第992回

原材料費の高騰で経営が苦しい。一時的な資金繰りにはビジネスローン!

飲食店を経営しています。コロナ禍に加えて原材料費の高騰により、経営が苦しい状態です。値上げも予定していますが、周知のための準備期間も必要で、運転資金が心配です。一時的にビジネスローンの利用を考えていますが、どんな点に注意したらいいでしょうか。(千葉県・Hさん)
公的機関の融資や国の補助金、助成金はありますが、手続きに時間がかかります。緊急性の高い運転資金であれば、ビジネスローンの利用もひとつの方法です。金融機関によって特徴、条件が異なりますので、十分な比較検討が大切です。

公的な制度を利用した資金調達が優先だが、時間がかかる

ウクライナ情勢や原油価格・原材料費の高騰などにより、中小企業や小規模事業者は特に大きな影響を受けています。円安傾向が続いていることも、物価上昇の一因となっています。中小企業庁は資金繰り支援の相談窓口を設け、経済産業大臣は適切な価格転嫁について要請するなど、国の支援策が打ち出されています。しかしながら、事業者の立場からすると、簡単に値上げに踏み切ることができない実態もあります。

本来は、こうした公的な支援策をしっかりと調べ、利用できる制度を活用することがベストですが、申請してから、補助金や助成金が入金されるまで時間がかかることが、ネックとなっています。

公的な融資制度として、日本政策金融公庫の融資があります。特別貸付を利用できれば、無利子・無担保で借りられ、融資額規模も大きいというメリットがあります。また、セーフティネット貸付はこれまでの要件を緩和し、ウクライナ情勢や原油高などによって、今後の影響が懸念される事業者にまで支援対象を拡大しました。コロナ対応だけではなく、原材料費高騰などで経営が苦しい事業者が利用できる形になっています。

また、事業再構築補助金については、コロナ禍で売り上げが減少する事業者が思い切った事業再構築をする際に利用できる制度ですが、この制度も、「原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)」が設置され、審査項目の見直しもされています(第7回公募から。公募期間は令和4年9月30日まで)。

このように、コロナ禍だけではなく、原材料費高騰のあおりを受けている事業者への支援は拡充されていますが、緊急を要する運転資金の確保には間に合わない、というのが実情でしょう。

ビジネスローンなら、来店不要で融資スピードが速い

ご相談者のように、値上げを検討し、経営改善が見込めるのであれば、一時的な資金調達として、ビジネスローンの利用を検討してもいいでしょう。銀行、信用金庫、カード会社、専業ローン会社などの金融機関などで取り扱いがあり、それぞれ特徴や融資条件が異なるので、比較検討して選ぶようにしましょう。

ビジネスローンには、個人事業者向けと法人向けがありますが、いずれも保証人、担保不要で借りられる商品がほとんどです。また来店不要でWEBで完結する金融機関も多くあり、申込みから審査結果の通知までのスピードが速く、最短即日から2日程度となっています。

金利は一般的に3%~15%程度で、借入可能額の上限額500万円~1,000万円とするところが多いようです。当面の小口資金であれば、十分対応可能でしょう。審査にあたっては、確定申告書や決算書が必要になる場合が多いので、あらかじめ準備しておくようにしましょう。

今後も、原材料費、仕入れ価格の値上げが続くと予想されています。あくまでも、一時的な資金繰りのための利用とするなら、必要以上に借り入れを増やさないことも大事なことです。値上げをすることで収益が改善しても、売り上げが改善しなければ、返済負担は重くなってしまいます。ビジネスローンの申込みと同時に、取引銀行などにも相談するなど、早め早めの対応をしておくようにしましょう。

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2022年09月02日