第1016回

住宅ローンの最新トレンド「ペアローン」。利用するときに気を付けることは?

夫婦共働きです。マイホームの購入に際し、それぞれの収入に応じた住宅ローンの借り入れができる「ペアローン」を検討しています。利用する際に、どのような点に気をつけたらいいでしょうか?(東京都・Yさん)
ペアローンは1つの物件に対して、夫婦それぞれが住宅ローンを契約し、それぞれが返済していくという仕組みです。住宅ローン控除を二人とも受けられるなどのメリットが多くありますが、注意点もありますので、十分内容を理解して利用するようにしてください。

夫婦それぞれが責任を持って返済していく「ペアローン」

都市部を中心に不動産価格が高騰している影響で、住宅ローンの借入金額が大きくなる傾向にあり、一人分の収入で住宅ローンを利用しようとしても、借入金額が不足するケースが多くなってきています。そこで、夫婦共働きの世帯では、ペアローンの利用が注目されています。

ペアローンとは、世帯を同じくする夫婦や親子が利用できる住宅ローンの借り入れ方法で、1つの物件に対して、夫婦それぞれ(親子それぞれ)が自身の収入に応じた住宅ローンを契約するものです。共働きで夫婦ともに一定の収入があり、頭金を応分に支払うことができ、夫婦で住宅ローン返済の責任も分担したいと考える世帯にとっては、理にかなった借り入れ方といえるでしょう。

ペアローンでは、収入や勤続年数といった単独で借り入れる場合の条件を満たした上で、頭金の金額、物件の持ち分比率などを考慮し借入可能額が設定されます。夫の契約に対しては妻が、妻の契約に対しては夫が連帯保証人となります。

連帯保証人とは、万一の際に、その契約の債務者に代わって返済の義務を負う人のことで、夫(または妻)が返済できなくなった場合は、妻(または夫)が二人分を返済しなければならないという契約です。

ペアローンを利用すれば、単独で借り入れるよりも借入可能額が大きくなるため、購入物件の選択の幅が広がります。利用するにあたっては、仕組みを十分に理解しておくようにしましょう。

ペアローンのメリットと注意点。「ずっと返済し続けられるか」がカギ

ペアローンは、借入可能額が大きくなることが一番のメリットですが、夫婦それぞれで借り入れるメリットは他にもあります。

住宅ローンの年末借入残高に応じて、一定の所得税控除が受けられる住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン控除を夫婦二人とも受けられるようになります。単独の場合、住宅ローン控除の上限金額を使いきれないケースもありますが、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けることによって税額控除が増えるため、大きなメリットになります。

また、住宅ローンの契約が夫婦それぞれになりますので、団体信用生命保険(団信)も夫婦それぞれが加入できることになります。ただし、既往歴などのために団信に加入できなければ、ペアローンそのものが利用できなくなる点には注意が必要です。団信に加入していれば、万一の際、残りの住宅ローンは保険金で相殺されますが、相殺されるのは契約者の分のみ。ご自身の住宅ローンの返済は続きますので、事前によく話し合いましょう。

一方注意点としては、住宅ローンの契約が2本になるため、単独契約の場合と比較して、ローン契約の事務手数料や、抵当権設定登記費用などの諸費用が高くなることが挙げられます。

さらに、夫婦どちらかの収入が大幅に減ってしまった、退職することになったというケースで、返済の継続が困難になる可能性もあります。このリスクを軽減するためにも、夫婦で目一杯借り入れるのではなく、単独でも返済が可能な借入金額に抑えておくことが必要でしょう。退職の可能性が高い場合は返済期間を短くしておく、妻(または夫)の借入金額を低くしておく、別の住宅ローンの組み方を検討するなど、借り入れ前に十分なシミュレーションをしておくことが大事です。

メリット
  • 住宅ローンの借入可能額が単独の場合よりも大きくなる
  • 夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる
  • 夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入できる
注意点
  • ローン事務手数料、登記費用が単独の場合と比べて高くなる
  • どちらかの収入が減った、退職した場合、返済が困難になる

収入合算とペアローンの違いを理解し、適切な選択を

もしも、少しでもリスクを感じるのであれば、別の選択肢も視野にいれておくといいでしょう。

単独の借入金額では資金が不足する場合、収入合算という方法で住宅ローンを借り入れるのが一般的です。契約者は夫(または妻)のみで、妻(または夫)の収入を合算して借入可能額を増やし、契約者ではない配偶者が連帯保証人もしくは連帯債務者となります。いずれの場合でも、契約者が返済できなくなった場合は、連帯保証人、連帯債務者が返済の義務を負うことになります。

収入合算は「連帯保証型」と、フラット35と一部の金融機関でのみ取り扱いのある「連帯債務型」の2種類があります。連帯債務型については取り扱っている金融機関が限られているので、申込みの際に確認しておきましょう。

連帯保証型の収入合算の場合、契約者のみが団信に加入でき、住宅ローン控除も契約者のみが適用されます。しかし、ペアローンとは異なり契約は1本のため、諸費用を抑えることができます。契約者に万一のことがあったときは、団信で残りの住宅ローンが相殺されるため、連帯保証人は返済義務が免除となり、大きなメリットとなるでしょう。

ペアローンで所有権を共有名義にし、それぞれが住宅ローンを返済していくことで、責任を分担することも1つの考え方ですし、収入合算で住宅ローンを利用し、1つの世帯、1つの家計として一緒に責任を負うのも大切な考え方でしょう。

また、ペアローン返済中に離婚した場合、売却して住宅ローンを完済させることもできますが、住宅ローンが残ってしまうと、引き続き返済していかなくてはなりません。共有名義から単独名義にし、残りのローンをすべて名義人が返済していく方法もありますが、名義変更も煩雑になり、1人ですべてを返済していくのは大きな負担となることもあります。そのような事態にならないようにすることが、実は一番大事なことでもあります。

【参考リンク】

私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2023年03月01日