第1011回

大学の費用について再確認。奨学金と教育ローンの違いを理解しよう

春から子どもが高校3年生になります。大学進学のための資金の準備はしてきましたが、新型コロナの影響もあり不足しそうです。奨学金を利用できればと思っているのですが、教育ローンとの違いや注意点などを教えて下さい。(49歳 会社員)
大学進学のための資金準備は早めの情報収集が重要です。奨学金と教育ローンそれぞれの特徴を理解して、準備を進めましょう。

奨学金の概要

進学のための経済的支援である奨学金制度は、国や自治体、企業、民間団体の他、学校が独自に実施するものなどがあります。奨学金には、返済不要の給付型と返済が必要な貸与型があります。これまでは貸与型の奨学金が一般的でしたが、近年は実施主体を問わず給付型の奨学金が増えている状況です。

最も代表的なのは、日本学生支援機構で扱っている奨学金です。日本学生支援機構の奨学金には、返済が不要な「給付奨学金」、無利子貸与の「第一種奨学金」、有利子貸与の「第二種奨学金」の3種類があります。それぞれ「収入」「資産」「学力」の3つの基準を満たす必要があります。給付奨学金は、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯であるなど、条件は一番厳しくなっています。日本学生支援機構のサイトの進学資金シミュレーターなどで、基準を満たしているか確認してみましょう。また、給付奨学金はすべての学校が対象となるわけではないため、進学を希望する学校が支援の対象となっているかを事前に確認しておく必要があります。

第一種および第二種奨学金は返済が必要ですが、返済開始は貸与期間終了の翌月から数えて7ヶ月目からです。第二種奨学金は有利子ですが利率は低く、さらに在学中は無利子です。

奨学金はいずれも学生本人が契約者となり返済義務を負う点には注意が必要です。また申込みの時期が限られている上、高校在学中に申込むものも多いため、早めに情報収集をしておくことが重要です。

教育ローンとは

教育ローンとは、資金の使途を教育関連に限った融資で、大きく分けると国の教育ローン(日本政策金融公庫の教育一般貸付)と、民間金融機関の教育ローンの2つがあります。

国の教育ローンは所得制限がありますが、固定金利で子ども1人につき350万円(一定の要件を満たす場合は450万円)まで借り入れることができます。返済期間は最長18年で、お子様が在学中の期間は元金を据え置いて利息のみの支払いも可能です。

民間金融機関の教育ローンはさまざまな金融機関が取り扱っています。金融機関ごとに商品の内容は異なりますが、借入可能額が大きく、資金使途が広く、審査が早いことが特徴です。所得制限などはなく、商品によっては在学中は元金据え置きで利息のみの支払いが可能なものもあります。

奨学金と教育ローン、どちらがいいの?

奨学金(貸与型)と教育ローンの大きな違いは返済者です。教育ローンは親が借りて親が返済しますが、奨学金は学生本人が借りて本人が返済します。金利負担は奨学金の方が小さいですが、資金使途や借り入れのタイミングの融通は教育ローンの方が優れています。

奨学金は、高校在学中に予約申込みをして奨学金を受けられることが決まっていても、実際にお金が振り込まれるのは入学後です。そのため、入学金や前期納付金、一人暮らしの準備資金など、入学前の資金が不足している場合には教育ローンの利用を検討することになります。

奨学金と教育ローンのどちらか1つに絞るのではなく、それぞれの特徴や家計の状況に合わせて併用するという方法もあります。将来の返済負担も考えて、ご家族でよく話し合って決めるといいでしょう。

【参考リンク】

私が書きました

宮野 真弓 の写真

宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2023年01月20日