリットだがリスクも伴う
電卓の周りに家が並んでいる画像

自宅はもちろん、相続して空き家となっている遊休不動産などがあれば、それらを担保にしてローンの申込みをすることができます。急にまとまった資金が必要になったとき、預貯金を使い果たすことに抵抗を感じる人は不動産担保ローンを検討してみるのも一つの方法です。
上手に活用すれば必要な資金対策法として心強い味方となってくれる不動産担保ローンですが、利用するには気をつけるべき点もいくつかあります。不動産担保ローンを検討する前にリスクやデメリットを正しく知っておきましょう。

不動産担保ローンのデメリット(リスク)

女性と男性が向かい合わせで話し合っている画像

不動産を失うリスクがある

借入時の契約通りに返済していれば問題はありません。しかし、万が一返済を滞ることがあれば、自宅や別荘、実家といった担保として提供した不動産を失うリスクがあります。ローンを借り入れた金融機関から返済不能と判断されてしまうと、最終的に不動産を差し押さえられた後、売却にまでなりかねません。不動産の売却代金は貸付金および利息などの支払いに充てられます。

  • 注意点1
    不動産担保ローンで提供する担保物件は自己名義のものだけに限りません。両親や祖父母、兄弟姉妹など、家族名義の不動産を担保にして借り入れすることも可能です。しかし、その場合は特に注意が必要になります。
    契約者と担保物件の名義が異なる場合でも、万が一契約者が返済不能となった場合は担保の不動産が差し押さえを経て売却され、売却代金を貸付金および利息などの支払いに充てられるのは同様です。大切な家族・親族関係にひびが入らないように気をつけましょう。
  • 注意点2
    返済が遅れると不動産担保ローンの貸付金融機関が定める「遅延損害金」を請求され、予定していた返済金額以上の支払いが必要になります。また、「支払遅延情報」として信用情報に記載される可能性も否めません。たとえば、日本信用情報機構(JICC)では、支払遅延情報としての記載は「返済日から61日以上、または3ヵ月以上」となっています。
    目安として、60日以上返済が遅れると信用情報に記載されてしまうと意識し、毎月定められた返済日に返済できるように努めましょう。さらには、金融機関からの返済督促に応じられない場合には、担保として提供した不動産を競売にかけられることになります。

諸費用がかかる

不動産担保ローンで貸し付けを行う金融機関は、担保として提供された不動産に抵当権を設定します。これらの手続きにかかる諸費用は契約者が負担しなければなりません。諸費用の金額は、借入金額および金融機関によって異なりますが、数十万円かかるケースもあるようです。手続きにかかる諸費用には次のようなものがあります。

  • 事務手数料
    保証委託や融資事務に手数料がかかる場合があります。金融機関によっては不要なところもありますが、ネット銀行は借入金額の2%+消費税とする金融機関が多い傾向です。
  • 印紙税
    金銭消費貸借契約書に印紙を貼付することで納税します。印紙税の金額は借入金額により決まります。たとえば、以下のような金額です。
    • 借入金額100万円超500万円以下 :2,000円
    • 借入金額500万円超1,000万円以下 :1万円
    • 借入金額1,000万円超5,000万円以下 :2万円
    • 借入金額5,000万円超1億円以下 :6万円
  • 抵当権設定の登記費用
    抵当権を設定するためには、法務局で「抵当権の設定登記」をすることが必要です。この登記費用として「登録免許税」とその登記手続きを代行する司法書士への報酬があります。登録免許税は、借入金額の0.4%です。(ただし、住宅取得資金の貸し付けの場合は登録免許税が2020年3月31日まで軽減措置で0.1%)
    また、司法書士報酬は金融機関と提携している司法書士によって異なりますが、数万円程度となるところが多い傾向です。
  • 不動産鑑定費用
    貸し付けを行うにあたり金融機関はまず担保となる物件の評価を行うため、不動産鑑定費用が必要となります。金額は金融機関により異なりますが、10万円~20万円が目安となり、鑑定費用を不要とする金融機関もあります。

仮に2,000万円の借り入れをして上記の手数料がすべて必要な場合、以下のような内訳になります。

諸費用項目 手数料
手数料合計 66万2,000円~78万2,000円
事務手数料(2%+消費税として計算) 43万2,000円
印紙税(1,000万円超5,000万円未満) 2万円
登録免許税(0.4%) 8万円
司法書士報酬 3万円~5万円程度
不動産鑑定費用 10万円~20万円

金融機関によってかからない手数料もありますが、不動産担保ローンを検討する際は70万円~80万円の諸費用を見積もっておくと安心でしょう。また、不動産担保ローンはカードローンやフリーローンなどの「無担保ローン」に比べて一般的に低金利ですが、無担保ローンは基本的に諸費用がかかりません。借入利息や諸費用を含めると、借入金額によってはカードローンなどと返済総額があまり変わらない可能性もあることに注意してください。

審査(担保)条件が厳しく時間がかかる

不動産担保ローンの審査では、担保となる「物件の価値評価」および「契約者の返済能力」を総合的に審査します。そのため、他のローン審査よりも厳しく時間もかかりがちです。金融機関にもよりますが、融資が実行されるまでに1週間程度はみておくのが良いでしょう。

途中解約(繰り上げ返済)の場合、違約金がかかる可能性がある

一般的にどの金融機関でも途中解約(繰り上げ返済)を受け付けていますが、手数料や違約金などがかかる可能性があります。手数料などの金額は金融機関によって異なりますが、返済額の3%程度としている金融機関もあれば、不要とする金融機関などさまざまです。なお、違約金がかかる場合には、消費税がかかることも知っておきましょう。

追加で担保を要求される可能性がある

不動産の価値は景気をはじめ、さまざまな要因で変動するものです。不動産担保ローンの申込みを受けた金融機関は不動産の下落リスクも想定しながら不動産鑑定を実施するものの、長い貸付期間の間には担保となっている不動産の価値が下落する可能性はゼロではありません。

当初想定していた範囲を超えるような大幅な下落が起こる場合には、追加で担保を要求される可能性もあります。

不動産担保ローンのメリット

女性と男性が小さな家を指差している画像

不動産担保ローンのメリットやデメリットを把握して、特徴を正確に理解しておけば、無理のない返済計画を立てることも可能です。ここでは、不動産ローンのメリットについて解説します。

資金使途が自由

不動産担保ローンは、使途が自由なローンです。教育資金や介護費用、リフォーム、他ローンの借り換え、相続資金など借り入れたお金の使い道が制限されません。事業性資金としては認めていない金融機関が多々ありますが、開業資金などビジネス利用に活用できる不動産担保ローンを取り扱っている金融機関もあります。

低金利で融資を受けられる

不動産担保ローンは、住宅購入資金などに使途を限定されている「住宅ローン」よりも高めの金利が設定されています。しかし、同じように使途が自由な「カードローン」や「フリーローン」に比べると金利は低めです。借入金額や借入期間などの条件が同じなら、金利が低いほうが返済総額は少なくなります。

これは「カードローン」や「フリーローン」が無担保なのに対し、不動産担保ローンでは不動産を担保として提供しているので、貸付側にとっての貸し倒れリスクの低さを見込んだ金利差といえるでしょう。

高額なローンが組める

担保とする不動産の価値によっても異なりますが、一般的には不動産を担保とすることでカードローンなどの無担保ローンに比べて高額の借り入れを申込むことが可能です。まとまった資金が必要な人はもちろん、複数のローンがある人は低めの金利で高額の借り入れができ、かつ使途が自由な不動産担保ローンにまとめて借り換えするのも良いでしょう。

返済期間を長く設定できる

不動産担保ローンは、担保があることで貸付側にとっても貸し倒れになるリスクが低いというメリットがあります。そのため、長期間の借り入れに対応している金融機関も多い傾向です。金融機関によっては、返済期間を最長35年に設定できるところもあります。返済期間を長くすれば月々の支払い額を低く抑えることができるでしょう。ただし、期間が長くなる分、トータルでの返済額は大きくなることに注意してください。

保証人不要

不動産を担保として提供する不動産担保ローンでは、保証人を"原則不要"とする金融機関が多い傾向です。しかし、本人名義以外の不動産や共同名義の不動産などを担保とする場合には、不動産の所有者・共同名義者に連帯保証人になることを要される場合がほとんどです。また、法人契約の場合は代表者の連帯保証が必要となる場合があります。

まとめ

自分や家族の不動産を活用してローンを借り入れる不動産担保ローンは、まとまった金額を比較的低い金利で借り入れできる点がメリットです。借入金の使い道は自由なので、まとまった資金が必要になったときなどに検討してみるのもいいでしょう。

しかし、借入額が大きくなったり返済期間が長くなったりするほど返済総額は大きくなります。長い返済期間中には契約者の収入面で変化が起こったり、景気の動向次第では追加担保が必要になったりするなどのリスクもあり得ます。万が一返済が不能になってしまうと、自宅、別荘、実家といった担保として提供した不動産を失うリスクがあることを忘れずに、無理のない範囲で上手な利用を目指してください。

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續 恵美子 (つづき えみこ)

日本FP協会認定CFP®

生命保険会社にて15年勤務した後、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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