第1012回
郊外の住宅を購入するときに気を付けることは?
- 住宅購入を考えていますが、勤務先がテレワーク中心になったこともあり郊外の物件を検討しています。郊外の住宅を購入する際に気を付けることはあるでしょうか。(Uさん 東京都 35歳)
- 郊外の住宅は、都市部に比べると購入費は抑えられますが、郊外ならではのコストが発生することがあります。将来の生活設計も含めて総合的に判断しましょう。
コロナ禍をきっかけに地方移住への関心が高まっている
近年、首都圏ではマンションを中心に不動産価格の上昇が続いています。毎日通勤するなら通勤時間は短い方が便利ですが、テレワークの増加で出社する機会が減ると、多少通勤時間が増えても郊外の安い物件を購入したいと考える方も増えているのではないでしょうか。郊外の物件であれば、仕事に集中できる作業スペースも確保できるかもしれませんし、自然が豊かなところでワークライフバランスを実現できるというメリットもありそうです。
令和4年に内閣府が発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査」によると、何らかの形でテレワークを取り入れた働き方をしている人の割合は、全国平均で30.6%であるのに対し、東京23区では50.6%と大きく上回る結果となりました。
また、東京圏に居住しており地方移住への関心がある方の割合は、全年齢で34.2%、20歳代では45.2%と、若い方を中心に関心が高まっています(2022年6月の数値)。コロナ禍前の2019年12月の結果では、全年齢で25.1%、20歳代で32.1%ですから、コロナによる意識の変化がうかがえます。
物件価格によるローン返済額の比較
住宅の購入価格を抑えることができれば、その分住宅ローンの返済額も少なくなるので生活に余裕が出てきそうです。中古マンションを購入するとして、5,000万円の物件と3,500万円の物件でどのくらいの住宅ローン返済額になるのか比較してみましょう。わかりやすく、頭金0円、全期間固定金利1%、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済無しとします。
借入金額5,000万円 | 借入金額3,500万円 | |
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毎月返済額 | 141,143円 | 98,800円 |
返済総額 | 59,280,060円 | 41,496,000円 |
利息総額 | 9,280,060円 | 6,496,000円 |
イー・ローン「住宅ローンのかんたん返済額シミュレーション」より筆者作成
郊外の住宅購入で気を付けることは?
郊外の居住であれば、物件購入費をはじめ、生活費も抑えられるイメージがありますが、予想外のコストが発生する場合もあります。例えば、公共交通機関が発達した都市部とは異なり、郊外では車が必需品という地域もあります。今後車が必要になる場合は、購入費だけでなくガソリン代や車検代、税金、自動車保険、駐車場代等の維持費がかかることも考慮して住宅購入予算を考えるようにしましょう。
また、都市ガスからプロパンガスになる、部屋数が増える等の要因から光熱費が高くなる可能性もあります。郊外は子育てに良い環境と感じるかもしれませんが、都心の大学や専門学校等に通う場合は交通費がかさみますし、一人暮らしをする場合は仕送りが必要になるかもしれません。
さらに、郊外の物件は都市部に比べると値下がりしやすい傾向もあります。将来的に売却を考えるのであれば、なるべく値下がりしにくいエリアの物件にすることも含めて考えると良いでしょう。
このように、郊外の住宅購入を考える場合、将来の生活設計も含めて検討する必要があるため、生活のしやすさなども含め総合的にエリアや物件を選ぶようにしましょう。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2023年01月30日